1-④ 三代目が帰って来た!:その2
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<O-283年><晩夏><津軽半島-ケルソネソスの鯵ヶ沢-カルディア城にて>
伝令
「三代目! 邸のほうに不審者が出たと、奥方が騒いでおられます! こちらへお連れして構いませぬか?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「そっちもか? 解った、すぐに連れて来い!」
伝令
「奥方、こちらへ!」
後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)
「ミルティアデス殿、よくぞご無事で戻られました! 留守の間、何があろうと落ち着いて待つつもりでいましたが、城壁の中でさえこのような騒ぎになると、そうも言っておれません。なにとぞ、あなたのお力で、わたくしたちを安心させて下さい。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「ああ、安心してくれ、ヘゲシピュレ。このミルティアデスが戻って来たからには、もうくだらん騒ぎは仕舞いだ。」
後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)
「なんと心強い! さすがはあなた。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「うむ、エルピニケも怖い思いをさせて、すまなかったな。もう大丈夫だぞ。」
長女-エルピニケ(容光院)
「はい、お父さん、これでようやく落ち着けます。でも、キモンの姿が見えませんが、キモンはどこに行ってしまったのです?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「うむ、心配せずとも良い。今、歩兵長に迎えに行かせている。間もなく姿を見せるだろう。」
歩兵長
「三代目! 只今戻りました。騎兵長もです。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「おお、ご苦労だったな。」
騎兵長
「三代目! ご無事で何よりです。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「お前もな。それで、暴徒どもは鎮まったのか?」
騎兵長
「それが連中、数は少ないのですが、バラバラになって路地裏に逃げ込んだものですから、少々やっかいなのです。とはいえ城内の騒ぎは、大方片付いたと言って良いでしょう。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「なるほど、それであちこちから煙が上がっているという訳か。ご苦労だったな。」
騎兵長
「不手際ですみません。加えて、人質の一部も、失いました。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「そうか、それはちと厄介なことになっているな。どうしたものか・・・、」
長女-エルピニケ(容光院)
「お父さん、キモンは?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「おお、そうだ、キモンはどうした?」
騎兵長
「キモン殿は、もう間もなく来られるでしょう。ちょっと用事があるようで。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「用事?」
騎兵長
「ええ、実は、我々は危険分子が混じり込んでいた避難民を、まとめて城壁の外へつまみ出してやろうとしたのですが、キモン殿はそれに大反対いたしまして。『本当に難を避けるためにやって来た人々まで無慈悲に放り出すなんて、僕は絶対に承服できない!』と言いまして、今も他の兵士たちが避難民に手を出さないよう見張っているという訳です。まったく、この私にも、槍を本気で向けそうな、そんな勢いでしたよ。ハハハハ」
長女-エルピニケ(容光院)
「キモンったら・・・」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「やれやれ、我が輩の息子は二人とも、何ゆえ時と場合を弁えないのばかりなんだ?」
長男-メティオコス(小早川秀秋)
「え? 私もですか?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「そなたの育て方が、悪かったのであろうか?」
後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)
「あなた! なにゆえ、このような時だけ、わたくしの責任になさるのです? キモンに軍事のことを教えたのはあなたではありませんか?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「そう怒るな、ただの冗談だ。とはいえ、キモンのことはもういい、放っておけ。それよりお前たち集まれ。今後の方針を決めるぞ。・・・悪いが、状況は厳しい。」
歩兵長
「三代目、やはりこの地を放棄されるので?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「ああ、山口-アテナイ市の民会で必死の説得を試みたが、山口-アテナイ市がこの地へ援軍を送る事は、全く賛同を得られなかった。」
歩兵長
「少数の援軍さえも、送ってもらえないので?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「ああ、ただの一兵たりとも、駄目だと言われた。・・・いや、正確に言うと、この監視官たちを送ってくれたぞ! 三人もな!」
監視官たち
「「「・・・。」」」
歩兵長
「やれやれ、三代目は山口-アテナイ市で生まれ育ったんですよね? なんてぇ薄情な母国だい。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「まあ、この件に関しては、悔しいが、想定内ではあった。それより問題なのは、この先の回答だ。我が輩は次に、この津軽半島-ケルソネソスから避難せねばならん移民の受け入れを願い出たのだが、これは予想してなかったほど、厳しい答えであった。結論から言うと、山口-アテナイの市民権を持っている者は、家族も含めて長州-アッティカへの移住を許可するが、その他の倭-ギリシャ民族は、市の財政に貢献できるほどの金持ちか、さもなくばなんらかの役に立つ手に職を持つ者に限る、という条件であった。ましてや異民族は、少数でも入国を許可しないと宣言されてしまった。」
