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デスルーラーII ソウルメイト  作者: kiriko


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11/13

訪問者

海沿いに展開する住宅街。

海岸線に沿ってたくさんの家が並び、早朝の空の下で一日を始めようとしている。

ある者は洗濯物を干し、ある者は庭の手入れに余念がなく、ある者はテラスで海を見ながら、コーヒータイムを満喫している。

そんな住宅街の、一番海岸線に近い場所に、シノブとマリの小さな住居があった。

決して大きくはないが、二人で住むなら十分な広さだなと、リュクサは観察した。

そして、静かに目を閉じる。


「見える…」


隣に立っていたノエルが、リュクサの肩をそっと抱き寄せると、リュクサもこちらに体重を預けてきた。


「あの家の中に、水晶がある。間違いない」


もう手遅れであることは承知している。

だが、あの水晶だけは、どうしても回収しなければならない。

リュクサは昨夜遅くに骨董屋に電話をかけ、ノクティス家が売った品々の返品を求めている。

不幸中の幸いで、水晶以外に売れたものはなく、返品されたらリュクサが魔力抜きをするつもりだ。


「ノエル、父上も最悪のデスルーラーだったが、俺も同じだ」

「リュクサ…」

「マリさんは、恐らく今、幸せの絶頂にいるだろう。そんな彼女を、俺は…」


奈落の底に突き落そうとしているのだから、悩み苦しむのも無理はない。


「あれでは、もう医師は治療できない…病気そのものがなかったことにされているんだ、医師の出番などあるはずがない」

「それほどに、回復しているのですか?」

「彼女の魂からは、病気の情報そのものが消されてしまっているんだ」


今、マリの魂には、「彼女はずっと健康体でした」という偽りの情報が書き込まれている。

これを偽りだと見破らなければ、その代のデスルーラーは「能無し」と呼ばれ続けることになる。


ノエルはリュクサの肩を抱く腕に、力を込めた。


「何であろうと、あなたの正義を貫いてください。それで私があなたを嫌うことはありません」

「でも、俺は…できることなら、見逃してやりたい」

「リュクサ…」

「わかってるんだ…見逃してはいけないと。でも…」


そう言って、リュクサは一呼吸置き、言葉を紡ぐ。


「人の幸せを壊すのが、本当に正しいのかがわからない」

「コウサカさんとマリさんが、正しい世界の中で正しく生きているのであれば、あなたの力の行使は誤りです。しかし、現実は逆なのです」


どういうつもりなのか、シノブは水晶を手元に置き続ける道を選んだ。

だが、その先に何が待っているのかを、きっと知らない。

幸せの代償を不幸で支払えという、残酷な世界など、知る由もないだろう。

とにかく、彼の判断は間違っている。


「水晶を手に入れ、魔力が込められていたから、それを使って恋人の病気を治した…これは間違った世界ですよ、リュクサ」

「だが、彼のマリさんへの愛は本物だ…」


リュクサはここに来る前に、シノブとマリの魂の情報を読んできた。

本来踏み込んではいけない、ソウルヒーラーの分野に足を踏み入れたのだ。

深夜から明け方にかけて読んでいたので、寝不足を感じてもいる。

ノエルの手を借りて歩くのが、精一杯だ。


「そうですね…例えば」


ノエルが視線を宙にさまよわせながら、言葉を選びつつ口を開く。


「では、私がマリさんの治療をする、と言ったら、あなたはどうします?」

「全力で止める。魔力を使ってでも、阻止する」

「あなたの悩みは、それと同じことなのです。間違っていたら、正す。そうして人は正しく生きていくのでしょうね」


その言葉に、リュクサは苦笑した。

ノエルの言う通り、人は正しく生きてこそ、正しい世界に身を置ける。

正しくあることに対し、どれほどの代償を払うことになっても、誤っていたら道を正す必要がある。


「行こう、ノエル。腹は決まった」




玄関からインターホンの音が聞こえた時、シノブとマリはダイニングで将来の夢について話していた。

マリの夢はシノブの妻として彼を支えること、シノブの夢はソウルヒーラーとしてもっと有名になり、成功すること。


「あれ、お客さん?まだ六時なのに、随分と早いね?」


マリはエプロンを外しながら、向かい側でコーヒーを飲むシノブに話しかける。


「俺が出て、追い払ってやろうか?」

「やだ、そんな物騒なこと言わないでよ、シノブ。私が出て来るわ」


廊下を小走りで走りながら、「はーい」と大声で応じる。

そして玄関を開けた先には、スーツに身を包んだ二人の男性が立っていた。






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