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唐突に、意識の中に割って入って来た推しの声。
アクスルは、呆然と彼女を見つめた。
いつも心の支えにしているその存在が、自分を見て、自分に話しかけている。その事実だけで、黄色い悲鳴というやつは、容易に口から出てしまうのである。
だが、幸い(?)彼は現在声を失っていた。ゆえにその気持ちが駄々洩れの悲鳴が、誰かに聞かれることはなかった。
アクスルは、まるで幻でも見ているかのような顔でエルフリーデを凝視。
本日の彼女は、前日の失敗が考慮されたのか、シックなグレーの上着に、同色の足首まであるスカート姿。
スタンドカラーの襟元には、瞳と同じ空色のスカーフ。結び目を少し横にしてあしらったそれは、彼女の凛々しさをよく引き立てていた。長い脚には、黒い編み上げブーツ。
その姿を上から下まで三度見でやっと認識したアクスルは戦慄。
この、普段はスカートをはかない彼女のいつもとは違う全身の曲線だけでも、アクスルを魅了するには十分だった。
ただ、これらはもちろんエルフリーデが選んで着て来たわけではない。すべて、騎士団に務めるご婦人たちのご尽力によって作り上げられたコーディネートである。
本人としては他力頼みが情けなくもある装いではあったが……華美すぎない服装は、彼女にとてもよく似合っていた。
このレアな姿に、アクスルは一瞬にして虜に。
(っ、エッ、エッ……⁉ エルッ……⁉)
語彙力は即座に失われた。
まずはときめきに心臓を貫かれ、身動きが封じられる。手からは、あんなにしっかり握られていたペンがポロリと落ちた。
アクスルは絶句し陶酔。心の中ではその姿を大いに称賛し、この奇跡を天に感謝した。
できれば永遠にその姿を目に焼き付けておきたいが、眩しすぎてとても彼女を直視していられなかった。もどかしい状況に胸が切なく張り裂けそうで。
……が。
そんな彼女の瞳が、自分の机の上を「おや、まあ……」と、眺めているのを見て、彼はハッとした。
自分が何を書いていたのかを思い出した顔面からは、一気に血の気が引く。
そこには彼が考え抜いた、自分と彼女の縁談回避作戦が。
(っ⁉)
アクスルは、慌てて作戦書のうえに覆いかぶさり、動揺も露わな顔をエルフリーデに向ける。そこにあったのは──苦笑。
「アクスル卿……何もわざわざ他に恋人を作ってくださらなくてもいいのですよ? そんなにわたしがお嫌なら、おそばに行くのは最低限にいたします。でも、王太子殿下のためにも、あなたが死を回避するためにも、呪いを解くご協力はお願いいたします」
呪いさえ解ければ、いつだって離縁して差し上げますからね、と……。まるで、駄々をこねる子供を諭すように言われたアクスルは、驚愕に驚愕を重ねてあらんかぎり目を見開いた。
お読みいただきありがとうございます。
アクスルの迷走はまだまだこれからですねぇ…w
頑張って更新していこうと思いますので、作品お楽しみいただけておりましたらブクマや評価等で応援してくださると嬉しいです!(*^^*)人




