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君と歩いた、ぼくらの怪談 第1部  作者: tempp
第4章 明日の日記と僕の日常

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39/61

6月6日 優雅な放課後

赤司れこ@obsevare0430

赤司です! いろいろ書いちゃうよ!


-----------

赤司れこ@obsevare0430  4時間前

はろーえぶりばでー。

今日も雨、俺、やる気出ない。

もうー? ちゃんと注意してるのに全然聞いてないでしょ。

あっひょっとして、フォローしてくれたけど全然みてないとか!?

まじで!?

俺、ちょっと悲しい。

でも一応今日もひとこと。えっと。

今日は早めに帰った方がいいでしょう。

知らない人に話しかけられてもついてっちゃだめだよ!?



赤司れこ@obsevare0430  6月6日

フォロワーさん見てるー?

見てくれる人がいるとはりきっちゃう♪

体育祭の注目はやっぱりリレーかな?

次に探すとすれば、放送とかかなぁ? だから早く帰ったほうがいいよー?

体育倉庫行っちゃだめっていったのにぃ。



赤司れこ@obsevare0430 6月5日

あ! 初めてのフォロワーさんきたっ!

よろしくお願いシャス!

えっと、せっかくだし。

あっ怪我注意です! 寮のとこぬかるんでるから!

それから誘われても体育倉庫に行ってはいけません!


-----------



 なんとなく、朝の初めに赤司れこのTwiterを確認するのが日課のようになってきた。

 そうか、この人、フォロワーが僕に変わってること気づいてないのか。それはそうだよねぇ、こちらからわざわざコメントを送ったりはしてないもの。そんな機会でもなければフォロワーの確認とかしなさそう。

 ひょっとしフォローしていたのは親しい友達なのかな。

 そうなら、なんか気まずい。でも、外すのはかわいそう。なんだろうこの変なジレンマ。



 午前の授業が始まる前の短い時間、新しいうわさが流れていた。

 いわく、昨日の2年生女子は足に手の形のあざがあった。そして足の骨折には足を捻じ切ろうとしたような痕跡があった。

 なにそれこわい。


 体育祭は明後日に迫っていた。なのに雨は一向に上がらずに窓の外には黒い雲が垂れ込めていた。ゴォゴオという困ったような風の音が聞こえ続けている。

 教室の黒板を見ると、6月6日という日付。ゾロ目だと縁起がいいような気もするけど、なんとなく不吉な印象のほうが強い。でも今日の午前の授業も平和に過ぎていった。

 今日も先生にあてられなかった。緊張感がないと、なんとなく授業に集中できない感じ。成績が落ちると困るな……。

 昼休みに入っても雨で教室はざわついている。そして藤友君はさらにぐったりしていた。


「アンリが諦めない」


 苦虫をかみ潰すような顔? をしている気がする。

 軽く唇の左の方と左の眉毛を少しあげているだけだけど、藤友君の表情ってすごくわかりやすいのはなぜなんだろう。


「まずそうなの?」

「あぁ、今晩探してくると言い始めた」

「今晩?」

「授業が終わったらその足で」

「……それはなんというか」


 藤友君はハァ、と口の端から小さく息を漏らした。


「あの、それって僕のせい?」


 藤友君は一瞬、なんのことだろうというように眉をひそめて、あぁ、と呟く。


「プテラノドンか。あれは気にしなくていい。アンリはどうせ言い出したら聞かないんだ。せめて小鳥とか、そういう小さなものがいいよな」

「藤友君、抹茶好きだったよね?」

「東矢、まじ天使」


 抹茶クッキーくらいしかないけれど。

 藤友君は机の上にぐったりと顔を伏せる。本当に疲れているみたい。

 大丈夫かな。ストレスで倒れたりしないだろうか。正直、坂崎さんと話し続けるだけでストレス過多だよね。


 放課後、坂崎さんは授業が終わると一目散に教室から駆け出して行った。話しかける隙も、追いかける隙もない。

 藤友君は坂崎さんのその様子を見て一瞬絶望的な表情をした。といっても少しだけ口をあけて目がいつもより少し開いているだけだけど。

 これが最後の平穏かもしれないとか呟いて机に突っ伏して寝はじめて、スヤスヤ寝息を立てている。なんか、ほんとお疲れさま。

 そんな藤友君の様子を眺めていると、ナナオさんがやってきた。


「ボッチー、昨日の朝の話さ、先生に聞いてみたんだけど、2年の子のストーカーの話は先生たちにも伝わってて、それで昨日の朝に相談してたみたい。だから先生たちはその相手を探してる。なんなんだろうな、姿が見えないストーカー。実は後をつけてくれた友達がストーカーだったとか?」


