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デスルーラーII ソウルメイト  作者: kiriko


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8/9

ソウルヒーラー

ある日の昼下がり、リュクサは本屋にやって来た。

アステルの妻となったアネモネの出産日が近くなり、赤ん坊に読み聞かせるための絵本を選びに来たのだ。

ただでさえ最近アステルが家に来ることが多くなっており、リュクサとしてはアネモネに対し、申し訳ない気持ちで一杯だ。

せめて絵本くらいは贈ろうと思うのは、義弟として当然のことだった。


店内には暖房が効いており、リュクサはマフラーを緩めると、目当ての絵本コーナーに移動し始める。

だが、そこに到着する前に、とある雑誌が目について、手に取ってみた。

表紙を飾っているのは、シノブ・コウサカという男性だった。


「シノブ・コウサカだって…?」


嵐の夜に、ノクティス家にやって来た彼。

あの時は顔が泥だらけでわからなかったが、こんな顔の人物だったのか。

だが、そのシノブがなぜ雑誌に掲載されているのか。

リュクサはビジネスバッグを足元に置き、両手で雑誌を持ってページをめくる。

そしてシノブの記事に差し掛かった時、唖然とした。


「ソウルヒーラー…?なんだ、それは…?」


パラパラとページをめくるたびに、記事に目が釘付けになってしまう。

だが、ゆっくり読んでもいられない。

リュクサにはまだ仕事があるし、ノエルも帰りを待ってくれているからだ。

とりあえず、絵本はまた別の日に選ぶとして、雑誌のみを買って帰ることにした。




「生者の魂に寄り添える…それが、ソウルヒーラー、ですか…」


リュクサが急いで帰宅すると、ノエルがコーヒーを淹れて待っていてくれた。

そして、リュクサが手渡した雑誌を読み、シノブの記事まで進んだところで、口を開いた。


「デスルーラーとは対を成す職業、といったところだ」


リュクサの言葉を聞くと、ノエルは少しだけメガネを持ち上げ、続きを読み進む。

そして、シノブの特集記事の最後に、水晶の写真を見つけた。

同時にリュクサが記事を覗き見し、眉をしかめる。


「ほう、商売繁盛の水晶ですか?こんなもので商売が繁盛するなら、どこの店へ行っても水晶がありそうなものですが」


ノエルなりの嫌味に、リュクサは小さな笑みを浮かべた。


「それは父上が使っていた魔道具の一つだ。更に言うと、俺の魔力量をその水晶で管理していた」

「本当ですか?」

「ああ。幼い頃から見て来た水晶を見間違えるはずがない。それに…魔力を使って調べてみた」


だからあの水晶は、かつてのルシアンの所有物だったと考えて良さそうだ。

ところで、なぜルシアンの遺物がシノブの手に渡ったのだろう。

ノエルの疑問はそこに尽きた。


「父上の魔道具は、全て骨董屋に売られた。その際、兄上が魔力抜きをしたはずだが…不完全だったんだろう」


だからと言って、リュクサはアステルを責めるつもりはなく、ただあの水晶を放置するのはまずいのだと言ってきた。


「何がまずいのですか?」

「あの水晶には、俺の魔力が流れている」


「本来なら、特級魔術師は魔力を閉じているべきだ。そういう掟というわけではないが、魔力の悪用を避けるため、という暗黙のルールがある」


だが、リュクサは常時魔力を解放しながら生きてきた。

ルシアンに「余計なことをするな」と吹き込まれていたからだ。

彼亡き後はリュクサ自身に魔力を閉ざす余力がなく、今に至っている。

同時に、ノエルは気が遠くなりかけた。

ただでさえ倒れてばかりのリュクサに、今度は魔力を閉ざすためのエネルギーを使えというのか。

この世界は、一体リュクサにどれだけの重荷を背負わせるというのだろう。


「一番の懸念は、これがコウサカさんの手元にあるということですね」


ノエルが気を取り直して言う。


「そうだ。水晶の魔力に気づけば、十中八九、恋人を治そうとする」

「どうやって治すのです?」

「できるだけ水晶に長く触れること、そして願いを強く念じることだ」


ノエルには、医師が一生かかっても治せない死病が、まさかそんな方法で治ってしまうとは信じられなかった。


「リュクサ、一つ確認です。あなたにならわかるでしょう?今、コウサカさんの恋人がどうなっているのかが?」

「わかる…だが、やりたくない」

「なぜ?」


そこで、リュクサはとても苦しそうな表情を見せた。


「わからないのか、ノエル!?そんなことをしてあなたに嫌われたら、俺はこの先どうやって生きて行けばいいんだ!?」


リュクサらしくない荒々しい言葉。

でも、一つわかったことがある。

彼は変わりたくないんじゃなく、変わることを恐れているんだと。

他の誰でもなく、ノエルに嫌われたらどうしようと、怯えているのだと。




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