表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスルーラーII ソウルメイト  作者: kiriko


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/9

異変

光る水晶を手に入れたシノブ。

ソウルヒーラーとして、カウンセリング中ずっとデスクの台座の上に置いているのだが、鈍い光を湛えたままだ。

休みの日に色んな角度から観察してみたのだが、どうやら自然発光のようだ。


「これがあんたの店の目玉ってやつだね?金色に光るだなんて、本当にありがたい感じがするねぇ」


光る水晶の噂は、瞬く間にシノブ宅の周辺に広がっていき、大した宣伝もしていないのに、店の前に行列ができるようになっていた。

少し前までは閑古鳥が鳴いていたのに、夢じゃないかと思えるような盛況ぶりだ。


今、向かい側に座っている老婦人は、死後も夫と同じ世界で生きたいと願っており、シノブから癒しの言葉を待っていた。


「ありがたい感じ、というより…ありがたいんです」

「おや、随分と自信たっぷりじゃないか?」

「ええ…ちょっとプライベートでいいことがあったんです」

「結婚でも決まったのかい?」


シノブはズバリ言い当てられたことで、たまらず後頭部をかいた。


夜になり、ようやく最後の客を見送ると、店内の清掃の時間だ。


「シノブ、今日もお疲れさま!」


元気に階段を下りてきたのは、少し前まで病床に臥せっていたマリだった。

しかし、今のマリはシノブと出会った頃の彼女である。

背中で波打つ黒髪は艶やかだし、顔色もすこぶるいい。

痩せ細っていた体はふっくらし、「スカートが入らないよ」とこぼしていたくらいだ。


「マリ!体は大丈夫か!?」

「大丈夫だってば!シノブは心配し過ぎなの!今はすごく体が軽くて、病気だったのが嘘みたいなんだ!」


これが、本来のマリである。

臥せっていた時は弱気で暗い表情ばかりの彼女だったが、本当は明るくて溌剌としていて、物事をはっきり言う性格だ。


「シノブ、私が水晶を磨くね!」


マリが手にしていたクロスを広げ、水晶をその中に入れて磨き始める。

力強く磨くので、キュッキュッという音が小気味よかった。

正直なところ、シノブはマリの回復に、水晶は関係ないと思っている。


「俺や主治医がかなり頑張ってたから、絶対にそのせいだ!」


ここ数年、ずっとつらい思いをしてきたが、今度は自分とマリの幸せを手に入れる番だと、気持ちを新たにしていた。




一方で、リュクサの倒れる頻度は上がっていた。

一日一度で済めばいいが、何度も倒れてしまうと、ノエルとしても見過ごせない。

リュクサが倒れる度に見舞いに来るアステルの表情も、徐々に険しいものとなっていった。


「ノエル医師、リュクサの体はどうなっている?」

「今は、デスルーラーとしての務めを果たすのがやっとなのです」


ノエルとしても、切れる手札は全て切っている状態だ。

それなのにリュクサは倒れてしまうのだから、どうしようもない。


「精神的な支えが、必要なのかもしれません」

「あなたという専属医がいる」

「私は使用人の一人に過ぎません…」


すると、ノエルが目にしたことがないほど、アステルが眉を吊り上げた。


「ノエル医師、いい加減にしないか!あなたがそんなことでどうする?」

「ア、アステル様…リュクサが起きてしまいますが…?」

「構うものか!あなたこそが、リュクサの精神的支柱でしょう!?使用人などと思われては困る!」


そんなバカな──、とノエルはメガネを押し上げる。

こんなに激昂するアステルを見るのは初めてだし、何より自分が相手では、リュクサは本心を漏らさないのではないか。

恐る恐るそう言ってみると、アステルは興奮を収めて椅子に落ち着いた。


「普通、心を許していない人間に、愛の重さが知りたい、と言うものですか?」

「あの時は、私しか部屋にいませんでしたし…」

「仮にそうだとしても、リュクサはあなたしか見ていない。だから、四年前にあなたを連れ帰ったのでしょう」


ノエルが尚も迷っていると、目の前にアステルの手が差し出されてきた。


「弟を頼みます、ノエル医師。あなたになら、リュクサの全てをお任せできる」

「買い被り過ぎでは…?」

「僕は弟の目を信じているに過ぎません。でも、少し羨ましいですね」


手を握り返しながら、ノエルがどういう意味かと訊ねると、アステルはちょっと恥ずかしそうに教えてくれた。


「リュクサは人見知りの激しい子でした。僕やアネモネ以外の人間に懐くというのは、ちょっと微妙な心境なのですよ」

「嫉妬、ですか?」

「そう、それです。だからあなたが実に羨ましい。でも、僕にはあなたの代わりは務まらない…これはジレンマですね」


アステルがあまりにも真剣なので、ノエルもついつい笑ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