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死者の告発  作者: 浅見カフカ


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2/29

配信者

「どうもー、高木っちでーす。という事で今日は笠木市に来ています。訓練された視聴者さんならウチのチャンネルで笠木市と言えば何か分かりますね?」

高木は三脚に固定したカメラに向かって、慣れた口調で話していた。

通行人の好奇の視線にも動じる様子も無く撮影を続けた。

「そう、市長選挙です!先程の映像で見えていたあのメデタイ色の煙突。あれはゴミ処理場なんです。今、移転新築派と改修工事派の候補で市を二分する注目の選挙!!!」

力強くガッツポーズを見せた高木は、そのまま手を開いてカメラに向かってツッコミのような動きを見せた。

「って、違うわっ!美人女子高生失踪事件じゃ!チャンネル変えられるわ」

そう言って大声で笑った。

「——今から二十年前。夏休みの真っ只中の八月七日、当時十六歳の今井加奈さんが忽然と姿を消しました」

高木が口調を変えてそう言った途端に、多くの通行人の視線が好奇から嫌悪に変わった。

テレビ、雑誌、そして近年は配信者たちが押し掛けて面白おかしく事件と笠木市を取り上げた。

最初の頃は『早期の発見に繋がれば』と取材に協力的だった市民も、それが単なる娯楽だと知れるにつれて語らなくなっていった。

「オイオイ、高木っちー。そんなの誰でも知ってるぜって?ここからがこの時効探偵チャンネルの本番」

高木はカメラの前で人差し指を振ると「みんなはこの事件の報道の不自然さに気づいてる?」と声を潜めた。

照り返すアスファルトの熱気が映像を白く歪めた。

鳴き続けた蝉の声が止んだ瞬間——

「圧倒的に防犯カメラの映像が無いんだよね。さらぁに!同じ日に未解決の強盗事件が起きているんだよね」

高木の口調が変わった。

独特の節回しでカメラに叫んだ。

「つぅまぁり!このふたつの事件は無関係じゃないと高木っち思うんだ。これ、他ではやってない話なんだよね」

「お前、許可取ってるの?」

大声で騒ぐ高木の元にサラリーマン風の男が詰め寄った。

「路上で騒いで五月蝿いんだよ」

「ちょ、なんですか。妨害ですか」

「いいからヤメロよ」

「うわぁ、暴力です!これは暴力です!」

高木の叫び声に、通行人視線はますます冷ややかなものになっていった。

中にはカメラを下に向けて去って行く通行人もいた。



「神回じゃないの、高木くん」

島田の涼やかな声が室内に響いた。

「なんかバズったねぇ。コメ欄地獄だったけど」

高木の言葉に「荒れたね、確かに」と島田は笑って机を叩いた。

島田とは大学の映像研時代からの付き合いだ。

変人の高木と美人の島田。

撮影にしか興味の無い同士で、浮ついたことはひとつも無かった。

「次はシィさんも来てよ。一人だとああいうのに絡まれるからさ」

「まだやるの?」

「笠木JK失踪事件は数字取れるからね。あと未解決事件の強盗殺人もガチだし」

「そこ絡めたら確かに強そうだなぁ」

島田はそう言うと「分かった、スケジュールを合わせよう」とスマホを取り出した。

お互いに本業がある身だ。

きっとこれを数回のシリーズにすれば安定して専業になれる。

高木も島田も売れる為には手を惜しまなかった。



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