笠木西高校
「ボランティア部ですか?」
応対した事務員の女性が怪訝な表情をした。
その様子に「どうしましたか」と出てきた上司らしき男性は、ボランティア部の言葉に表情を曇らせた。
「あの事件の翌年、ボランティア部は活動を停止したんですよ」
樋口主事に通された応接室で、二人はそう聞かされた。
「在籍していた生徒の卒業後に正式に廃部となったので、若い職員や在籍の浅い先生は知らない人が多いのです」
「それで怪訝な表情をされてしまったのですね」
音尾がそう言うと「申し訳ありません。彼女には注意しておきますので」と樋口が頭を下げた。
「疑うのは受付の正当な仕事ですよ。ところで、学校のアルバムや古い冊子などはどこかに保管していませんか?」
千早は一言女性を庇うと、資料の保管場所を尋ねた。
「それでしたら書庫の方に保管してあると思います。ただ——」
「終わったら、用務員室に居ますんで声を掛けてください」
案内をしてくれた用務員はそう言って踵を返した。
歳の頃は四十代半ばだろうか。
千早はその背中に向かって「ここに勤めて長いのですか?」と声を掛けた。
用務員は足を止めて「あの子は花壇の手入れや植え替えを手伝ってくれる、優しい子だったよ」と言って去って行った。
図書室の隅のその扉を開くと、湿った埃とカビの臭いが溢れるように流れてきた。
口と鼻を覆って中を覗くと、樋口が言い淀んだ理由を代弁するような光景があった。
開校以来の卒業アルバムや、周年記念誌、一部のクラス通信等が書架に並べられ、床に平積みされていた。
「これ、ランダムですよね」
「年代は書架のは古そうです」
「なるほど。一応は順に保管した、と」
千早は音尾の言葉に納得した。
「では平積みの方が怪しいですかね」
「まるで地層ですな」
音尾の言葉には、いつものような覇気が感じられなかった。
不意に平積みのページが風にめくれた。
振り向くと音尾が小さな窓を開けていた。
「埃アレルギーなんですよ」
そう言った音尾の目は、赤く充血して涙目だった。
「それなら手分けしましょうか?音尾さんは、さっきの用務員さんに話を聞いてきてください」
「それでは資料探しが終わらないのでは?」
戸惑う音尾に「さっき良いヒントを貰ったので、もう大体を絞りました」と千早は言って用務員の元へと行かせた。
事件が起きたのは平成十三年。
この頃には校内で使われるプリントの類は上質紙や再生紙だ。
つまり、わら半紙の地層は排除は出来る。
これだけで大半の作業は、終わったようなものだった。
「あとは見つけるだけだ」
千早はシャツの袖をまくると、そう独りごちた。




