第15話ボコボコ界隈
ポコポコ、ぷくぷく……
ポコポコ、ぷくぷく……
「さっきから照は何見てるッつ?」
照のスマホから、泡が弾ける音を最大限まで可愛くした曲が流れている。
「最近流行りのポコポコ界隈だよ!女の子達が自分の生活を紹介する動画なの。この生活がキラッキラに輝いてて!女子の憧れ、理想を詰め込んだ生活……空も憧れない?ほらこういうの!」
照がスマホを見せてくる。
《24歳OL、今日は仕事終わりのルーティンを紹介するよ♪まずは駅のカフェで一息。新作のフラペチーノを飲んだよ♡お家までの電車内では、私の大好きなアーティストのプレイリストを再生♪お家に着いたらお風呂の準備をするよ☆今日の夕ご飯は、海鮮のカルパッチョを作ってみたよ♪とっても美味しく出来た♡最後に、入浴剤とアロマキャンドルをお供にお風呂♪今日も一日お疲れ様♡おやすみなさい☆》
致死量の♪と♡に殴られた気がする。というか、これは文に起こすべき内容では無かったと思う。音声だからこそ可愛いんだ。
「へ〜これが流行ってるのね〜」
「あれじゃないか、空はポコポコっていうよりかは、ボコボコってところじゃねぇか?」
「失礼ね茨?別にやろうと思えば、今すぐあんたをボコボコにできるのよ?」
最近、茨も心を許してくれたのか容赦ない。だがそれはこちらも同様。
「じゃあ、そのポコポコ界隈風に昨日の出来事紹介してみてくれよ。」
「《限界社会人3年目、会社でトラブったある一日を紹介するよ♪今日は大切な会議だけど、その前に虚楽で一汗☆上司に血生臭いって言われて傷ついちゃったよ♡大切な会議では、先方(天律院)が刀振り回してきたけど、それはそれは丁寧に対応する(斬り殺す)ことで、何とか死を回避☆明日もみんながんばって生きていこーね》
・・・。
確かに、ボコボコ界隈だ」
否定する要素がどこにも無かった。♡や♪をつけても隠せきれてない血生臭さ。おっかしいな……さっきの動画は見てるだけで香水の匂いしてきたのに。
「いやでも照、働いてる女子ってのはポコポコしてなくっても輝いてるもんよ!汗とか皮脂でキラキラと。綺麗じゃない?頑張ってる人はみんな綺麗だわ。」
「空、茨と同レベルで失礼だよ。全女子はそのキラキラと毎日戦ってるんだよ。」
ごめん。心から謝罪する、全宇宙の女子たち。
でもそういうの、憧れないわけじゃないわ。きらきらしてるの……
「あっ、そうだ!明日てっぺん組でお出かけしようよ!ポコポコ界隈したい!たまには隊服脱いでおしゃれして、買い物するのも大切だよ。」
「ショーユも一緒に行きたいッつ!茨もぜひ着いて行きたそうな顔してるッつ!」
「俺そんな顔してn…」
「もちろん!強制だよ。じゃあ決定ってことで。空、明日はめちゃくちゃかわいくしようね!」
照は嵐のように帰って行った。
ちょっと明日が楽しみになった。
翌日ーーーー。
「空、かわいい!気合い入れて仕込んだ甲斐があったよ!」
「えへへん」
照先生の指導により、メイクしたり、髪巻いたりと、いつもとは段違いのかわいさ。自分で言うのもなんだけど。
「茨どう!今日のあたし、いい匂いする女!」
「おー似合ってる、2人ともかわいい」
「茨はいつもと変わらず水も滴る良いイケメンね。」
「だろ?ショーユは首にリボン巻いておこう。勝手に飛んでいっちゃダメだからな?」
ちなみに、このリボンには念の為住所と電話番号が書かれている。
「ショーユもおしゃれうれしいッつ!かわいいッつ!それじゃあレッツらゴーッつ!」
え〜本日やって参りましたのは〜志都呂町が誇る、最大のショッピングセンター「蛇巣雄」
到着後、ショーユをベビーカーに乗せる。勝手に飛んでいかないように。
ベビーカー運転手は茨。茨が俺がやりたいって言ったから。今日は義手を付けているから余裕、との事。
「あはは、茨は一体どこの世界線のパパなの笑」
赤ちゃんみたいなショーユと、ベビーカー押す茨。言葉にできないくらいかわいい。表現することを諦めよう。
「よぉーっし!今日は虚楽とか諸々一旦置いておいて、遊びまくろーう!」
プライベートだが帯刀は義務なので、刀は持ってきている。完全に忘れたいところだけどね、刀存在が大きすぎる。
アニマートにりすサムグッズを見に行ったり、朱田場でフラペチーノ飲んだり、買う予定はないけどいい匂いの入浴剤を見に行ったりした。あと外から猫カフェの猫観察。
節約しなきゃいけないから我慢はしつつも、すごく楽しい。これがポコポコ界隈ってやつなのね!
