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死者の告発  作者: 浅見カフカ


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12/29

子供部屋

淡い暖色のカーテンに学習机。

畳の床を隠すように敷かれたラグ。

花柄の掛け布団が印象的なベッドの宮には、お気に入りであろう本や目覚まし時計が置かれていた。

きっと彼女が出入りしていた頃には、女の子の甘い香りで満たされていただろう。

目覚まし時計が時を刻んでいる事に気が付いた。

定期的に電池を入れ替えて居るのだろう。

主が帰った時の為に。

「失礼します」

部屋の中に一礼してから敷居を跨いだ。

「ノートや引き出しを見ても良いでしょうか?」

「——はい。お願いします」

母親の一瞬の躊躇ためらいは娘への配慮だろうか。

おそらく両親共に見てはいると思うが、やはり他人に漁られるのは気持ちの良いものではないのだろう。

隅々まで掃除の行き届いた部屋からは、両親のひしひしとした愛情が伝わってきた。

棚の教科書もノートにも特に何も無かった。

彼女は日記を付ける習慣はないようで、引き出しにもそれらしいものは無かった。

唯一あった授業以外のノートが書棚にあった。

棚の一番上にあったノートは部活動に関するものだった。

本棚に立て掛けたパイプ性の小さな脚立があったが、千早には必要なかった。

パラパラとめくると介助ボランティアに強い興味があるようで、ヘルパー試験の日程表や講習の予定がスクラップブックのように貼られていた。

そしてノートの最後、裏表紙の裏面に木全部長をトップに据えた部の組織図をプリントした名簿が貼られていた。

「これ、お借りしても良いでしょうか?」

千早はノートを閉じるとそう尋ねた。


今井家を辞する頃にはすっかり陽が傾いていた。

オレンジ色に染まった港湾に、灯台の長い影が伸びていた。

「お役に立つのなら」

そう言って貸し出されたノートの最後のページを開いた。

鈴木淳也——

その名前が名簿の中にあった。


草森ギンの家はここからほど近い。

夏の夕暮れはそのくらいは待ってくれる。

千早は地図アプリを開くと全ての始まりと思える場所へ向かった。

住宅街をスマホ片手にキョロキョロと歩く姿は奇異に見えたか不審だったか。

かつてそこには草森家があった。

今は三方を邸宅に囲まれた更地となっている。

おそらくは事件当時からある家だろう。

千早はゆっくりと目を閉じた。

そして週刊誌から得た、間取りの情報と照らし合わせていると肩を叩かれた。

目を開けて横を見ると、警察官が笑顔を作って立っていた。

「こんばんは。今しがた通報がありましてね。その、声掛けをしてるんですよ。それでですね——」

「ああ、丁度いい。笠木警察署まで乗せてくれ」

千早は遮ってそう言うと、ミニパトの後部ドアに手を掛けた。

「ちょちょちょ」

慌てた警官が千早の腕を掴んだ。

「パトカーはタクシーじゃないです」

「署で話を聞けばいいだろ」

「私は近くの交番勤務です」

「じゃぁダメだな」

そこで千早はようやく、ドアノブから手を離した。

その頃には野次馬も随分と集まってしまったので「交番行きません?」という千早の提案は割とあっさり受け入れられた。

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