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第13話殺し、殺され、生きる覚悟

天律院の襲撃があったその夜。

一勝と竜義は、2人肩を並べて晩酌していた。注がれた酒には、綺麗な満月が浮かんでいる。


「俺ぁ、人間っつうもんを初めて斬ったが、ありゃあんまり気分がいいもんじゃねぇな。あれから手の震えが止まらねぇ。」


竜義はその手を見て握りしめる。


「なんだ、タツもか。空や政晴に、上手くバレないようにしてたが…お月さんには隠せねぇみてーだ。」


一勝の酒に浮かぶ満月が崩れる。もちろん、真上に浮かぶ本物の満月は、綺麗そのまま。


「上に立つ俺らがぶるぶるビビってたら、下はついてこん。腹ぁ括らねぇとな。……そう思うとあの時、空はよく自分から前に出たもんだ。いつまでも小せぇかわいい妹だと思っていたが、いつの間にか大きくなったなぁ。」


「フッ、なーにジジィくせぇこと言ってんだ。自ら先陣切ったとはいえ、空は平気だったのか?天律院の声と喋ってたあいつ、妙な事言ってなかったか?」


「あぁ、それなんだが……」






襲撃後の会議室ーーー。

各課の一刃頭が駆けつける中、空は一人、ぼーっと佇んでいた。

怖くて震えてる訳でもなく、その背中はただーー。


「空?大丈夫か?」


一勝が声をかけると、普段と変わらないようにクルッと振り向く。


「ん?えぇ、大丈夫ですよ。無傷です。」


外見は確かに大丈夫そうに見える。


「ふふ、もうそんな舐めまわすように見なくたって、嘘なんか付いてませんってば。」


「…そうか。立派になったな!皆の前に進んで立った時は、すごくかっこよかったぞ!……お前と肩並べて戦えて、嬉しかった!」


空は一瞬驚いた顔をして、嬉しそうな顔をする。


「…こちらこそ、一勝隊長。その言葉、そっくりそのまま返却しますよ。」


「……えっと……さっき、天律院と喋ってた『あの人達』って誰のことだ?天律院に知り合いでもいたのか?」


「んなわけないない。今日が初対面です。全くの無関係ですよ」


「そ、そうか、、そうだ、今日は本部に泊まっていきなさい。あと、今日中は虚楽に行くの禁止だ。ゆっくり休め。」


「うーん、じゃあ、そうしとくわ。一兄も、竜兄さんも、あんまり無理しないようにね?」


そう言って、その場を離れていく空。

その背中は、ただ静かで。

けれど何故だか、

寂しそうに見えた。





…………。


「てっきり知らねぇうちに天律院に仲間でもいたのかと思ったが違ったのか。ったく紛らわしいな。というか、本部嫌いの空が泊まりこむなんて何事だ?明日は槍でも降らせるつもりか?」


竜義は酒をぐびっと飲み干す。


(全く、この男はあたしの事なんだと思ってんだ。)


「ハッハッハ!良いじゃねぇか、きっと心細くなったんだろうよ!それに槍が降ってくれたら武器の出費が抑えられて、むしろお得ってところだ!」


「で、いっちゃんよぉ、そろそろ外にいる、でけぇネズミの駆除と行こうじゃねぇか?」


(ひぃ!バレてる!!)


空はこっそり、ふたりがいる部屋の外から、盗み聞きしていた。さすが地獄耳。いや音は立ててなかったはず……とりあえず逃げよう!!


慌ててそそくさと立ち去る。


(あぁ、思い出すなぁ、まだ道場にいた時も、こんな風に二人の会話を盗み聞きしてたっけ……安心できるのよね、二人が楽しそうに晩酌してると。)


パタンと、仮眠室の扉を締める。

寝るつもりはないけど。


(でもそっか。兄さん達も、最初は怖かったんだ。でも、そんなあなた方に、あたしは何度も何度も、助けられてるわ。だから、ものすごく嬉しかった、一兄、「肩を並べて戦えて嬉しい」って言ってくれて。)


窓から見える満月が綺麗だ。思わず手を伸ばす。


「殺される覚悟を持つと同時に、生きる覚悟も持て、か。……昔そう教えてくれたっけ。ふふ、長生きしてくださいね、ずっと、肩を並べて戦いたいから。」


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