第20話みるきーずでい
なんてかわいらしいタイトル
「あのー、一勝君。呼んだのは君だけなんだが……」
「なに、悩みは色んな人に吐いた方がスッキリしますでしょう!!」
「え?一勝先生、部長が奢ってくれるから着いてこモゴモゴ」
余計なことを言う政晴の口を塞ぐのは、竜義。
「なんでもないです、部長。我々で良ければ悩みならいつでも。」
夜遅く。被害対応に追われた忙しい日ではあったが、部長は一勝と、それについてきた金魚のフン達と飲んでいた。
「どーしたんです?忙しすぎてヤケ酒ですか?」
「いや違う。その……娘のことについて相談したくてな。君の近くにも居るだろ、デリケートなお年頃の女の子が。」
「デリケートな、?女の子?」
「多分あんたの妹のことだよ、兄貴。」
ピンと来ない隊長にフォローを入れる副隊長。
「あっ!あ〜〜はいはい、空のことですか。」
「空ちゃんがデリケートかぁ……部長の娘って照ちゃんのことでしょう?なんかあったんですか?」
空の事をデリケート、だとか思ったことが無い男たちは、焦る。この中に、そんな悩みにアドバイス出来る者は居ないぞと。
「その……娘が家に帰ってきてくれなくて。友達の家に泊まったり、八課支部に泊まったり、っていうのは以前からあったんだが、一応その事前連絡はしてくれていた。だがここ数日は既読無視、事前連絡一切無しで、帰ってきていなくて。これは初めてのことで……。」
「なにか気に障る事したのでしょう。心当たりは?」
竜義が励ますように酒を注ぐ。
「実は……ある。学業も頑張りつつ、アルバイトも始めて、忙しそうな照を見ていて、父親として何かしてあげることはないかなーと思って、照の部屋を掃除してあげたんだ……。」
「それはギルティですな」
「ギルティですね」
「ギルティですぜ」
「やっぱり!?そこだったか……。」
今日の部長はかなりお疲れなのか、だいぶ酒のペースが早い。
「君たちは、空君の部屋入るのは許されざる行為だったのか?」
部長は一課と空の関係性を知っている一人。
「いや入ってたな。俺普通に、空の部屋でふたりで漫画読んでたな。寝っ転がって。」
「漫画貸して貰う時とか、貸してって言うと空ちゃん、〈良いよ、あたしの部屋にあるから勝手に取って〉って。」
「しかもこっちが気ぃ使って、勝手に入るのは〜って渋ると、面倒くさいから自分で取れと言ってきやがる。何も隠すもんなどねぇと。その分あいつも俺らの部屋にズカズカ入ってきたが。」
部長の顔が赤くなってきた。
「えーなんでそんなに仲良いんだよー。秘訣とかあるのー?」
「共通の趣味ですかね?空は結構好きなジャンル幅広いんで。少年漫画のスケベなやつから少女漫画まで。まあ、照ちゃんはどうか知りませんけど。」
「そーそー平気な顔して少女漫画勧めてくる。濡れ場多めのも。ありゃ衝撃的だった。部長も読んでみたらどうです?少女漫画。」
一勝と竜義が部長に詰め寄る。部長の扱い方を心得てきた。今日の部長はかわいい。
「うーん少女漫画はともかく、空君にそーゆー少年漫画勧めるのは教育に良くなかったんじゃない?」
「誰も勧めてなんかいませんぜ?俺らが読み散らかしてったスケベな漫画を、いつの間にか空ちゃんが見つけて読んでるんです。そんでその後、あの漫画結構面白かったとか、あのシーンはドスケべだったとか、わざわざ感想言って貰えます。割と小さい頃からずっと。」
政晴が人数分の日本酒を追加で注文した。本人は、これは朝帰りコースだっ!と内心ウキウキしている。若さゆえ。
「うわ、空君がそうなっちゃったの絶対君たちのせいだよ。それはギルティて言わないのー??」
部長、空が嫌がってないからギルティとは言わない。俺たちは無罪だ。と、3人は心の中で自分を許す。
「スケベな漫画といえば、一勝先生、道場のみんなで〈まんがフレンズ〉っていうアプリ入れたでしょ?自分の読んでる漫画、おすすめできる機能あるからって。一勝先生、購入した漫画公開する設定にしてません?やばいですよ、全部知ってます俺ら。」
「え"、それ、空も入ってるよな?」
「もちろんです。この前買ったやつは流石に……俺んとこにLENI来ましたよ。兄さんは妹にコレ見られても大丈夫なやつなのかって。」
「一勝君、心配されてるよ〜。」
一勝はすぐさまアプリを開いて設定を見直す。
「なんで教えてくれなかったの!?」
「わざとだと思ってた。おうおう、すげーなーと思ってた。」
「タツ!ヒドイ!!!」
そろそろ4人出来上がってくる。
「照と空君、何が違うんだろうんなーと思ったけど、根っこから全然違った。」
