1-④ 三代目が帰って来た!:その3
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<O-283年><晩夏><津軽半島-ケルソネソスの鯵ヶ沢-カルディア城にて>
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「ふう、では港のほうはメティオコスに任すとして。さあ、では我々のほうは反乱の鎮圧だ! 我が輩の鎧と兜を持って来てくれ! それと、監視官のカリマコス君の分もな。」
部下たち
「「「はっ!」」」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「いいか? 城内には弓兵長の部隊のみを残し、それ以外の全軍で出陣するぞ!」
部下たち
「「「はっ!」」」
長女-エルピニケ(容光院)
「・・・お父さん、ちょっと良い? キモンがまだ、」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「おお、そうだったな。キモンがまだ戻らんか。だがお前も早く港へおりて、船出の準備をしなさい。」
長女-エルピニケ(容光院)
「でもこのままだと、一生キモンに会えなくなるような気がして。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「安心しろ、キモンのことはこの我が輩が責任を持って、無事に連れ帰る。」
長女-エルピニケ(容光院)
「・・・。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「・・・おい、キモンの奴は、まだ戻って来ないのか?」
騎兵長
「解りました、私が見てきます。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「いや、お前らは出陣の準備だ。」
騎兵長
「しかし、」
歩兵長
「おっ! 坊ちゃんが来ましたぜ!」
長女-エルピニケ(容光院)
「あっ、本当だ! キモン、キモーン! こっちよー!」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「おお、キモン、元気そうで良かった。しかし、悪いがこれからすぐに出陣するぞ。」
次男-キモン(小早川秀包)
「父さん、ちょっと待って下さい! 城門のところに居る避難民たちも、港に向かわせて構いませんか? 船の空きがあると良いのだけど。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「キモン、悪いが船はもうギリギリだ。そんな余裕は無いと思うぞ。」
次男-キモン(小早川秀包)
「だったら、キモンの荷物を全部捨ててもらって構わない。一人でも多く載せてあげて欲しいんだ。」
長女-エルピニケ(容光院)
「キモン! あなた、大切な思い出の品がたくさんあるって、あの大きな絵だって、絶対捨てられないって言ってたじゃない?」
次男-キモン(小早川秀包)
「でも彼らは、敵軍から逃れてここに来たんだ。ここで放り出したら、きっと殺されるか奴隷にされるしか無いんだ。どうか、彼らを助けてあげて欲しい!」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「う~む・・・」
次男-キモン(小早川秀包)
「ねぇ、父さん! 小早川ピライオス家は、津軽半島-ケルソネソスの主であり、ここの困った人々を助ける責任があるんでしょ? だったら!」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「う~む・・・」
次男-キモン(小早川秀包)
「父さん!」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「・・・」
騎兵長
「やれやれ、キモン殿には敵いませんな。三代目、あの避難民はせいぜい七十人程度です。着の身着のままでなら、船の隙間にでもなんとか載せられるんじゃないですか? なんなら、この私の荷物も全部捨ててくれて構わない。」
次男-キモン(小早川秀包)
「騎兵長!」
歩兵長
「おいおい、お前さん、なに格好つけてんだよ! しょうがねぇなぁ、まったく。そんならこっちも、荷物なんぞいらねぇよ!」
次男-キモン(小早川秀包)
「歩兵長!」
他の部下たち
「「「そんなら三代目! 俺たちのしょぼい荷物も捨ててくれ。しょぼいから、大して意味ないかもしれんがな。ガハハハハ」」」
次男-キモン(小早川秀包)
「みんな!」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「ちょっと待ちたまえ! その避難民たちは、どういう連中だ?」
他の部下たち
「「「あんた、まだ居たのかよ?」」」
次男-キモン(小早川秀包)
「ん? あなたは誰?」
長女-エルピニケ(容光院)
「その人はね、山口-アテナイ市から来た監視官なのだそうよ。長州-アッティカへ連れて行って良い人間の選別は、あの人たちが行うんだって。」
歩兵長
「ヘッヘッヘ、俺たちゃ、まるで羊みてぇだな。元気に『メ~!』とでも鳴きゃ、合格かい?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「その通りだ! 誰かさんのような狂った野良犬を通す訳にはいかんしな!」
歩兵長
「野良犬だって? そいつは俺らのことか!?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「フンッ!」
歩兵長
「てめぇ!」
次男-キモン(小早川秀包)
「おお、ならば頼みます! 避難民はほとんどが年寄りと女子供で、倭-ギリシャ民族と陸奥-トラキア民族が半々くらいだそうです。全員が津軽半島-ケルソネソスの出身だけど、とにかく安全な場所への亡命を希望しています。」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「キモン君とやら。残念ながら、その避難民を許可するわけにはいかない。」
次男-キモン(小早川秀包)
「え? なんでですか?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「市が許可したのは、山口-アテナイの市民権を有する者、あるいはそれ以外の倭-ギリシャ民族のうち相当な財産を有する者か、さもなくば手に職がある者のみである。しかるに、その避難民たちは、君が言うように、ほとんどが年寄りと女子供で、着の身着のままのようだ。加えて、異民族は基本的に受け入れられない。」
次男-キモン(小早川秀包)
「!」
騎兵長
