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Echo 23 『 青い眼 』


https://open.spotify.com/playlist/6bFZdpvxKZC0kdREsooTmc?si=a1feec7479d64356


対応番号 : 37 / 38 / 39




 ——— 一方その頃『バベルの塔』 入り口付近




「はぁ…こんなに衛兵が多いなら、もう少し人を寄こしてくれてもいいのに」

 新山(あらやま) 詩七(ゆきな)が、(つめ)たい大剣の()に身を(あず)けながら愚痴(ぐち)を吐く。風ではためくウィンプルを押さえるようにして、衛兵の動向を監視している。


「まぁみんな(いそが)しいでしょうし、あまり期待できないでしょうけど…」

 妹の聖十(みと)はそう言うと、手に()めた革グローブの(ひも)を、歯でギリリと引き(しぼ)って硬く巻き付けた。


「やるんだな…今ここで」

「えぇ…私たちで、この(みにく)い争いを終わらせましょう」







 俺たちは『バベルの塔』が見える西宮(にしのみや)まで辿(たど)り着いた。

「そろそろ着くぞ」


「『クラスター爆弾』で検問所2箇所も爆破するなんて…」


「はっ、僕はロックな道に生きているんだ。あれくらいじゃ僕を止められないよ」

 車は立ち入り禁止の看板(かんばん)を跳ね飛ばし、広大な『バベルの塔』の敷地内へと(すべ)り込んでいく。


「侵入の作戦はどうする?」


「既に協力者が到着しているはずだ。彼らが先に動いていれば…」

 車窓から見える光景は異様だった。かつて狂信者たちがひしめき合っていたはずの住居群は、不気味なほどひっそりと静まり返り、(つめ)たい風が通り抜けるだけの、もぬけの(から)と化していた。


「ここ一帯、町全てが信者の街だなんて…」


「こいつらは閉鎖的で、信者にならない限り、この町に住めないように徹底管理されている。それにやつらは『ゲマトレイル(Gematrail)』の操り人形で、自由意志なんかない」


「それってつまり…」


「あぁ、儀式のための生贄(いけにえ)になったか、戦闘に(じゅん)じたんだろうよ」


 一榎(いちか)の言葉の意図は、正面の広場に広がっている光景を見て、嫌というほど理解できた。

「あぁ、今ようやく来たのか」


「遊び足りないですねぇ…」

 そこには、虹色に(あや)しく輝く大剣を肩に担いだ姿と、ハヤブサを肩に留め巨大な鉄拳 / 鉄甲の武器を構えた2人のシスター姿があった。周囲には、無数の白衣(しろぎぬ)が転がっている。


