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第14話仲良しのぎゅーッ!

皆は覚えているだろうか。茨が気に入っていたタツノオトシゴの飴細工。橙色の、ツヤツヤの。


「ただいま〜」


本部襲撃から一夜明け、八課に帰ってきたら……


「おかえりッつ!!!!!!!」


その飴細工がお喋りするようになっていた件について。




……はい?




「待ってたッつ!茨から聞いたッつ!大丈夫ッつ?」


元気に飛び回ってる。クネクネと。ぷにぷにしてる。


一旦落ち着こうみんな、冷静になろう。



……これは、誠か、、、?


「空!おかえり。大変な目にあったな……怪我は無いか?」


やっと茨が奥から出てきた。


「え?うん?見ての通り無事だけど、それどころじゃないわよね??それどころじゃないことが、今繰り広げられてるわよね???」


「無事で良かったッつ!さすがッつね!さあさあ、玄関で話すのもなんだッつ、早く中に入るッつ!」


なんでそんなに偉そうなのよ、このタツノオトシゴ……。


情報を読み取れず奥に行くと、部屋の片隅に「巣」が出来ていた。

照が「巣」を綺麗に整えている。


「おかえり〜空!」


「……いや誰か状況説明プリーズ??」


とりあえず全員を座らせる。


「俺達も実はよくわかってなくってだな。空、昨日朝にはもういなかったろ?それで掃除してたんだよ。その途中、飴細工にカビ?っぽいのが生えてる気がして、ケースから取り出したんだ。」


こーちゃんから飴細工を貰ったあと、茨は大切にケースに入れて飾っていた。可愛いとこあるなーとか思ってたけど。


「このままカビとか生えて、捨てることになったら悲しいなー、もっとここにいて欲しいのになーとか思ってたら、急にピカーンって飴細工が光だして……眩しくて目瞑ったんだよ。それで目開けたら、目の前にこいつがいたんだ。」


タツノオトシゴが目をウルウルさせてこちらを見てくる。


「お願いだ空、こいつを飼いたい!!」


「私からもお願いする!!どうしてこうなったのかは分からないけど、私も茨が毎日眺めてるの知ってるから、タツノオトシゴには元気でいて欲しいって思ってる!!弓の先向けたけど!」


茨と照が必死にお願いのポーズをする。この摩訶不思議な生物はペットでいいのか。


「わかったわかった……。大方、龍族である茨の<守護力>と、エルフ族である照の<創造力>の賜物ってところかしらね。無意識に影響されちゃったのかも。」


茨と照は、「人間」という括りではあるものの、特殊な一族ってところ。超能力みたいな。


龍の守護力っていうのは「保存」することに長けてて、エルフの創造力は何も無いところから「創り出す」ことに長けてる。


ただ……なぜだかこの子から虚楽のエネルギーを感じるのよね。


「じゃあ茨と照がおとーさんとおかーさんって事ッつか?」


「「気色悪ぃこと言うんじゃねぇよ」」


2人してすごい形相で睨む。


「ッつ!?!?」


タツノオトシゴもビビっている。

年頃の子にそんなデリケートなこと言うから……


「そういえば、この子名前はどうするの?」


「名前なら考えてたんだよ!候補が、ソース、ショーユ、メンツユ、権兵衛!」


「二人とも調味料入れる瓶イメージしてない?そして権兵衛は一体どこから来たのよ。」


確かに調味料入れるあの形に似てるけども。権兵衛、お前は一体誰なんだ。


「見た目もそうだが、どうやら主食がメンツユらしくてだな。権兵衛は名無しの権兵衛って言うだろ?照の案だ。」


「主食がメンツユ……?飴細工なのにしょっぱいのが好きなのね。」


「権兵衛は論外ッつ。メンツユは大好きだけど、ツユ……。ショーユがいいッつ!!」


無事ショーユに決定しました。照は権兵衛を推してたらしく、ガッカリしている。

そんな茨と照の周りを飛び回るショーユ。


(少し前まではたった1人しか居なかったこの場所に、今や3人と1匹かぁ。何が起こるか分からないものね。…………いや本気(まじ)で。)


「ショーユ、もっと3人の事知りたいッつ!教えて欲しいッつ!年はいくつッつ?誕生日はいつっつ?なんでてっぺん組にいるッつ?好きな食べ物はなんだっつ?」


質問の雨を降らせるショーユ。嬉しいのか尻尾を伸び縮みさせてる。それがあたしの顔にペシペシ当たる。


「落ち着いてくれショーユ。ちゃんとひとつずつ答えてくから。空に尻尾ペシペシするんじゃない。まずは俺からいこう!八木茨、19歳。誕生日は5月12日。元いた第4課烈日隊がみんな殉職しちまって、空に拾われてここに居る。好きな食べ物は、そうめん!」


