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6-3


(どうしてこんなことに……どうしたらいいんだ……⁉)


 アクスルはつくづく途方に暮れた。

 この男はなかなか偏屈な性格で、こだわりも相当に強い。それゆえに、自分が聖域とまで思いつめる娘の夫になることが、どうしても許せない。

 もちろん彼女のことは、誰よりも愛しているが、愛しているがゆえに、彼女のそばにいったとき、自分がどんなざまになるのかがよく分かっていた。

 尊い彼女の目に、無様な自分をさらすことが許せないのである。


 さらに、彼女をひそかに推す者たちの、目下の関心ごとは、やはり年頃である彼女がどんな男と婚姻するか。

 ただ、エルフリーデ自身が、恋愛や婚姻にあまり興味がないため、彼女はすでに令嬢としては結婚適齢期にはいって久しいのに、のんびり構えて一向にその気配がない。これには《黒女神崇拝会》の者たちは非常に気をもんでいる。※お節介

 ただ、相手は誰でもいいわけではないのである。

 その男は完璧な男でなければならないし、彼女をこよなく愛する男でなければならない。

 理想は、彼女の父マリウス・バルヒェットのような、清廉で武にも長け、人望もある偉大な人物。

 彼女を慕う者たちは、もしくだらない男が彼女をたぶらかそうものなら、徒党を組んでその男をたたきのめしにいこうと口々に言っていて。アクスルも、もちろんそのつもりであった。

 たとえそれで彼女に恨まれようとも、彼女が真に立派な英雄を夫にすることができるのなら、それで本望と……思って、いた、のに……。

 それがまさかの自分。


(……っ馬鹿げている!)


 アクスルは、血の気引いた顔で絶望。

 彼は、自分が『王太子の冷血犬』とか、『血も涙もない冷徹補佐官』だとか言われているのを知っている。

 彼自身は懸命に王太子を支えているだけだが、悪名高い自分が、彼女の夫としてふさわしいとは、到底思えなかった。


(そもそもあの女神を、わたしの忌まわしい呪いを解く道具として扱うなど……)


 そんなことはありえない不敬。彼女には、できれば麗しいものにだけ囲まれていてほしい。(※本人は汗くさい騎士団で、血塗れで生活しているが……)


 アクスルの目には怒りの炎。

 もちろん彼は呪いで死にたいわけではない。だが、これだけはどうしても譲れなかった。

 そもそもアクスルは、彼女をどんなに慕っていても、妻にしたいなどとは恐れ多くて考えもしなかった。

 それはあくまで別の世界線。

 王太子のために地を這うようにして生きる彼の婚姻と、輝かしい女神の婚姻が交わる訳がない。……というのが、いささか盲目的な彼らの主張。

 彼女はあくまでも憧れ。凛々しく麗しく槍を振るっている姿を遠くから拝ませてもらえていれば。健やかに生きている姿を見せていてくれさえすれば、それだけでもう満足なのである。

 それなのに……。


(っおのれ女神め……! 神託などとよけいなことを……!)


 まことに不敬ながら……恨めしいにもほどがあった。しかし。


(王妃陛下と王太子殿下はわたしのために動いてくださった……それは本当にありがたい。……が、だからこそ回避が難しいな……)


 どうしたらいいんだと困り果てたアクスルは頭を抱える。

 このままでは、本当に、愛しい彼女と結婚しなくてはならなくなる。……なんだか支離滅裂な思考だが、この男は本気である。

 偏屈なアクスルは、本当にそれだけは絶対に出来ないと思いつめていた。


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