「『|ゲマトレイヤー《Gematraiyer》』は殲滅(せんめつ)したか?」

 シスター姿はお互いに視線を合わせて首を(かし)げ、人差し指で思案するかのように視線を上にして見せた。


「塔の中に何人いるのかは分からないけど、ここに群がっていたやつらはこれで全員よ」

「ざっと3万6千人近くかしら。少し皮膚が()りむけた程度で済んだわ」

 無双の力を誇る彼女たちが味方にいるのは、これ以上なく心強く感じられた。


「君たちは?」


「あぁ、自己紹介が遅れてすまない。走りながら話すとしよう」

 俺たち一行は、ついに『バベルの塔』の巨大な鉄門を(くぐ)り、内部へと侵入した。


「私は詩七(ゆきな)、こちらは妹の聖十(みと)だ」

「よろしくお願いしますね?」


一榎(いちか)から聞いたんだが、新原(ヴァルハラ)高等学校の生徒会所属なのか?」


「そうね、今までは敵対してたかもしれないけど、事態が事態だ。自分たちのためだったとはいえ、お詫び申し上げたい」

 詩七(ゆきな)の白黒をはっきりつける言い方に少し驚いたが、甘奈(あまな)のことを思い出し、もどかしく(もつ)れた感情をグッとしまい込む。


「…とにかくやれることをやらなくちゃ。つまらないことで争ってる場合じゃないよな」


「もちろん、その分汚名返上する気持ちで、しっかり努めさせていただきます」

 詩七と聖十との引き締まった挨拶(あいさつ)()わし、俺は改めて『バベルの塔』の構造を(あお)ぎ見た。


 天へと届かんとする塔の内部は、外観の荘厳(そうげん)さとは裏腹に、かつては(にぎ)わっていたであろう場所が完全に閑散(かんさん)としていた。焼かれた煉瓦(れんが)の壁面は(すす)で黒ずみ、松脂(まつやに)を混ぜた瀝青(れきせい)のねっとりとした特有の匂いが、鼻の奥を不快に刺す。上層から響いてくる『|ゲマトレイヤー《Gematraiyer》』たちの重低音の詠唱が、冷たい石壁に幾重(いくえ)にも反響し、鼓膜(こまく)を不気味に揺さぶっていた。


 塔の内部は一本の空洞ではなく、巨大な階が何層も積み重なった複雑な迷宮に近い。階ごとに役割が異なり、下層では穀物や水瓶が山のように積まれ、中層には彼らが粘土板へ歴史を刻みつける、(ほこり)っぽい部屋が並び、さらに上層へ進むにつれて、チクチクと肌を刺すような香炉(こうろ)の煙と祈りの声が濃くなっていく。


 壁際には油皿(あぶらざら)の炎が不気味に揺れている。しかし外光はほとんど届かず、通路の先は常に薄暗い。高層へ向かう螺旋(らせん)階段では、吹き抜けから吹き上げる強烈な突風が衣服を激しくなびかせ、(はる)か下方にはミニチュアのような街が広がり、見上げれば、終わりの見えない石段が暗闇へと吸い込まれていた。

 上階へ進むほどに空気が薄くなり、息を吸い込むたびに肺が冷たく(すぼ)んでいく。


 神へ近づいているのだと、そう盲信する者もいたのだろう。

 だが同時に、階段を登っていくにつれて、俺たちは肌で理解し始めていた。


 この塔は、人類の純粋な祈りによって(きず)かれているのではない。

 生々しい恐怖と、狂気的な執念(しゅうねん)によって、無理やり積み上げられているのだと。塔そのものが、人類の意思の亀裂(きれつ)(かか)え込みながら、ギチギチと(きし)んだ音を立てて悲鳴を上げているようだった。




 最上階に辿り着くと、黄金の装飾が揺れる松明(たいまつ)の火に照らされ、空に最も近いその開けた場所で、天へ手を伸ばし狂振(きょうしん)していた無数の『|ゲマトレイヤー《Gematraiyer》』たちが(れい)のように霧散(むさん)する。そして、その中央奥──ぼんやりと緑色の溶液が怪しく光るカプセルの中に、巨大な翼で自身の身体を小さく抱え込むようにして眠る、甘奈(あまな)の姿があった。


甘奈(あまな)!!!」

 思考を放棄し、すかさず彼女の元へと走り出した。


「……!? 危ないっ!!!」

 ──ドガァァァァアアアアンンンンッッッッッ!!!


 咄嗟(とっさ)に俺の身体を詩七(ゆきな)が突き飛ばした。直後、(すさ)まじい衝撃(しょうげき)と共に天井から巨大な質量が落下する。激しく舞い上がった土埃(つちぼこり)が口の中に一気に流れ込み、ザラザラとした不快な感触が舌の上を満たした。

「……オエッ、ゲホッ、ゲホッゲホッ、一体何が……!」


 詩七(ゆきな)はその落下物の正体を見るや否や、俺の襟元(えりもと)(つか)んで後方の一榎(いちか)たちの元へと力任せに投げ飛ばした。


 ──ガキィィーーーーーン!!


