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君と歩いた、ぼくらの怪談 第1部  作者: tempp
第4章 明日の日記と僕の日常

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6月7日 (1) 昇降口で上履きを脱ぐ

赤司れこ@obsevare0430

赤司です! いろいろ書いちゃうよ!


-----------

赤司れこ@obsevare0430  3時間前

俺、なんかわかっちゃったかも。

絶対わざとでしょ! もーうー!

いい!? ちゃんと! いうこときいて!

とうとう体育祭本番になっちゃう。

ここから先はフィフティフィフティ、どっちに転ぶかわからない。

でも、捕まえたら、走って逃げて。絶対!

ほんとに! 知らないからね!?

リレーは俺が応援した結果なの!! えへん



赤司れこ@obsevare0430  6月7日

はろーえぶりばでー。

今日も雨、俺、やる気出ない。

もうー? ちゃんと注意してるのに全然聞いてないでしょ。

あっひょっとして、フォローしてくれたけど全然みてないとか!?

まじで!?

俺、ちょっと悲しい。

でも一応今日もひとこと。えっと。

今日は早めに帰った方がいいでしょう。

知らない人に話しかけられてもついてっちゃだめだよ!?

絶対!!



赤司れこ@obsevare0430  6月6日

フォロワーさん見てるー?

見てくれる人がいるとはりきっちゃう♪

体育祭の注目はやっぱりリレーかな?

次に探すとすれば、放送とかかなぁ? だから早く帰ったほうがいいよー?

体育倉庫行っちゃだめっていったのにぃ。



-----------


 なんか、怒られている気持ち。

 友達の人に直接言ってあげればいいのに。

 へんなの。


 今日は6月7日。いよいよ明日は体育祭。といってもやっぱり今日も雨続き。明日も雨なのかなって思うと少し残念な気持ち。まあ僕は取り立てて身体能力が優れているわけでもない。だから何かに活躍できるわけでは全然ないんだけど。

 昇降口に入って、そして思い出した。


 ひたひた。


「東矢、おはよう」

「あ、藤友君、おはよう」


 え?

 あれ?

 藤友君は僕に一声かけただけで、僕や怪異に見向きもせずに教室に向かう。

 あ、そうか、スルーがいいのか。

 慌てて藤友君を追う。なるべく気にしないように。

 廊下の窓に雨が打ち付ける音とともに、足音はやっぱりついてきた。

 スピードを上げて早足で進む僕にあわせて、足音もスピードを上げる。


 ひたひたひたひたひたひたべっ。


 最後に転んだような音がしたけど、振り向かないまま教室の入り口で藤友君に追いつく。藤友君は昨日以上に疲れ果てているように、見える。

 そういえばペットを飼うっていう話はどうなったのかな。なんだか聞くのが怖い。

 午前の授業はいつも通り。

 ふと隣の藤友君を見る。目がすごくうつろだった。でも先生に当てられたら的確に答えている。授業が終わって昼休みに入ると藤友君はぱたりと机に突っ伏して寝息を立て始めた。

 お昼ご飯は食べないのかな。購買、いいの売り切れちゃうけど起こすのははばかられる。なんとなく、午後の授業が始まるまで起きなさそう。僕は腕の間にクッキーをねじ込んどいた。

 放課後、藤友君はふらふらと首を回してぼんやりしている。


「坂崎さん、結局何か拾ってきたの?」

「…………あぁ、なんだろうなあれは。ミノムシみたいなやつだな」


 ミノムシ……? ミノムシって飼うものなの?

 ぜんぜん想像がつかないんだけど。


「なんかすげぇ疲れたから帰るわ。また明日」

「お大事に」


 僕も帰ろうと荷物を片づける。えっと、一人にならないほうがいい、だっけ。とはいえ、僕と話ができる人って、藤友君と坂崎さんとナナオさんしかいない。新谷坂の封印のせいで僕の存在感は限りなく薄くなっていて、友達に話しかけてもスルーされてしまうんだ。


 教室を見回すとナナオさんは何人かの友達と話し込んでいた。藤友君はもう帰ってしまった。えっと、坂崎さん……が帰りの片づけをしている。これ、坂崎さんと話すのと、一人で帰るのと、どっちがリスク高いんだ?

