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デスルーラーII ソウルメイト  作者: kiriko


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12/13

衝突

マリの視界には、今二人の男性が映っていた。

一人は黒髪に紺碧の瞳を持つ、とても美しい男性。

もう一人は長い金髪を左側で三つ編みにし、フレームレスのメガネで知的な印象を醸す、整った顔立ちの男性だ。


「朝早く失礼します。マリ・トクナガさんですね?」

「え?な、なんで私の名前…」


ノエルは一瞬見ただけで、マリの体調を把握した。

リュクサの言う通り、彼女には病の痕跡が全く残っていないようだ。


「まず自己紹介を。こちらがリュクサ・ノクティス、現デスルーラーです」

「初めまして、トクナガさん」


マリは目の前の二人にすっかり見入ってしまい、彼らの声がなかなか頭に入ってこなかった。

二人とも長身で手足が長く、まるで雑誌のモデルのようだ。


「は、初めまして、マリ・トクナガです」

「私はノエル・ヴァレンティス。元医師です」

「え、医師…ですか?」

「ええ、今はリュクサの専属医です」


専属医と医師の違いがわからないマリ。

でも、病人を治すことを生業とした人であることだけは、理解した。


「おい、マリ?どなたなんだ?」」


シノブがダイニングキッチンから顔を出し、玄関先を見ると、一瞬で顔を曇らせた。


「ヴァレンティス医師…それに、リュクサ・ノクティス…?」

「お久しぶりです、コウサカさん」


ノエルが少し不自然なくらいに声を上ずらせた。


「あんたら、何しに来た!?もう医師なんて必要ないんだ、帰ってくれ!}


確かにもう必要ないのだろうなと、リュクサはマリを見つめる。

やせ細っておらず、面やつれもしておらず、肌艶が良くて声に張りもある。

どこからどう見ても、健康な人間だ。


「水晶を返してもらいに来た」


リュクサの言葉に、シノブは思い切り狼狽した。


「す、水晶なんて知るか!そんなもん、持ってないんだよ!」

「いや、この家の中にある。隠しても無駄だ」


そこで、ノエルが話を引き継いだ。


「マリさん、あなたのその健康体は、水晶によるものだったのです」

「え…?」

「あの水晶は、リュクサの亡父であるルシアン・ノクティスの魔道具でした。彼が死してから、骨董屋に売られています」


シノブが目を見開いた。

確かにあの水晶は骨董屋で買ったものだ。

ということは、この二人は真実を口にしているのだろうか。


「デタラメを言うのはやめろ!」


水晶が光ったのは、シノブが買ってから数日が経過した後のことだ。

じゃあ、なぜそれまで水晶は光らなかった?


「骨董屋ではあまり人に触れられない水晶だった。あれは人が触れると魔力を放出する水晶だ」


リュクサが一歩前へ出る。


「人の手が触れた時にこそ、真価を発揮する。今回のトクナガさんが、その最たる例だ」

「お、お前…俺の、心を…?」


まさか、という思いがシノブの頭を過る。

こちらの考えていることが、リュクサに筒抜けになっているのだ。


「読心術を使わせてもらっている。あなたには、話が通じそうにないからな」

「ノクティス、お前…!」

「次はなぜ魔力が宿ったのか、か?俺の魔力を勝手に吸っていた」

「お前の…魔力…だと?」


ふざけるなと言いたいのに、言葉が喉につかえる。


「医療に魔力を転用することは、違法だ」

「なっ!?」


そして、この言葉にはマリも反応した。


「ノクティスさん、それは一体、どういうこと?私、治ったから、それでいいんじゃないの?」


リュクサもまた、マリの方へと視線を向けた。


「治ることは、あなたの人生に含まれていない要素でした」

「そ、そんな…じゃあ…治ったら、いけなかった…の?」


マリの口調が遅くなり、リュクサがむな苦しさを覚え始めると、ノエルが一歩前に出た。


「そうです。あなたの病気は本来治ってはいけないものでした」

「あんたら、マリが死ぬべきだったとでも言いたいのか!?」


ノエルはシノブの剣幕にも狼狽えない。

医師として、こういう宣告になれているのだろうと、リュクサは思った。


「ふざけんな!あんたは元医師だろう!?よくもそんな酷いことが言えるな!?マリは治った!それが事実だ!」

「医師は時に残酷な宣告をするものですよ、コウサカさん?」


本当なら自分が矢面に立つべきなのに、またノエルに守られてしまっている。

そんな思いから、リュクサも前に出た。


「魔力で治ったトクナガさんから、水晶を奪ったらどうなると思う?」


シノブとマリが同時に息を飲んだ。

そして、リュクサの口調がかなり変わったことにも気づいた。


「魔力がなかった頃に逆戻りだ」


次の瞬間、リュクサの手には水晶が乗っていた。

物理の法則を無視し、物体を魔力で転送させたのである。

その光景を見た二人は、何も言えずに硬直していた。



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