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死者の告発  作者: 浅見カフカ


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28/32

白い車

公営住宅のインターホンを押すと、今井加奈の母親、純子が戸口に出た。

「あっ、この間の」

「千早です。先日はありがとうございました」

「今日はどうされたんですか?」

前回の訪問失礼があっただろうか。

純子の様子が、妙によそよそしく感じた。

「幾つかお借りしたい写真があって伺いました。佐藤くんと湯島先生の写真を探させてください」

「湯島先生?」純子は首を傾げた。

「当時のボランティア部の顧問です」

「ああ、そうなんですね」

そう言うと純子は居間へと通してくれた。

「今日はご主人は?」

「所用で外出しています」

やはり違和感が拭えなかった。

千早の訪問を妙に警戒して、夫の所在を訊ねると声のトーンが冷たさ帯びた。

これ以上は聞くなというシグナルを発していた。

写真は約十年前に、今井夫妻と佐藤圭太で撮ったものを借りることが出来た。

だが、湯島教諭の写真はここには無かった。

今井家を辞し一階の共用玄関に降りると、駐車場に入る車を見掛けた。

今井敏樹だった。

——白だ。

白い乗用車だった。

反射的に監視カメラの映像が浮かんだ。

『う67-44』

ナンバーを覚えて車に近付いた。

笑顔を浮かべて会釈をすると、千早は車に駆け寄った。

「こんにちは。今、佐藤圭太くんの写真をお借りしました」

「ああ、そうでしたか」

窓を半分だけ開けてそう言った

強い警戒を感じたが、写真を借りに来たと知ると表情が緩んだ。

「ところで、今日はどちらへ」

「それは、まぁ、関係ないことですよね」

「すみません。職業柄、良くないですね」

千早がそう言って頭を搔くと、ふっと口元を緩めて「それでは」と窓を閉めて車を降りていった。

共同玄関へ向かう背中を見送った。

直後、千早は高木さんに今井さんの車と入手した写真とメッセージをLINEで送った。

『市長の周りで見ていませんか』

『V確認したら折り返す』

返事はすぐに返ってきた。

YouTuberとはそういうものなのだろうか。

もしも今井敏樹が佐藤圭太の共犯者で、偽装自殺の手助けをしていたら......

西野のマンションのカメラに映っていたのが今井敏樹なら......

彼はピースのひとつなのだろうか。



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