第17話あーあ、負けちゃった!
最近、あらすじを書き直したんですが、てっぺん組の御三方が文句言ってきます。なぜショーユを出さないのかと……。それはね、ショーユ紹介すると一気にやかましくなるからなんだよ。
「メンツユ大好きタツノオトシゴ!」
一気にカオスになるの。登場に溜めに溜めまくった誠刃隊がでてないから、ショーユ。許してね。
「空!?急になに言ってるんだよ!」
「倒すって……勝負するってこと?そんなの勝て……」
照がその言葉を言い終える前に、口に人差し指を当てて、しーっと黙ってもらう。お願いだから、今は勝てないなんて言わないでちょうだい。
「そうよ?二人があたしに勝ったら、実力を認めて貰えるでしょ?ほら、あたしは化け物だし、丁度いいじゃない。」
その言葉に引っかかったのか、二人は怒った顔をする。役職者に喧嘩売るつもりで言ったんだけど。
「ならその言葉…否定させて貰う為にも、この勝負受けて立とう。」
「私たちだってやりゃ出来るんだから!」
良かった。納得して貰えた。じゃなきゃ始まらないからね。
「もちろんハンデは付けるわ。あたしは守りだけ、攻めはしない。武器は……真剣にしよっか?実践に近いし。」
「「それはダメだ!!!!」」
琴吹部長と一勝隊長が必死に引き止めてきた。
「真剣は絶対にダメだ。さっきの話聞いてたか?」
「どちらも怪我は避けられないだろう!!」
隣で弧葉手先生がうんうんと頷いている。
「じゃあ、あたしは木刀で、ふたりは……誠刃隊が稽古で使ってる刃こぼれした刀で。どうです?あたしはちゃんと避けれますよ、刀も矢も。あたしが怪我した時点で負けでも良いです。そうはさせませんけど。」
「……絶対だぞ。」
「皆様方、それでよろしいですか?」
役職者に、誰か文句あるかと確認する。
「仲間内だから……手を抜いたりしませんか?」
「刃こぼれしてると言っても、怪我したら痛いんで。手なんか抜けません。」
あの2人は強いから。手ぇ抜いたら死んじゃうわよ。
それに、ふたりが勝てないなんて思ってない。あたしは竜兄さんみたいに、隊員に無理強いするほど厳しい隊長じゃないからね。
「八課隊長は……なかなかやりますね。まさか自分自身を使うとは。正直舐めていました。」
琴吹部長と一勝は、3人の準備を見守っている。
「ハハハ、そうでしょう?空も相当ブチ切れてやがる。」
「仲間をバカにされたからですか?」
「それもそうだ。だがそれに加え、回復力ありきの、と言われたのが気に入らなかったんだろう。あいつは、負けないから強いんじゃない。」
どうやら準備が整ったようだ。
「ちゃんと勝てるから、強いんだ。それを見ろと、あいつぁ俺たちに殴りかかってるんですよ。」
「制限時間はどうする?延長してもいいわよ。」
茨と照は緊張しているようで、体が強ばっている。
「え、じゃあ20分にしとく?茨、」
「そうだな。20分で」
午前中までの強気はどこ行ったのよ。バックスキップしながら支部に置いてきたか。
「……正直、あたしはふたりを舐めてるのよ。だから、攻撃しないし、あたしは木刀で、二人は刃こぼれの刀にした。怪我するつもりなんてさらさらないわ。ぜーんぶ受け流すから。」
「照、なんかあいつ腹立つな」
「あんま調子乗ってると刺し間違えっから!わざとね。審判!やっぱり15分で」
「いや、」
茨の瞳に光が戻ってくる。そうそう、バックスキップであんたたちも調子取り戻しに行って来てよ。
「……10分にしよう。長引きたくないだろ、俺達も、空も。照、作戦会議。」
「そうね。…ありがたいわ。」
何やらコソコソチラチラ話し合ってから、こちらに向き直る。……大丈夫そうね!
審判に合図する。
「始め!」
茨が力強く斬りかかってくる。隻腕だけど、一振一振がしっかりと重たい。前に触ったことあるけど、見かけによらずムキムキだから。茨の腕。
ここはあまり長いこと鍔迫り合いに持ち込みたくないところ。
そんな茨の猛攻撃に耐えていると、左側から照の矢が降ってくる。
痛いとこつくなぁ。
矢を弾きながら右足を軸にして躱す。
「空、」
茨が意地のわっるい顔をして名前を呼ぶと、右足目掛けて弾を一発ぶち込んできた。
何してくれてんだ。
間一髪で避けたけれど、左足に重心が乗ってふらつく。そして左足に足を引っ掛けられて、すっ転ぶ。そこに茨が素早く斬り込んでくる。
「茨ぁ、さすがに危ないじゃない??普通に実弾よね???」
「だって使うなって言われてねぇもーん。」
蹴飛ばして体勢を持ち直す。息つく間なく、照が右足を狙って矢を飛ばしてくる。左足でぐっと踏み込みざるを得ない。ズキンと痛みが走る。
(イテテ……)
バランスを崩した先に照の刀がいた。
「っ!」
とっさに受け流すも、思わず痛い方の足に体重が乗ってしまう。
(ええい、気にするもんか!)
