四駆ターボは最高だぜ
週末の夜。いつものようにファミレスに集まった煎餅屋岩木(自家用)wのメンバーは、ドリンクを片手に雑談を楽しんでいた。
「お疲れーッス。」
そこに遅れて現れたメンバーの笹端が右手を軽く上げて挨拶をする。
「おお、お疲れ。」
「お疲れ様ー。」
笹端に対して他のメンバーが口々に挨拶を返す。
「・・・なあ、パチ文。」
席についた笹端が気まずそうな顔をして隣にいるパチ文に声を掛ける。
「ん?何?」
「悪いんだけど、ちょっとお金借して?」
両手を合わせ、拝むように要求する。
「どうしたの?」
「エロい買い物をしまくったらお金がなくなっちゃって・・・」
「断る。」
理由を聞くや否やパチ文は無表情になり、笹端を突き放した。
「冗談冗談!高い買い物しちゃって生活がヤバいんだよ。」
笹端が慌てて訂正する。
「どんなエロいことしたんだよ・・・」
呆れ顔のパチ文がため息をつく。
「いや、エロいことは関係ない。とりあえず、お前ならわかってくれるはずだ。」
「はあ?」
「なるほど、確かにこれは生活ヤバくなるな。」
店内での雑談がお開きとなり、駐車場に移動したパチ文達の前には維持費の問題によって手放したはずの笹端のエボ7が停まっていた。
「だろ?」
エボ7の運転席に寄りかかる笹端がドヤ顔をする。
「買い戻したのか?」
驚いた顔の陸斗がエボ7をまじまじと見つめる。
「俺はやっぱ四駆じゃなきゃダメですね。」
笹端が良い笑顔で言う。
「バカだねぇ・・・で、いくら借して欲しい?」
鼻を鳴らし、口元に笑みを浮かべてパチ文が聞く。
「三万ほど・・・」
「わかった。・・・ほら、三万。」
パチ文が財布から万札を三枚取り出して笹端に渡す。
「ありがとう。来週の給料日に返す。」
「てか、その後の維持とか大丈夫?」
「まあ、無駄なことをしなければ・・・」
二週間後。
「いやぁ、助かった。これ、借りてた三万な。」
給料日に仕事が終わったその足でパチ文と合流した笹端は、H市北部のショッピングセンター内にあるフードコートで借りていた三万を返した。
「はい、確かに・・・」
パチ文はそう言って受け取った紙幣を財布にしまった。
「あ、そうだ。」
財布をポケットに入れたパチ文が何かを思いついたような声を出す。
「ん?」
スプーンで目の前のカレーをすくったまま笹端が動きを止める。
「ある程度余裕が出来たんなら走りに行かない?」
パチ文がそう提案してニヤリと笑う。
「・・・軽くだぞ?」
少し考えた笹端が答えを出す。
「じゃあ、食べたら行こうか。」
そして、パチ文が先ほどから湯気を立ち昇らせている月見うどんに手をつけた。
「これだよ。これ!暴力的な加速とどこまでも回りそうなチート級のコーナリング。とてもヴィッツじゃ味わえねぇ!」
社峠の曲がりくねった道をステアリングで裁く笹端が、ランエボの性能を五感で堪能する。
「おいおい、どの辺が軽くだ・・・?」
水を得た魚のように突っ走っていくエボ7に、パチ文が愛車、ワンエイティのSRエンジンに鞭を打って必死に食らいつく。
「結構本気だったな。」
社峠を二往復して麓のコンビニに立ち寄ったパチ文が、笹端にコーラを手渡しながら笑う。
「おう、さんきゅ。楽しくてつい回しちまった。」
笹端が爽やかそう言ってコーラを開封する。
「それは結構なことだけど、あまり無茶はするなよ。」
「ああ。峠にはしばらく近づかないようにした方がいいかもな・・・」
「その方がいいかもね。」
パチ文が苦笑いをする。
「まったく四駆ターボは最高だぜ。」