「だ、そうですよ、キモン殿。ところで、私も陸奥-トラキア民族の出なのだが、私はここで騎兵長をやらせてもらっている。そんな私でも、駄目だと言うのか?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「先ほども述べた通り、長州-アッティカは近年、浦上-イオニアからの避難民が大勢押し寄せたため、もう受け入れられる余地が残っていないのだ。だから、異民族は奴隷としてなら許されるが、基本的には無理である。」
騎兵長
「ふざけるにも程がある! 我は誇り高き岩木-ドロンコイ族の族長であり、津軽半島-ケルソネソスの主ミルティアデスの片腕とまで言われる男であるぞ! 何が悲しいて奴隷になぞならねばならんのか? 三代目よ、この男一人だけなら、ここで事故死したとしても、誰も咎めを受けますまい!」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「なんだと! それは脅しか? 監視官を脅したというなら、あんたを犯罪者として訴える事が出来るのだぞ! 悪くすりゃ死刑だ!」
騎兵長
「おー、だったら訴えてみろや! この唐変木!」
歩兵長
「おいおい、さすがにそれはまずいぜ? その辺にしとけって!」
騎兵長
「しかし、間違ったことは言っとらんぞ!」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「おー、君は『後悔』という言葉を知らんようだな!」
騎兵長
「なんだと!」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「まー待て! 落ち着け、クサンティッポス! そなたのその直接的過ぎる物言いは、いらぬ衝突を生む。そちらも落ち着かれよ! 騎兵長を任されるほどの人物であれば、当然在留外人としての許可が出るだろうし、市への貢献次第では、市民権を得る事だって、あり得ない話ではない。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「その通りだ、騎兵長! ここは我が輩の顔に免じて堪えてくれ! そして、クサンティッポスよ、我々はこれから戦場へ向かうのだ。一々士気を削ぐような事を言われては叶わんのだが?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「その件は了承した。しかし、こちらとて、避難民を無制限に許可する訳にはいかんのだ。そちらも解ってくれ。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「しかし、事情が事情だ。ならば、避難民の行き先については、我が輩が責任を持つので、とりあえずここで船に載せる事だけは見逃してくれぬか? 君としても、助ける事が出来る人々がすぐ目の前に居るのに、これを死地に追いやってしまうのは、寝覚めも悪かろう?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「しかし、」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「クサンティッポスよ、この件については私からもお願いしたい。ミルティアデスがここまで言うのだ。彼の顔を立てて、我々もせめてもの手助けをしてやろうじゃないか。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「おお、カリマコスよ、感謝する!」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「礼には及ばんさ。そもそも山口-アテナイ市が、ここに援軍を送っていたなら、こんなことにはなっていなかったかもしれんしな。実は、私はここに援軍を出すべきと考え、そのように投票もした。これはせめてもの罪滅ぼしだ。なあ、君はどう思うかね、アルクマイオンよ?」
監視官a-アルクマイオン(毛利秀元)
「い、いや、私としても、目の前に助ける事が出来る命があるのなら、それを救う事にやぶさかでは無いさ。それに、ミルティアデスが責任を持つと明言しているのであるから、彼を信用して、その避難民たちも船に載せてやって良いのではないかと思う。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「そういうことだ、クサンティッポスよ。二対一となったが、ここで多数決をするかね?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「はいはい、解りました。私だって本心では哀れな人々を救ってやりたいと思っているのですよ。さあ、では港へ急ぎましょう! キモン君とやら、その避難民たちを速やかに港のほうへ寄越してくれたまえ。ただし、本当に荷物は捨てなければならぬかもしれんからな。後で文句を言わないように!」
次男-キモン(小早川秀包)
「ありがとう! 避難民たちにも良く言っておきます。クサンティッポスという男前な監視官が、君たちを救ってくれたって!」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「そいつは、どうも。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「では、各々自分の仕事に取りかかれ!」
部下たち
「「「はっ!」」」
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<ミルティアデスは、城内の兵士のほとんど(およそ千人余り)を城壁の外へ出すと、鯵ヶ沢-カルディア城からほど近い、とある場所へと出陣していった。そこには、彼を裏切って帝国側についた反乱軍が集結しつつあった。>
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主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「それでは、ここに陣を布く。中央には歩兵長が率いる歩兵部隊を、右翼には騎兵長が率いる騎兵部隊を、そして左翼には我が輩が率いる混成部隊を置く。キモンは、騎兵長のもとにつけ。」
皆