倭-ギリシャ系の部下a
「なんだって!? ということは、自分らも三代目についていくことは叶わないっていうことですか? そんな薄情な! 自分らは、死ぬまで三代目の側を離れないと誓った男たちですぜ?」
倭-ギリシャ系の部下b
「自分は、槍と剣の扱いだけは手練だって自信を持ってるんですが、これは手に職に当たるんですかい?」
陸奥-トラキア系の部下
「俺なんか、思い切り異民族だ。でも、武器職人としての腕なら、ちっとは音に聞えたもんですぜ? それでも駄目だって言うんですかい?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「そのようだ。」
歩兵長
「やれやれ、改めて、この津軽半島-ケルソネソスは、本国から切り捨てられたっつう訳ですね。
なぁ? あんたたち監視官さんは、正直どう思っておいでなんで?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「もちろん、同情はするが、これは仕方ないことであろう。長州-アッティカは、古くから人口が過密でありながら、穀物の収穫にあまり恵まれていない。結果、海外から大量の穀物を輸入している現状だ。ゆえに、輸出に貢献できるような人材ならば良いとしても、ただの穀潰しをこれ以上増やすのは、共倒れの危険が生じる。既に浦上-イオニアからの移民も大勢受け入れた後だ。そのぐらいの事情は、君らも判っているだろう?」
歩兵長
「そんなら、せめて長州-アッティカ以外でもいいから、移民できそうな植民地を我々に分け与えるとか、紹介するとか、そういうことしても罰は当たらねぇのでは?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「世の中には、労働者不足で、新たな植民者を募集している市だって珍しくない。例えば黒海のほうにでも行けば、そんな町いくらでも見つかるだろう?」
倭-ギリシャ系の部下a
「おいおい! 俺たちにそんな遠くへ行けってのかい? あんたは!」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「実際、ここからほど近い下北-ビュザンティオン市の連中は、対岸の函館-カルケドン市の連中とともに、帝国海軍が来る前に、国を捨てて、黒海の気仙沼-メサンブリアとかいう町に逃れて、そこに住み着くつもりだそうだぞ。」
倭-ギリシャ系の部下b
「やれやれ、三代目、あんたもなんか言ってやってくれないか? この薄情な連中によぉ。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「ああ、山口-アテナイ市の民会で散々言って来たさ。でも済まん、我が輩は演説がうまくないようだ。彼らを説得できなかった。済まん、勘弁してくれ。この通りだ。」
倭-ギリシャ系の部下b
「止めてくれ! あんたに謝られちゃあ、何も言えないよ。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「済まん・・・。」
長男-メティオコス(小早川秀秋)
「フフフ、手を貸さないが、口だけは出す。なんだか、イソップ寓話に出て来そうな話しだねぇ。そうだ、『マムシと水蛇』って話しが、たしかこんな感じだ。
『むかーしむかし、とあるマムシが、池に行って水を飲んでいました。しかしその池には既に水蛇が住み着いていたものですから、自分の縄張りを荒らすマムシに腹を立て、いつも喧嘩になっていました。そこで両者は決闘することにし、「勝った方がそこの土も水も全部自分のものにする」と取り決めました。すると、常々その水蛇を憎んでいた池のカエルたちが、マムシのもとにやって来て「自分たちも助太刀する」と申し出たのです。いよいよ決戦が始まり、とても激しく戦った末、見事マムシが勝ちを収めました。マムシを応援していたカエルたちも大喜びでした。けれどマムシは、カエルたちが少しも自分を助けずに、ただ歌を歌っていただけなのにとても腹が立ち、文句を言ってやりました。するとカエルたちが言うには、「いいですか? 我々の加勢は手でするのではなく、声だけでするものなのですよ!」』 クククク、これは傑作だね、ククククク」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「・・・、ミルティアデスよ、この忙しい状況で私たちは喧嘩を売られているのだろうか? 君の息子も、長州-アッティカに帰って来るなら、民会や評議会でしょっちゅう私たちと顔を合わせる事になると思うのだが?」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「悪い、これは冗談だ、忘れてくれ。おい、メティオコス、あまり余計な話しをするな!」
長男-メティオコス(小早川秀秋)
「え~、冗談ではないですよ。寓話ですよ。人間のやってしまいがちなことを、虫や動物に託して、人間性の本質を炙り出すという、とっても高尚な文学芸術の一種ですよ。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「それはもう解った! それより、お前には頼み事が一つある。すぐに港へ降りて、船に荷物を乗せるのを指揮してくれ。ヘゲシピュレやエルピニケも連れてな。そして、荷物や避難民を船に載せられるだけ載せて、帝国海軍が来ないうちに、早く送り出すんだ。時間が無いので急いでだぞ。我々の脱出用には新型の三段船を五隻だけ残しておく。それ以外の船は全て使え。」
長男-メティオコス(小早川秀秋)
「了解しました。では早速!」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「ああ、それと、この監視官たち三人がそれを検査するらしいので、お前が世話をして差し上げろ。」
長男-メティオコス(小早川秀秋)