 ぼんやり見つめていると、坂崎さんと目があってしまった。坂崎さんは僕に向かってにこりとほほえんだ。


「えっと、坂崎さんいま帰り?」

「そだよっ」

「下駄箱まで一緒していい?」

「いいよっ」


 坂崎さんはにこにこ微笑みながら、自分の灰茶色の髪の毛をくるくる引っ張っている。

 喋っていなければかわいいっていうのと、喋っていてもかわいいっていうのは、両立するんだな、と変なことを思う。

 騒がしい教室の扉をあけて静かな廊下に一歩踏み出すと、予想通りに待ち構えていたように小さな足音がした。


 ひたひた。


「そういえば、坂崎さん、何か生き物拾ってきたんだって?」

「うん、アイちゃんっていうの、超かわいい」

「アイちゃん? それはどんな動物なの?」

「えっ? 動物なの?」

「えっ? 動物じゃないの?」


 ひたひたひたひた。


 追いかけられていると思うせいか、昇降口がずいぶん遠く感じる。ひょっとしたら坂崎さんと話しているせいかもしれない。

 それにしてもミノムシって動物じゃないの? 動物だよね、動かないけど確か芋虫が入っている、んだよね。何が何だかよくわからなくなってきた。


「んんー。アイちゃんはかわいいよー。ハルくんのお部屋に一緒に住んでる」


 結局藤友君が飼うことになったのか。それは……ご愁傷様。

 ミノムシって餌いるのかな。何か食べるんだろう。イメージ的には犬や猫より随分おとなしそう。小鳥みたいな小さいのがいいって言ってた藤友君の希望は、ある程度叶ったのかな。


 ひたひた。


 さっきから足音はついてくるけど、一定距離は保っているようだ。だいたい僕の2メートルくらい後ろを。

 坂崎さんと話をしているうちに、なんとか昇降口まではたどり着く。

 そして、僕は気が付く。昨日の彼が今度は靴箱の上にねそべって僕を見ていた。


「ねえ、君」


 気にしないように靴を取り出し、上履きから履き替える。


「僕が見えているんでしょう?」


 スルースルー。目を合わせない。

 藤友君が言っていたことを思い出す。


「ちょっと話をしたいんだけど」


 昇降口はちょうど下校時間でそれなりに混んでいて、僕はその流れに紛れて振り向かずに昇降口の扉を開ける。


「ねぇ東矢君、この人呼んでるけど」


 思わず振り向くと、坂崎さんが彼を指さしていて、僕は彼と目が合った。


「ありがとう、お嬢さん」

「どういたしましてっ、あ、私先かえるねー」


 坂崎さんはそういって、僕の脇をすり抜けて軽やかに昇降口の扉を潜り、雨の中を傘もささずに歩き去った。

 彼は僕と目を合わせ、無表情のまま僕に近づいてきた。

 目が合ってしまうと、そのまま無視するのはとなんだか気まずい。

 ちょっと話をするだけだから、という彼の言葉に、僕はあっけなく轟沈した。


 体育倉庫でどう? と聞かれたけど、さすがにそれは嫌な予感しかしなくて断る。2年女子の不幸の原因は足音じゃなくて彼のような気もしてきたし。なんとなく。

 そういえば、足音は今日もいつのまにかいなくなっていた。

 とはいえ、また教室に戻るのもはばかられる。足音の怪異にあうのも嫌。


 仕方なく、邪魔にならないように昇降口の端っこの段に腰掛けて話を聞くことにした。僕はものすごく存在感が薄いから通る生徒に変な目で見られることもない。隠キャすぎて落ち込む。


「それで、何の用でしょうか」

「君、俺の足に憑かれてるでしょう? 捕まえるのを手伝ってほしくて」


 俺の足?

 そう言われて彼を見る。

 彼はなんて言うか、逆立ちしていた。二十代くらいの髪が長めの男性、それから不自然に無表情。Tシャツに7分丈のスラックスというラフな格好をしていて、右足首と左膝から下が欠損していた。かわりに、何かメタリックな、ステンレスっぽい素材の義足? がついていた。なんでそれがわかるかっていうと、逆立ちして両手で歩いて近づいて来たから。動くとTシャツがめくれて、背中が覗いている。異様だ。

 でも僕にしか見えていない? 坂崎さんには見えていたみたいだけどノーカン。

 彼も僕に倣って、僕のぴったり右隣に腰を下ろす。なんか近い。僕はそっと、左にずれて距離を取る。


「あれって、あなたの足なんですか? なんで足が別々に?」


 そういえば昨日も今日も、あの足音は昇降口で彼の顔を見たら逃げ出した。そうするとこの人といれば足音からは逃れられるのかな。


「そう、俺の足、えっと、なんで説明したらいいのかな、ちょっと調べるから待って、ええと、俺は最近こっちに引っ越してきたんだけど、こっちに来るときにバラバラになってしまって、今体を集めているところ」


 バラバラ!?

 彼は全く表情を変えずに話し続ける。


「あとはあの足だけなんだけど、逃げるから捕まえられないんだ。本気で逃げると向こうのほうが早いんだよ。だから、よければ君の足に罠をしかけたいと思って」


 まあ両腕で走るより足のほうが早そうな気はする。でも、罠?


「その銀色の足じゃだめなんですか?」


 彼は銀色の足を指で触れると、銀色の部分はくにゅりと柔らかく変形する。


「これ柔らかいから走れないんだよ。というかその前に他のものに長時間くっついていると溶けて混ざっちゃうからさ」

「でも、僕も僕の足は大事だから手伝うのはちょっと……」

「そう? 困ったな、無理に協力してもらうこともできるんだけど」

「えっそれは困る」

「だよね」

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