 なんとなく体育倉庫で見た彼が思い浮かぶ。


「でも結構離れてついて来てたっていううわさでしょう? 足音ってそんな遠くまで聞こえるかな、さすがに友達の足音とは違うんじゃないの?」

「どうだろうな、でも大きな音でも小さな音でも、音との距離はわかるよな、多分」


 そんな話をしていると、突然校内放送からザリザリというノイズ音が流れたあと、キーンというかん高い音が走り、誰かが走っていくような音が流れた。

 突然藤友君がビクッと体を起こす。


「何? 今の音」

「うん? 何か音した?」

「えっと、校内放送で足音が……」

「東矢黙れ。……俺は帰る。お前も話すな」


 藤友君は乱暴に荷物をカバンに放り込み、首筋をかきながら廊下側の扉を開けて出て行った。


「なんだあれ?」

「藤友君ちょっと疲れてるみたい」


 そんなふうにお茶を濁す。

 そういえば、藤友君から以前、怪異は『人が気づいている』とわかると近寄ってくると聞いた。だから、話しちゃだめだったのかもしれない。

 そして僕とナナオさんが明るさの残る教室から薄暗い山側の廊下に出た直後、案の定というか、僕の後ろをひたひたと付いてくる音が聞こえた。


 ひたひたひた。


 裸足で廊下を歩くような音。

 僕の後ろをつけてくる。止まって振り返ろうか。封印に半分以上足を突っ込んで怪異にどっぷりはまった僕なら、なんとなく何かが見える予感がする。ただ、振り返ってしまうと、僕が聞こえていることはばれてしまう。それはちょっと、まずいのかも。


 ひたひたひたひた。


 これは悪いものなのか、そうではないものなのか。2年生の女の子はこれと同じような何かにつけられていた。足の怪我はそのせいなのか、違うせいなのか。

 よくわからないけど、なんだか嫌な感じがした。隣を歩くナナオさんの様子は普通で、ナナオさんには聞こえていないのかもしれない。


 ひたひた。


 昇降口に到着して、僕は靴を履き替える。僕が靴を履き替える間は、ご丁寧に足音は止まっている。一定距離以上近づいてはこない。

 そして僕が靴を履き替えたあと、校庭に向かって歩き出すと、また音は再開する。どきどきする。


 ひたひたひたひた。

「みつけた」


 僕は後ろばかり気にしていたので、その正面から聞こえた声に驚き顔を上げた。

 学校の昇降口は2メートル半くらいの高さがあってフレームは入っているけど全面がガラス張り。昇降口の校庭側には1メートルくらいの長さのひさしがはりだしている。そのひさしの上から頭を下にしてぶらさがるように、無表情な男の顔がガラス越しに僕らを見下ろしているのがはっきり見えた。


 驚き思わず少し後ずさる。

 その瞬間、僕のあとをつけていた足跡も同じだけ後ずさり、そして、ひたひたひた、と遠ざかって行った。

 気になって後ろを振り返ると、廊下の曲がり角を半透明の裸足の足首が歩き去るのが見えた。


 校庭に目を戻すと、彼はいなくなっていた。また、錯覚だったのかな。

 昇降口は薄暗くて、彼のいた校庭の方が明るい。やっぱり現実感がまるでない。


「どうしたボッチー?」


 ナナオさんの声に我に返る。ここにはもう、何もいない。

 僕らは傘をさして、校門で別れた。雨は強くなり続け、新谷坂町に続く坂道は麓に向けて滝のように水が流れている。そこをナナオさんは滑らないよう気をつけながら少しずつ小さくなっていく。


 ぬかるみを超えて寮に戻ってご飯を食べたりお風呂に入った後、ちょっと迷ったけど藤友君にHELPメールした。

 相談したいことがある。

 藤友君はしばらくすると僕の部屋にやってきた。いつもと同じ位置、窓際の床にあぐらをかく。

 今日のおやつは抹茶オレと抹茶サブレ。藤友君接待用エディション。


「で、また呪われたのか。本当に学習しないな、お前」

「うぅ……返す言葉もありません」

「で、どんな奴だ」


 藤友君は話がはやい。

 僕は昨日と今日あったことを話す。男の首と足音。そしてストーカーのうわさ。


「今の時点だと情報がたりないな」

「だよね、僕はとりあえずどうしたらいいと思う?」

「足音は無視だ、気づいたことに気づかれてない可能性がある。だが頭は目があったんだろ? 2回も」

「うん」

「でも襲われたりはしていないしすぐに消えた」

「うん」

「そっちはもう見つかってるからどうしようもないな。なるべく穏当にスルーして、常にだれかと一緒に行動するのがベターか」

「わかった、ありがとう。そういえば坂崎さんはどう?」


 藤友君は眉を寄せてへの字口を作る。


辻切(つじき)区をさ迷い歩いてるらしい。5分おきにLIMEが来る」


 ほんとに?


「本当に何か拾ってくるつもりなの?」

「『面白いもの』が見つからないことを祈るばかりだが……これまでの傾向からは望み薄だな……胃が痛い、糞」


 藤友君は軽く胸を押さえる。


「なんか……僕より大変そうだね……」

「こればっかりはもう諦めている。東矢もよかったら俺のために祈ってくれ。ましなものが見つかるように。俺が祈ると大抵逆効果だからな」

「わかった、あまり力になれなくてごめん」


 そうしているうちにも藤友君の携帯がプルルと震える。さっきからしょっちゅう携帯がプルプルしていると思ったら5分おきのLIMEだったとは。恐ろしい。


「藤友君よく坂崎さんとつきあってられるね。正直大変じゃない?」

「正直どころじゃなく大変だが、まあ俺にも仕方がない事情があるんだよ、腐れ縁とでも思ってくれ」


 そう言って藤友君は小さなため息をつきながら、天井を見上げた。

 藤友君は最後のサブレをつまんで『おやすみ』と言って部屋を出て行った。

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