「わかりました。ではお三方、港までご同道願います。」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「ならば、我々も二手に分かれよう。港へは二人が行くとして、ここには一人が残ってミルティアデスにつくという事で。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「ちょっと待ちたまえ! 我が輩はこれから、城外に近づいているという反乱分子の鎮圧のため、出陣せねばならんのだよ。そして、それが片付けば、頃合いを見計らって、残る五隻の軍船でここを脱出するつもりだ。もしも、帝国海軍がその前にやって来たら、逃げ切れずに沈められるかもしれん。君たち監視官は、身の安全のためにも、我が輩の妻子らと共に、先に船出したほうが良い。今なら安全であるぞ?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「心配はご無用! 私たちは任務に命を賭けているゆえ、君がギリギリまで居るというのなら、私たちもギリギリまで付き合うべきだと考える。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「うーむ、これは参ったな・・・」
歩兵長
「やれやれ、こいつぁ、やっかいなのに食いつかれちまったもんだ。は虫類並みだぜ。」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「ほう、よく解ったな。私の信条は、『蛇の如く生きろ』、だ。」
歩兵長
「ヘビだって? そんなの自分で言うなんて、あんた、ある意味、あっぱれだよ。」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「ありがとう、よく言われる。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「・・・やれやれ、そこまで言うのなら、もう止めはせぬぞ。では、メティオコスよ、監視官二人を連れて港へ下ってくれ。あとは手筈通り、任せたぞ。」
長男-メティオコス(小早川秀秋)
「了解です。では早速! 義母上とエルピニケも、参りましょう。ちょっと急ぎますよ。」
後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)
「わかりました。支度は良い? エルピニケ?」
長女-エルピニケ(容光院)
「はい。でも、キモンが・・・。」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「さて、ミルティアデスのほうには私がついて、港のほうへはあなた方がつく、という事でよろしいか?」
監視官a-アルクマイオン(毛利秀元)
「君がそれで良いというなら、私に異存はない。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「私も、異存ない。」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「では、そういうことで。よろしく、ミルティアデス。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「ちょっと待ちたまえ! こっちのほうは、危険な場所だ。もしかすると戦いを手伝ってもらうかもしれん。出来れば最も戦いに慣れた者を寄越して欲しい。カリマコスよ、君は将軍になった経験もあり、戦さ慣れしているよな? だったらこちらには君が、そして安全な港には、戦さ経験の少ない他の二人が行くほうが適任であろう? それとも、戦いの足を引っ張るために、君たち監視官はここに来たとでも言うつもりか?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「無礼な! 私とて剣術の腕には覚えがある!」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「一介の兵士として有能かどうかを問うているのではない! 指揮官としての視点でも、戦さ慣れした落ち着いた者に監視してもらいたいと言っているのだ。口だけ達者な若者が、いったい戦さの何を監視できるというのだ?」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「なんたる侮辱か! 私は三十歳を越した思慮分別もある立派な市民である。その市民を捕まえて、そのような目下の者に説教するが如き物言いは、市民同士の平等を謳う山口-アテナイ市の法律と慣習に、著しく背く言動だ! 断じてこれを許してなるものか! 訂正しないのならば、訴える事も辞さないぞ!」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「ああ、平和になったなら、いくらでも訴えよ! しかし、戦さの時には、戦さの熟練者の意見に従ってもらうぞ! なにしろ、命がかかっているのだからな。奇麗ごとをいくら並べてもなんの役にも立たん。カリマコスよ、もう時間も無い、お願いだからこの若者を落ち着かせてくれないか?」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「クサンティッポスよ、このミルティアデスが述べる事にも一理ある。たしかに適材適所を考えると、港での積み荷や移民の監視などの細かい作業は、この私より君のほうが適任だろう。私はどちらかというと、大雑把で、戦いとかのほうが向いている。だから、ミルティアデスのほうへは私が行こう。アルクマイオンよ、君に異論はあるかね?」
監視官a-アルクマイオン(毛利秀元)
「いや、私は君がそこまで言うのなら、君の意見に賛成するよ。」
監視官b-カリマコス(福原貞俊)
「よし、では二対一で決まりだ。」
主役-ミルティアデス(小早川隆景)
「さすがはカリマコス、我が輩も異議無しだ。敵はもうすぐそこまで迫ってきている。我が儘を言って自分の職務を滞らせるべきではない。それこそ、自分の職務に対する毀損だ。市に不利益を与えてはならない。」
監視官c-クサンティッポス(桂小五郎)
「くっ、・・・。」
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