「そうだわ、ここ制圧部御用達の武器屋があるんだけど、ちょっと寄っていっていい?刀見てもらいたくて。例の、こーちゃんの特別なお友達が店主なのよ。」
「照の借金返済元、ってことか。」
「えぇ!?き、緊張するっ」
他の店舗とは少し外れた場所。そこに武器屋「遠江屋」はあった。店主はこーちゃんの親友、鉄岡 澄。きーちゃん。高い背に、パリッとスーツ、片目は傷で塞がれてる。正直、こーちゃんより見た目にビビる。
「こんにちは〜!きーちゃんいる〜?この前はありがと!」
「おう、久しぶりだな、お空ちゃんか。良いって事よ。今日は綺麗な格好してどうした?ついにクビになったか?」
見た目はビビるけど、喋ったら優しいおっさん。
「んなわけないじゃない。ちゃんと刀持ってるでしょ?」
「ハハ、たまにはそういう格好も似合ってるって意味だよ。ところでそちらさんは?噂の茨くんと照ちゃんか?」
最初はビビり散らかしていた茨と照も、穏やかなきーちゃんの口調にホッとしたご様子。
軽く自己紹介した後、ちょっと長くなるらしいので、二人には他の店舗で遊んで貰うように頼んだ。
待ち時間、店内の商品を見て回る。
「この前は大変だったな。会議中に襲われて、天律院の人間斬ったと。隊長陣は心を病んでしまったと聞いたからな。お空ちゃんはどうかと心配していた。」
きーちゃんは副業で情報屋をしている。そこまで知ってるとはさすが。
「あたしと誠刃隊の兄さん達は別に心配要らないわ。普通に元気よ?」
「なら良かった。けど、この二人はそうでもないみたいだぞ?」
モニターを見せてくるきーちゃん。そこに映っていたのは、茨と照とショーユ。これ店の監視カメラ……。三人の会話も聞こえてくる。
《空、ちゃんと息抜き出来てるかな?元気そうには見えるけど。ほかの隊長達は病んじゃったらしいし……》
《あんまりあいつ顔に出さないからなぁ。いつもの如く自分の事話さないし。》
《大丈夫ッつよ!空、結構楽しそうッつ!ふたりが立てた計画は成功ッつ!》
《まあまさかポコポコ界隈からこうなるとは思ってなかったけどな》
まさかの気を遣われていた。
ショーユのことで割と色々忘れてたけど……心配かけちゃったみたいね。
でもごめんね。この計画に気づいたのはもうちょっと後ってことにしておく。もう少しだけ、ただの「イイ女」していたいから。
「きーちゃん、これ4つ追加で!」
「お待たせ〜はいこれ!隊長から仲間たちへのお守りね。」
待っていた3人に、先程購入した「プレゼント」を渡す。
「えっなになに〜!?」
「待ってた甲斐があったッつ〜!」
袋から出てきたのは、刀の下げ緒。
下げ緒ってのは簡単に言うと、刀の鞘につける便利紐のことですね。
「わぁ!これ下げ緒?水色……いや、これは空色!」
「あ、値札ついてる。結構お高めだ!?」
「う、値札取ってもらうの忘れてた。そうよ!結構高かったのよ。だから……」
仲間たちをまっすぐ見つめる。
「その分、どんな状況でも、絶対に生きて帰って来ることを諦めないで。…特に茨。あんたは前科があるから。」
いつでもお互いがそばに居て、守り合えるわけじゃないから。隊長として、仲間として、いざという時、このお守りがあたしたちの勇気になりますように。
「値段に釣り合わねぇほどの高級な願い事だな?」
「隊長に結んで貰いたい!!」
「ショーユも!ショーユも!」
刀としっぽを差し出してくる。
「あたしあんまり下げ緒結ぶの得意じゃないんだけど……。頑張るか……。」
茨の補助付きで30分かかった。普段あたしは結ばない派なのよ、許してぇ。ショーユはしっぽに蝶々結びしただけだから簡単だった……かわいい。
「みーんなでお揃い嬉しいッつ〜!かわいいッつ〜!仲良しのぎゅーするッつ!」
「それはまた今度で」
また絞殺未遂されたらたまったもんじゃない。未遂で済むならまだ良いけど。
「「「ありがとう。大切にする!」」」
キャッキャと喜んでくれる仲間たち。
照れくさいけど、ここは素直にならなきゃね。
「こちらこそ。ありがとう。あたしも大切にする。」
おまけ
誠刃隊に自慢写真送り付けた
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最強りすサムファンクラブ1&8
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空《《写真を添付しました》》
空《見て〜お揃い〜》
照《✌》
茨《✌️》
一勝《みんなかわいいな!今度は俺も行きたい》
政晴《いいなー誘ってくれりゃサボれたのに》
竜義《誰もつっこまねぇが、そのタツノオトシゴは一体何なんだ》
政晴《明日ショーユにめんつゆ持って会いに行くから》
空《まじで助かる》
竜義《おいなんで無視すんだ何も知らねぇの俺だけか?》
空《✌️》
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竜兄さん招待するの忘れてて、ショーユのこと話したあとに追加してた。
ポコポコ界隈がそもそも分からない人はググりたまえ。




