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死者の告発  作者: 浅見カフカ


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19/29

らでん会議1

純喫茶らでんの一番奥の席。

アール・デコのテーブルに、コーヒーカップが四つ置かれた。

「千早さん、どうして彼がいるのですか」

「千早さん、なんでコイツがいるんだよ」

「二十日間も一緒に居ると、息もピッタリですね」

千早は抗議を意に介さず、持ち上げたカップの珈琲の香りに、蕩けそうな表情を浮かべた。

ひとくちカップ口をつけた後、小さく頷いて言った。

「彼らを巻き込んだのは音尾さん、貴方たち警察ですよ」

千早に音尾を批難するつもりは無かったが、その声は低く冷たいものだった。

「——そうですね。高木さん、私は大変な見当違いでご迷惑と、著しく不快な思いをさせてしまいました。改めて謝罪します」

音尾は高木に向けて深々と頭を下げた。

「ま、まぁもう疑ってないならいいよ」

高木は横を向いてぶっきらぼうに言ったが、その頬は店内の薄明かりでも紅潮しているのが分かった。

「高木さんたちには、木全市長の取材をお願いしていました」

「高木くんのチャンネルじゃ難しいと思ったので、私のチャンネルを使って申し込みました」

島田が音尾に向かってそう言うと「貴女配信者なのですか」と目を大きく開いて見た。

「私は、郷土史や自然を紹介する教育系チャンネルを運営しています」

「ああ」

音尾は少し安心したように言った。

「なんかイラッとした」

高木が音尾の様子にそう呟くと「それはそうなるでしょ」と島田がクスクスと笑った。

「広報にシィさんのチャンネルURLを送ったら、すぐにOK来たもんな」

高木は相変わらず拗ねた言い方だったが、怒ってはいない様子に見えた。

高木はノートパソコンを開くと「未編集だからな」と言って再生を始めた。



「いやぁ、37歳!お若い市長さんが誕生しましたねぇ」

「若輩者ですので、市会議員の先輩方のお力添えを頂いてですね、笠木市の発展に微力ながら全力を尽くしたいと思います」

木全はその爽やかなルックスに、人懐っこい笑みを浮かべてカメラを見た。

「早速ですが市長。今回の最大の争点だったゴミ処理場問題。市民は改修延命派の市長を選んだ結果となりました。市長がこの改修延命が最適解だと思うに至った経緯を語って頂きたく思います」

島田が市長と幾度も呼んだ効果か、木全は頬を緩ませて向けられたマイクを手にした。

「笠木市のゴミ処理場の煙突は見た事がありますか?」

「赤い線が入った煙突ですね」

「あれを見ると故郷に帰ってきたと、外に出て行った人達は思うんですよね。実際、私もそうでした」

照れたように頭を搔いた。

こうした仕草に市民は親しみを感じるのだろうなと、千早は画面越しに感じた。

「では、ランドマーク的な意味合いで残していこうということでしょうか?」

「感傷的なものは理由のひとつに過ぎません。立て替えの予算もそうですが、用地選定や取得費用も考えると——主要産業の炭鉱は全て閉山となり、今この街を支えているのは新興の流通団地と港湾事業です。そんな中で改修工事であれば新築の十分の一以下との試算も出ています」

木全は身振りを混じえて少し早口で、でも力強く話すと、自らを抱きしめるように腕を組んだ。


「まるで独裁者を思い浮かべる演説だ」

千早は不快感を顕にして再生を止めた。

「木全は人たらしの部類ね。インタビューをしててそう思ったわ」

「身振りや言葉の緩急が、非常に巧みですね」

千早の言葉に島田は深く頷いた。


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