思いっきり左足に体重を乗せて茨の次の攻撃を受け止める。うぅ、重い。
次の瞬間、照が左腕目掛けて刀を振り落としてくる。咄嗟に左手を刀から離す。
おっとーーー。
カーン
重さに耐えきれない右手から木刀がすっ飛び、眉間に茨の刃先が突きつけられる。
「……ふふ、参りました。」
時間ギリギリで茨と照の勝利。
はあ、足イテテ。その場に座り込む。
「そらぁ!大丈夫!?ごめんねぇ!痛かったよね!?でも煽った空が悪い。自業自得。」
「すまねぇな、本気で狙ったけど、弾当たらなかった。当たれば良かったのに。」
「誰か〜酷いよー!あたしも結構頑張ったんだけど心配する隊員は居ないのー!!」
茨と照が手を差し出す。
「「ここに居る!」」
差し出されたふたつの手が、すごく眩しく見えるのはきっと、太陽のせい。
あたしもその手を思いっきり握る。
「あーあ、負けちゃった!」
役員連中が駆け寄ってきた。
一兄は妹が心配なようで、隅々まで見てくる。
「空、左足庇ってたみたいだけど怪我でもしてたのか?」
「バックスキップ練習の時の左足の捻挫。それと、そうめん作ってた時の右手の手のひらの火傷。見た目はなんともないけど、厄介なことにちゃんとまだ痛いのよ。」
そこの痛手を突いて、見事勝利を納めたってわけ。
「そうやそうや。空はなーんも見た目問題ないのに、痛いのなんの、薬くれ言うて、痛み止め掻っ攫ってくんや。こんな面倒な患者、ワイは相手しとうない。せやから、茨隊員、照隊員、よろしく頼むで。こいつを医務室に近づけんように。」
弧葉手先生、溜まっていた不満をここで吐き出す。すまぬ、面倒な患者で。
そこに空気を読めない役職者が野次を飛ばしてくる。
「怪我している所を攻めるなんて卑怯じゃないか?」
よくあるご質問。
「あぁ、それなら、あたしが言ったんです。」
練習の時のことーーーー。
《空、もし自分よりも遥かに強い相手と戦わなきゃいけない時のコツってある?》
照からの何気ない質問だった。
《何度でも立ち上がる事と、相手の弱点を利用する事かしら。》
《相手の弱点……弱ってる所をわざと狙うのかい?それって侍としてどうなんだ?》
茨は真面目だから。そうよね
《まあ、卑怯だけど。でも本気で命取りにきてる相手、しかも自分よりも強い相手にそんな綺麗事言ってたら、守るもん守る前に死んじゃうわよ。そんなのダサすぎるでしょ。実践において、そーゆー武士道は自分の方が強い時にしか通用しないわね。》
…………。
「てな感じで、我が隊員たちは、律儀に隊長の教えを遂行したまで。」
「ハハハッ!よく頭の回る隊員達じゃねぇか!!それに、その攻撃によく耐えてたもんだ!特に、茨くんが銃撃ったところからの立て直しは見事だった!中々出来るもんじゃねぇ!」
一勝隊長に褒められると嬉しい。回復力は元々だけれど、「勝つ為の力」は、死に物狂いに努力して手に入れたものだから。
この勝負を見て、役職者たちも少しはてっぺん組の実力を見直してくれたご様子。結局、何も問題無し、ということで解決した。
「今日はもう立ちたくないから、晩御飯あたし手伝わなーい。」
「じゃあ空は抜きで。ショーユと一緒にメンツユしゃぶってな。」
「私達も迷惑かけられたんだから。おあいこでしょ?」
「ひどっ!!」
「うっそぴょーん。大人しくおねんねしてなァ!」
全く……。勘弁してよね。
割と本気で死ぬかと思った。
〜おまけ!!竜義副隊長の巡回の愚痴(供養)〜
副隊長よりコメント
読み飛ばしてくれて構わない。だが、その代わり酒奢れ。
・日程は最低でも2週間前に出せ。1週間前に「来週、お願いします!」てめぇは間に合わせられるのか。
・名前忘れたどっかの部長「こういうのはみんなで早く終わらせるんじゃなくて、みんなで残業して作り上げるものだ!」 俺は帰りてぇ。隊員達に残業しろと言うこちらの身になってみろ。俺が一番帰りてぇ。
・前日チェック後「このパネル明日までに直しといて。本番前にもチェックしたいから〜朝7時集合でお願いね」その時点で21時半。 ……いっちゃん、強めの日本酒を頼む。




