第5話 背中合わせ
「お前は……医務室のゲロ女隊士……なんでここに……?」
「ゲロ女隊士ですって???なんだとこのヤロォォォォ!!!!!」
少女は零徒の一撃を受け止め、
零徒の脇の下に入り込む。
そしてすかさずあばらを切り裂いた。
「グォォォォ!!!」
零徒は堪らずその場に崩れ、咆哮をあげる。
「あんたを助けに来たんじゃないわよ。」
そう言ってる間にも、攻撃を止めることなく、零徒はどんどん押されている。
さっきまでの勢いが嘘だったかのようだ。
「私は……!!
あんたから主人公の座取り戻しにきたんじゃーーーーーー!!!!!!」
急にこっちに向かって刀を振りかぶって来るぞこのアマ!!
「ひぃい!!」
と思ったら背後に零徒がいたらしく、その零徒を斬ったようだ。
「あとついでに、弧葉手先生が魂込めて生かした命、護りに来た。」
なんだなんだこのアマ……
「どう?今ので目が覚めたんじゃない?
残業中にこんな所でうたた寝してたらお偉い方々から大目玉食らうわよ。
最近ただでさえ残業短くしろーとかってうるさいんだから。」
……どうかしてるよこの人。
「だから……、隊長はささっと私が片付けちゃうわね」
そう言って女隊士は振り向きもせず隊長の元へ歩いていく。
いや、どうかしてたのは俺の方だ。
「いや。目ぇ覚めた。
隊長は……俺が斬る。」
女隊士の前に駆け出し、
零徒に静かに刀を振りかぶる。
一瞬、
零徒が首を下げたように見えた。
ーーまるで、その首を差し出すかのように。
指先が震える。
(……これで、いいんだよな)
わずかに息を吸い、
しっかりとその姿を目に焼きつける。
「今まで、お疲れ様でした。
ゆっくり休んでください、隊長……」
「ご介錯、奉る」
穏やかに、けれど力強く、
ーー刀を振り落とした。
零徒が光となって溶けていく。
あんな死闘を繰り広げた割には、
ーーあまりにも、静かだった。
「これで、終わりか……」
その場にどさッと座り込む。
「これで……俺は本当に、1人になったのか……」
返事はない。
風が耳を撫でる音だけがやけに大きく聞こえた。
その座り込んだ少年の後ろ姿を少女は黙って見ていた。
ーー仲間を全て失った。その後ろ姿。
少女は少年のすぐ後ろに座る。
そしてーーー
背中に全体重をかけて、もたれかかる。
「いたっ!イテテテテっ痛てーよ!!何すんだこのアマっ!!!!」
「よく頑張ったわ。あんたは1人きりなんかじゃない。」
途端に少年の目から涙が溢れ出す。
「こうしてまだ、あたしがあんたに背中を預けてる間は、あんたの背中を護っとくから、今のうちにたくさん泣いておけばいい。」
東から太陽が昇り始めて、
辺りが明るくなり始める。
朝と夜の境目が、
静かにこの場所を塗り替えていく。
背中から聞こえてくるのはすすり泣く声。
背中越しに、重みと温もりだけが伝わってくる。
強い風が吹き、
少年を覆っていた包帯が飛ばされていく。
少女は少年の真正面に回り、
ここでやっと、お互いの顔を改めて見た。
額には小さな銀色のツノ。
少年の涙が、朝日に照らされて輝いている。
その翠色の瞳は、もうまっすぐ揺るがない。
「へえ珍しい、龍族か。……あんた結構イケメンなのね。」
「……そりゃどうも。今更だが、おまえさんの名前聞いてなかったな。
俺は、八木茨。」
その瞳は雲ひとつない青空の色。
青みがかった髪が風でなびいて輝いている。
「あたしは、
虚楽制圧部第八課ーー
てっぺん組隊長、天道 空。」
茨がハッとして空の顔を見つめる。
「第……八課……?……」
「茨、そろそろ退勤しようか?お天道様も顔出したとこだし。肩貸すから。
ああ、あんまり道中下見ないでね。
ここまで来る途中で路上ゲロライブしちゃったから。」
「じゃあしばらく気失っとくか……。」
「え?!ちょっと、女一人で男子背負うのはかなりきついんだけど!?……ちょっと聞いてる!?ねえ!!茨!!!頼むから起きてっ!!」
……はあ、まったく、もう一仕事するとしますか……
ーー主人公としての初仕事は、
背中を預けた仲間を、
その背中に背負うことだった。
とりあえずここまで読んでくれた方!
ありがとうございます。
こちら初めて投稿する作品になります!
それどころか小説書くのも初めてなもので……
ぼちぼち投稿していくので、これからも空たちを覗きに行ってくれると喜びます!私が!