 詩七(ゆきな)が展開した大剣が巨大なメイスへと変形し、敵の凶悪な一撃をバックラーで激しく火花を散らしながら受け流す。


 床へ叩きつけられた背中のズキズキとした鈍痛(どんつう)(こら)えながら見上げた時、かつて神社で見たあの絶望が脳裏をよぎった。蛇のような下半身とは違い、そこにいたのは、おぞましい数多(あまた)の毛に(おお)われた蜘蛛(くも)(あし)を持つ怪物だった。


「はぁ…まさかあなたと戦うことになるなんて…」

 聖十(みと)は先ほどまでの清楚(せいそ)な顔から一変し、狂気に満ちた戦闘狂の笑みを浮かべる。鉄拳(てっけん)の関節をバキバキと鳴らしながら、蜘蛛女(くもおんな)に向かって猛烈(もうれつ)拳撃(けんげき)炸裂(さくれつ)させた。


「こいつは放っておくと、糸を吐き出してこちらの動きを(うば)う! 叩き(つぶ)せ!」


「言われなくても分かってるよ……『エニグマ(Enigma) ブースト(Boost) - ヒート(Heat)』!!!」

 一榎(いちか)の構えるリボルバー拳銃(けんじゅう)RSh-12から、鼓膜(こまく)を破壊せんばかりの爆音と共にガトリングの(ごと)弾幕(だんまく)が撃ち出された。蜘蛛(くも)の卵が次々と破裂(はれつ)し、生臭(なまぐさ)い緑色の粘着液(ねんちゃくえき)が周囲の床へベタベタと飛び散る。


「『ロード(Lord) トリニティ(Trinity)』」

 力が()きあがり、()ねのける力も倍増した。さらに亜実(つぐみ)の回復でさらに打撃(だげき)が加わっていく。


「『|スーパーストーム《Super Storm》』!!!」

 来弥(くるみ)の巻き起こした暴風が一榎(いちか)の弾丸と混ざり合い、肌を焼き焦がす炎獄(えんごく)(あらし)となって蜘蛛女(くもおんな)(おそ)い掛かった。




 当たるはずだった攻撃は幾度(いくど)も、いとも容易(たやす)くすり抜けていく。




 どれだけ苛烈(かれつ)な攻撃を叩き込んでも、怪物の身体には傷一つ付かない。

「なんだかおかしいぞ…」


 一同の肌に、奇妙な違和感が()い回り始める。手応(てごた)えはあるはずなのに、一向に手詰(てづ)まりにならない不気味さが蔓延(まんえん)した。


「くっ、これじゃあジリ貧だな…」


 その姿を後ろからじっと見つめていた亜実(つぐみ)が、冷や汗を(ぬぐ)いながら(つぶや)いた。

「……あの怪物に勝つには、あの能力をどうにかしなければなりませんね」


「どういうことだ?」


「あれは私たちのマトリックスに干渉する能力があります」


「つまりどれだけ攻撃しても、()けられてノーダメージか…そいつは厄介(やっかい)だな」


「俺に考えがある!!固有結界(こゆうけっかい)で時間を(かせ)いでくれないか?あとは俺が何とかする!!」

 決死の眼差しに、一同は互いに(うなず)き合った。


「私がやってみます!!」

 希果(ののか)が前に進み出ると、蜘蛛女(くもおんな)()けた口が不気味に開く。


「小娘ごときに、何が出来る?」

 一瞬その威圧感に身体を強張(こわば)らせたが、気力を振り絞り希果(ののか)は叫んだ。


「『天界創造』!!!」

 ──ブンッ! と空間が変質し、周囲の景色が固有結界(こゆうけっかい)によって完全に遮断(しゃだん)された。


「これで私を逃がすことはできないと、考えているとでも?」


「それはどうでしょう?」

 聖十(みと)は不敵な笑いを浮かべる。


「あなたはそうやっていつも現実逃避を続けてきたのですから、お見通しなのですよ」




「時間(かせ)ぎのつもりか?ならば、私から行かせてもらう!!」

 蜘蛛女(くもおんな)が目に見えぬ速さで突っ込んできた瞬間、聖十(みと)の口角が()ね上がった。






「ビンゴ」

「…!?」


 (わな)を察知して急ブレーキをかけようとしたが、すでにその巨体は慣性を殺しきれなかった。聖十(みと)の放ったハヤブサが(するど)(つめ)蜘蛛女(くもおんな)の目を(かす)め、その視界を(うば)う。


