捜査報告
「はい、千早です」
意外と早い折り返しだ。
そう思って着信に出ると、興奮気味の音尾の声がした。
『千早さん!出ました、出ましたよ!!』
若干鼻声なのは歓喜もしくはアレルギーのせいだろうか。
『CD-Rです。学級通信の束の中に忍ばせてありました』
「当時の最先端メモリーですね」
『不織布のケースに入っていたので、傷とかは無さそうです』
「今のPCって、読み込めるんですかね?」
千早が素朴な疑問を口にすると『大丈夫です』と音尾は力強く言った。
『所轄のPCなんて予算が付きませんから。署に行けば生きた化石が稼働中ですよ』
「それは——」
喜んで良いのか一瞬迷ったが「良かった」と続けた。
「ちなみに音尾さんは、科捜研に顔は利きますか?」
『どうしましたか?』
「経年劣化でデータが消えている可能性が高いと思います。解析をねじ込めるパイプがあると良いのですが」
『ああいった頭脳集団とは縁が無いのですよ』
そう言った直後、音尾の大きなくしゃみが聞こえた。
電話を切ったあとのスマホの画面には、高木からの着信の通知が数件来ていた。
折り返すと、もしもしとは言わずに『遅い!』と言われた。
「音尾さんに進展がありましてね。そちらはどうでしたか?」
『ああ、結論から言うと居たぜ。車は映っていないが、市長のまわりを何度も行き来していた』
「どんな様子でしたか?」
『辺りを警戒するように、行ったり来たりだ。怪しすぎるな』
「辺りを——ですか」
『ああ、SPでも居れば警戒か排除の対象だな。今日は密着取材をさせてくれたんだよ。前回のインタビューの評判が良くてさ』
千早が途中で視聴をやめた動画だ。
『行く先々にオッサンが居たぜ』
「分かりました、ありがとうございます」
もう一度、考える必要がある。
千早は電話を切ると天をあおいだ。
直後、音尾からの着信でもたらされた報告は『NoData』だった。