「ところで、掃除して何捨てたんです?俺が思うに、別に部屋に勝手に入るまでは、まだ執行猶予付くと思うんですよ。掃除する=もの漁るってところがギルティポイントが高ぇ。」
一勝はさらに部長に酒を注ぐ。もう二日酔いは避けられない。後戻りは出来ない。
「掃除って言っても、掃除機かけて、棚にはさがってたお菓子のゴミ捨てただけだよ?物どかしたり、勝手に捨てたりしたら絶対怒られるのは目に見えてるし。」
「へー照ちゃんて、結構テキトーなとこあるんですね。棚にゴミ突っ込んじゃうとか。」
「……それじゃねぇか?わざわざゴミ箱あるのに、棚にゴミ突っ込む理由が見つからねぇ。」
名探偵竜義。
「そんな事ある〜?」
「あるんじゃねぇですか?傍から見りゃゴミだが、本人からすれば一生の宝物みてーなやつ。俺ぁ、お菓子のゴミでも、リスさむの限定パッケージとかだったら洗って大切に取っておきます。」
大名探偵竜義。
「……竜義君はA型なの?俺B型〜」
こちらはもう二日酔いが確定しているダメなお父さん。
チリンチリン……
こんな時間なのに新しい客が入ってくる。
「居た居た。こんな時間まで飲んじゃって、みんな二日酔い覚悟?」
「そ、空!?誰ここの場所教えた野郎は!?」
「はーい。俺で〜す☆」
政晴から部長の居場所を教えて貰った。
「ん〜?あ、空君かぁ。君も座りなさい。今君のお兄さん達から漫画n…」
男3人で部長の口を抑える。
漫画?何を話していたんだこの兄貴達は……。今更あたしに隠すものがあるというのか、漫画で。
「仲間に入りに来たわけじゃないわよ。今日は部長に礼状を持ってきたの。」
紙切れを渡す。
「俺逮捕されちゃうのー?一勝君、罪状読んで〜」
「ごほん、読み上げさせて頂きます!えー、鍵貸出届……?八課支部倉庫鍵4部屋分……鍵渡せってことか。」
「明日の朝には欲しいんで、今日欲しいんですけど、」
だが、この酔っぱらいに歩ける力が残っていると思えない。
「いーよー。俺のデスクの引き出しに入ってるから〜勝手に取ってって〜。君のお兄さんたちが漫画とってくみたいに〜」
部長って、ダメになると照が寝ぼけてふわふわしてるみたいだなぁ。親子だ。
「空は部長の本当の罪状知ってるのか?」
「もちろん。部長、お菓子のゴミ捨てたでしょう?それ、あなたの奥さんが娘さんに買ってあげた最期のお菓子のゴミ。」
それを聞いて、部長は力尽きる。
一兄と政晴はサッと酔いが覚めて、部長の目を覚まさせる。
「部長、あんたギルティどころじゃねぇ!水飲め、水!」
「今からでも遅く……いや手遅れだが、とりあえず謝りましょうぜ!?こんなところで酔いつぶれてたらマズイ。娘に狙撃されるぜあんた!」
決死の介抱が始まる。
「……じゃああたしはこれで。連帯責任として部長、無事に連れて帰るのよ?」
(やれやれ。付き合ってられないわよ。)
だが、そそくさと去ろうとするあたしの肩をガシッと掴み、引き寄せて肩を組んでくる酔っ払いがもう一人。
「あ"ぁ?もう帰んのか?せっかくここまで来たんだ付き合えコノヤロー、たまには盗み聞きじゃなくてだなぁ……!」
「竜兄さん……。」
静かだなーと思ってたら、真打登場。
竜兄さん、トップクラスで酒癖悪いから……
「腕退けろ。セクハラですよー副隊長ー。酒勧めんな、未成年に。盗み聞きなのはコレが始まるからだコノヤロー」
「寂しいこと言うな。勧めてなんかねぇ。酒なんて飲むな。枝豆食うか?きゅうりもある。あと漬け物……おめぇもいつの間にか背ぇ伸びたな…あんなにチビだったのになぁ……そういや聞いてくれ。この前の巡回でな……」
払っても払っても腕を何回も回してくる。話がコロコロ変わる。頭撫でられる。多分、今竜兄さんの中のあたしは7歳。
「一勝先生、大変だ。竜さんのいつもの面倒くせぇのがっ!」
「もータツ、勘弁してくれ……今日は部長で手いっぱいなんだ……」
今一番大変なことになってんのは、あたし。誰かこのセクハラ副隊長を何とかしてくれ。
「赤ん坊の時は風呂も入れて、おしめも替えてやったのに。今じゃ政晴と並ぶ戦闘狂……可愛くねーなぁ……」
キッツ。
「今もかわいいと言えよ、この堕龍が。」
そうして、結局ギルティお父さんと、堕龍を本部まで連行し、鍵をくすねてきて、帰ってきたのは朝日が昇る頃。
正直、おかえりと迎えてくれた茨を抱きしめたくなった。
ウチの茨……本物の龍はこんなにかわいいのに。あの堕龍ときたら……ヘスパリーゼなんか奢るんじゃなかった。
へスパリーゼ奢った空は偉い。