「今だ!!かかれ!!」

 詩七(ゆきな)の『マジックソード』が変形した巨大な弓に俺が乗り、風切り音と共に弾丸となって射出された。


「その手は効かんぞ!!!」

 無数の蜘蛛(くも)の子供をばらまき、粘着質(ねんちゃくしつ)の糸でがんじがらめにしようとする。


「『自然要塞』!!!」

「『スーパーストーム』!!」


 杏佳(きょうか)来弥(くるみ)の放った異能が空中で交差し、迫る糸の群れを嵐で吹き飛ばして進路を守ってくれた。


小癪(こしゃく)なっ!!!」

 蜘蛛女(くもおんな)はたまらず空間の闇の中へと逃げ込もうとするが、希果(ののか)の固有結界がそれを(はば)み、怪物の動きを完全に(しば)り付ける。


「くそっ、このためにッッッッッ!!」


「『ロード(Lord) トリニティ(Trinity)』!!」

 緑色の蛍光色が身体にまとわりつき、手足にエナジーが(みなぎ)ってくる。




 たった一度きり、俺は何度でも博打(ばくち)に勝ってきたんだ。みんなのおかげで、俺はこうやってここに立てている。何が無力だ。何が役立たずだ。

 何もないところから、ここまで(のぼ)りつめたんだ。




 俺だって、大切な誰かを救えるのなら、どんな犠牲(ぎせい)だって(いと)わない。だってそうだろ。今までもそうだったじゃないか。あの時、何もなかった俺に居場所を与えてくれた甘奈(あまな)が、目の前にいるんだ。




 仲間だっている。こんなに心強かったことは無い。そのきっかけは、甘奈(あまな)、君が俺に全てをくれたんだ。だから……………






「こんなところで、止まっていられるかぁぁあああああああああああ!!!!!」






 俺はこの瞬間(とき)を待っていた。




「いっけぇぇえええええええ!!!!!!!!」

 (ちゅう)を舞って蜘蛛女(くもおんな)のおぞましく(つめ)たい肉体をその両手で鷲掴(わしづか)みにし、全身の血を()き立たせて(とな)えた。




「『『ロード(Lord)』『タオ(TAO)インバーテッド(Inverted)』!!!」




 俺の触れた手のひらから、怪物の力の源が、ドクドクと生々しい感触を(ともな)って(うば)()っていく。



「ぎ、きさまっぁあっぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!」

 怪物は断末魔(だんまつま)の叫びを上げ、まるで(かわ)いた灰のようにサラサラと風に舞い、その場には、ただの力のない女性の身体だけが(ひざ)から(くず)れ落ち転がった。