衝撃的なことに、あたしたちは新学期の最初にするような自己紹介をしていなかった。3人とも気にしなかったのは奇跡でしょ。


「次は私!琴吹照、15歳!誕生日は10月12日。借金返済の為に、てっぺん組でアルバイト中!好きな食べ物は、さきいか。」


「もしかして照、学校の鞄にさきいか入れるタイプ?やばいわよ〜それ、あたしが青年部の時、クラスでさきいか流行ったのよ。ほら、さきいかって中毒あるじゃない?そしたら教室内が臭いったらありゃしない。お陰で呑兵衛の部屋って言われてたから。」


茨がドン引く。認めてくれ、JKなんてみんなこんなもんなのよ。照、あんたはドン引くな。コチラ側だろう。


「時々照の鞄からさきいかの匂いしたのそのせいか……。」


「うわ……呑兵衛の部屋……気をつける……って話逸らさないで!次は空の番でしょ!」


「はいはい、あたしは天道空、18歳。てっぺん組隊長になってから、かれこれ2年ってところかしら。誕生日は8月23日。といっても、あたしは孤児だったから、正確な誕生日は分からない。兄さんが拾ってくれた日が誕生日。好きな食べ物はあたりめ!」


「「えぇぇぇ!?!?!?」」


2人は開いた口が塞がらない。


「16歳で隊長になったって事か!?てか俺よりも年下……呑兵衛の部屋は青年部で聞いた事あったけど、そのまさかとは……」


「さっきの話しといて、さきいかからあたりめ派になったの!?」


「照、突っ込むとこそこッつか!?」


早く隊員になりたい照に、この話をしたら刺激しちゃうかと思ったけど、勝者はさきいかだった。


「一体何したら飛び級で隊長になれるんだよ?」


「青年部の時にあった大規模な虚楽拡大の時に、こっそりあたしも紛れ込もっかなっと思って。兄さん達もきっと出動してるし、まあいいかなーってね。そしたら誠刃隊が来る前に、虚楽消滅させて、見つかってバレちゃったわ。あの時の竜兄さんは怖かった……」


青年部は教員の引率なしで虚楽に出入りする事は禁じられているから。めちゃくちゃ大目玉食らったっけ。


「そんなに強かったのに、誠刃隊に入らなかったのはなんでッつ?」


「これでも最初の3ヶ月は誠刃隊に入隊してたのよ。あたしにとって、誠刃隊の兄さん達は憧れで、尊敬してたし。それはもちろん今もだけど。」


「空はどうやってそんなに強くなれたの?学生は実践演習も多くないはずなのに。」


照が食い気味に聞いてくる。うぅ、絶対聞いてくると思った。


「それは……ここだけの話、小さい時から夜に抜け出して、虚楽に行って実践を積んだというか。あ、兄さん達には絶対内緒ね!」


二人と一匹はスッ……と真顔になる。これ信じてないわね。


「ちなみにあたりめ派になったのは、さきいかより長く噛んでいられるから!」


「それを言うなら、その分あたりめは内容量が少ないじゃん!」


さきいか派とあたりめ派で真剣に議論する女子二人。


「あれ、これこそ呑兵衛の部屋……」


ギロリと茨を睨む。


「茨、正直に吐こう!そうめんなんて可愛子ぶってんじゃねぇやい!」


「そーだそーだ!吐きやがれぃ!」


「いつの間にか好きなおつまみ発表会になってんじゃねーか。」


だが女子二人の目線は黙秘を許してくれない。


「じゃあ、チータラ。」


ふたりして茨の肩にポンと手を置いてくる。


「茨……これであたし達、本当の仲間だわ。」


「うん。私たち、ようやく今日、一致団結できた気がする。」


どうやらこのお嬢さん方は満足したようだ。チータラは3人共通の好物。


(この二人、顔は良いのにモテない理由がわかった気がする……)


茨は絶対に口にしてはならないことを、心の中で消化した。


「なーんだ!喧嘩が始まったかと思っちゃったッつよ!ただのじゃれ合いだったッつね!仲良くするっつよ!ほら、仲良しのぎゅーッつ!」


ショーユはそう言うと、3人を一緒にしっぽで包み込む。いや、縛り上げる。


「痛い"!!!!ギブギブ!ぐる"じい"っで!」


「死ぬぅ!!!ぐへっ……」


「ぐあぁぁぁーー!」


響き渡る3人の断末魔。

しっぽが解けると、その場に一斉に倒れ込む。


「あれ、話し疲れたッつか?えへへ、楽しそうなのを見るのは嬉しいッつ!ショーユは喧嘩する3人のつなぎ止め役になるッつ!」


無邪気で可愛いショーユ。まさか一食分にメンツユ1本だということは、この時まだ誰も知らない。


ショーユ集団絞殺未遂事件

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