「「「はい!」」」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「ミルティアデスよ、本当に戦さをするつもりなのか? 反乱軍はみるみる膨れ上がって、こちらの数倍にもなっている。あとは船で逃げるだけなのだから、別にわざわざ戦さをせずとも良いのでは無いかと、私は思うのだが?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「たしかに、鯵ヶ沢-カルディアを除くほとんどの倭-ギリシャ人の町が敵方に回り、岩木-ドロンコイ族を除くほとんどの陸奥-トラキア人の部族が敵方に回ってしまった。我が輩に従う兵士は僅かに千人余り。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「それに対して、敵は一万人を超えているようにも見えるぞ? これに勝てると思っているのか? 負ければ討ち死に、もしくは討ち死にせずとも、港まで戻れず、力尽きて捕まるかもしれぬぞ? だとするならば、私はわざわざ負け戦をするのには反対だ。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「うむ、まともに戦えば負けるだろうな。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「なにか、秘策でもあるのか?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「・・・、カリマコスよ、君はあのくちばしの青い若造と違って、とても口が堅そうだ。わかった、君にだけは打ち明けておく。良いか? これは多くの人々の生命と安全を脅かす事になるため、絶対に口外しないでくれたまえよ?」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「うむ。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「この戦さは、実は茶番なのだ。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「は? 茶番?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「そうだ。八百長とも言う。我々は、長州-アッティカからの援軍の望みが薄いと悟ってから、ここを放棄する事を真剣に考えねばならなくなった。しかし、放棄すると言ってもだ、津軽半島-ケルソネソスの住民を全員連れて行く訳にもいかない。そんな大勢を移民させる場所など、どこにもありはしないからな。かといって、徹底抗戦に最期まで付き合わせて、玉砕に追い込むいうのも可哀想な話しだ。ならばどうするか? 連れて行ける最小限の人数以外は、我々を裏切って帝国軍に内通するという形にすれば良い。そうすれば、彼らは我々が去った後も、ここで帝国領の住民として、暮らしを続けて行く事が許されるだろう、と。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「・・・。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「という訳で、鯵ヶ沢-カルディア以外の倭-ギリシャ人の町と、岩木-ドロンコイ族以外の陸奥-トラキア人の部族には、予め帝国軍に内通の使者を送っておくように勧め、この偽装を疑われないようにするため、最期に実際に戦って見せて、彼らが我々に勝ってここを追い出した、という実績を置き土産として残してやろうという訳だ。だから、本気では戦わない約束なのだ。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「おお、なんと大胆な謀略か。しかし、このような大掛かりな偽装が、本当にバレずに、うまくいくのであろうか?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「案ずるな。この謀略を知るのは、各々少数であるし、またたとえ発覚したとしても、実際には、我々が本当に追い出されるという結果だけが残るのであるから、帝国側としても、投降してきた住民たちを、むざむざ皆殺しにしても、大した利益にはならんだろう。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「そういうものなのか?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「そういうものだ。ペルシャ人は、投降してきた者に対しては意外と甘いところがあるからな。我々はそれを利用して、ここの住民を帝国民に偽装させることが成功すれば、のちのち内部情報を適時得たり、別の戦さの時には、ここの住民から挑発された兵士や部隊が、我々に有利な動きを戦場でしてもらう、なんてな事も期待できるという訳だ。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「ミルティアデスよ、これは驚いた。君がまさか、ここまでの策士だったとは。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「いやいや、異民族と戦っていると、これぐらいの謀略は普通なのだよ。それより、カリマコスよ、この謀略の秘密は君が長州-アッティカに帰ったとしても、決して口外しないで欲しい。もしもその話しが、敵の耳に入れば、皆殺しにはならずとも、ここの住民になんらかの危害は加えられるであろうからな。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「わかった。それは、神に誓って、隠しておくことを約束する。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「ありがとう。我が輩も彼らに約束したのだ。『我が輩は、長州-アッティカへ移住する。しかし、帝国との戦いを諦めた訳ではない。あちらへ移住したら、大勢の山口-アテナイ人に話しかけて、帝国との戦いに立ち上がるよう説得して回るつもりだ。山口-アテナイ市にはおよそ一万人の重装歩兵が居り、その他の兵士を合わせれば総勢三万人。これらの全軍を自由に動かせるなら、帝国軍に手ひどい一撃をくらわせて、津軽半島-ケルソネソスを取り戻す事だって、案の内である。だから、それまで君らは、この地で帝国軍に寝返ったと偽装して、おとなしくしておいてもらいたい!』と。」
伝令
「三代目! 全軍の布陣が完了しました!」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「解った、それではそろそろ最期の戦さに臨もうか。全軍に前進の合図だ!」
伝令
「三代目、一列目が、敵軍と交戦状態に入りました!」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「そうか、よしではこれから総退却に移る。『全力で城へ戻れ』の合図を出せ!」
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<かくして、ミルティアデスの軍勢は、敗走の態で鯵ヶ沢-カルディアの城内へと逃げ込むと、帝国海軍の隙を見て、港から軍船五隻に分乗し、津軽半島-ケルソネソスを脱出することに成功したのであった。行き先は長州-アッティカ地方、彼の生まれ故郷であった。>
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