「…勝った、勝ったぞみんな!!!」

 一同が勝利の安堵(あんど)に包まれる中、俺は脇目(わきめ)も振らずに甘奈(あまな)のカプセルの(そば)へと()け寄った。


甘奈(あまな)!!!すぐに助け出してやるからな!待ってろ!」

 俺は(こぶし)の皮がめくれるのも構わず、溶液の満ちたカプセルを必死に(なぐ)りつけたが、鋼鉄(こうてつ)以上の硬度に(はじ)かれるだけだった。


「そうだ!おい、詩七(ゆきな)!!力を貸してくれ!!!」

 そう言って、俺は後ろを振り返った。

 ──だが、何かがおかしい。視界に入る人数が、一人足りない気がした。






「お、おいどうした?はっ、亜実(つぐみ)は!?亜実(つぐみ)はどこにいったんだ!?」


亜実(つぐみ)?そんな人いたっけ?」

 杏佳(きょうか)が不思議そうに首を(かし)げる。




「おい…一体どうなってんだよ…大西(おおにし)ぃ!!お前、妹がいたんじゃなかったのか!?」


 来弥(くるみ)は、冷たい無表情のまま俺を見つめた。

「…何を言ってるんだい?さっきからずっと」




 頭の芯がスーッと()えていく。

 今、自分が立っているこの空間だけが、世界から切り離されて(ゆが)んでいるような、得体(えたい)の知れない悪寒(おかん)()い上がってきた。


 全員が、光の消えた(うつ)ろな目で俺を見つめている。


「おい、なんで……そんな目で、俺を見ているんだ……」

 背後から、首筋の産毛(うぶげ)がすべて逆立(さかだ)つような、静寂(せいじゃく)が暗くのしかかる。俺は、ガタガタと(ふる)える首を恐る恐る振り返った。






 そこには、首から下が無い亜実(つぐみ)無造作(むぞうさ)(つか)んだ『|ゲマトレイヤー《Gematraiyer》』が立っていた。






「なっ……なんてこと、してくれてんだぁぁあああ!!!」






 (くる)ったように(こぶし)を突き出したが、その手応えは、まるで暖簾(のれん)を叩くように(くう)を切った。



 ドスン、という(にぶ)い音が、静まり返った塔内に(むな)しく木霊(こだま)するだけ。

 見上げれば、真っ赤に変色した空から、あの巨大な『無限の眼(あおいめ)』が一斉(いっせい)に俺だけを凝視(ぎょうし)していた。



「おい…甘奈(あまな)!!!!!」

 恐怖と絶望に全身をガクガクと震わせながら、カプセルを壊そうと、

 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、

 拳から、額から、指の先から、爪の間から、ボロボロと生温かい血が噴き出すのも構わず、肉が裂ける痛みを置き去りにして、カプセルを叩き続けた。


 視界が涙と血で赤くぼやける。喉の粘膜が千切れ、鉄の味が口内に広がるまで、彼女の名前を叫び続けた。




 カプセルの中で、ゆっくりと、甘奈(あまな)の虚ろな(ひとみ)がこちらを向いた。

「甘奈……俺を置いて()くな……頼むから、頼むから……っ!」


 懇願したが、時間が停止したかのようなこの世界では、その祈りは届くはずも無かった。だが、カプセルの向こう側から、あの愛おしい、懐かしい声が、(かす)かな振動となって鼓膜に届いた。それが、彼女の最期の言葉だった。







「…生きて」


 次の瞬間、『バベルの塔』全体が、網膜を完全に焼き潰すほどの凄まじい純白の閃光に包まれた。あまりの光量に視界を完全に奪われ、ただ溢れ出る涙をそのままに、冷たいカプセルに全力でしがみつくことしかできなかった。






 ただ祈った。どうか、誰でもいいから助けてくれと。











 しかし、神は何も答えなかった。

 やがて視界から光が引き、(すさ)まじい光の柱は消え去った。


「……いやぁあああああ!!!!!!!!!!!!」

 静寂(せいじゃく)を引き裂き、鼓膜を突き破らんばかりの来弥(くるみ)の絶叫が塔内に響き渡る。


「これは……由記(ゆうき)、何があった!?」

 空っぽになったカプセルを見つめ、詩七(ゆきな)は乾いた唇を噛み締めながら、すべてを察した。











 もう"彼女"はどこにもいないのだと。


 そこにいたあの怪物の少女も、ただの人形でしかなかった。

 世界が壊れる音がした。






『精霊』デバイスが一斉に鳴り響いたその直後。

 前触れもなく、脳を揺らすような激しい垂直の衝撃が(おそ)った。


Synchronicity

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