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欠け星アルフェラッツ もしもダビデ像が服を着てたら  作者: Y.Itoda
第三章 二〇〇〇年〜 遠江詩亜
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57話

 待ち合わせの柱の前に、丸ちゃんは既に立っていた。

 ベージュに白の切り返しが入ったボアジャケットに両手を突っ込み、手持ち無沙汰に行き交う人影を眺めている。時折、ポケットから手を抜いては、かじかんだ指先に息を落としていた。


「丸ちゃん、おっはー」


 声をかけると、ぱっとこちらを向く。


「おう。早かったな」


「待った?」


「いや、おれも今来たとこ」


 絶対に、嘘だ。きっと、随分前からここで待っていてくれたのだろう。

 詩亜は何も言わずに手を伸ばし、首元で少し形を崩したマフラーを、きゅっと整えてやった。丸ちゃんの誕生日に贈った、お揃いの素材。


「……なんだよ」


「べつに」


 それ以上は、言わない。指摘すれば、どうせつまらない言い訳をするに決まっているから。

 ちゃんと巻いてくれている。

 そう思うと、それだけで、来てよかったと思えた。




 駅と直結した大型百貨店、千葉そごうの暖かな空気が二人を包む。館内には、クリスマスソングが、どこからともなく流れていた。

 詩集の特設会場は上の階にある。中央のエスカレーターに乗り、ゆっくりと昇っていく。

 隣に立つ丸ちゃんの視線が、ふと何段か前をゆく女子高生へと流れた。あろうことかエスカレーターの段差で、短いスカートの裾から無防備な下着が丸見えになっていた。


「ちょっと。丸ちゃん、見ちゃだめ」


「いや、あれは無理だって。短すぎだろ」


「だから見るな!」


 むきになる横顔を、じとっと睨みつける丸ちゃんは「はいはい」と、ごまかすように視線を宙へ泳がせた。


「……つーか、詩亜は、何色?」


「は?」


 今日の詩亜は、制服姿のままだった。朝、音楽室でピアノを弾いたその足で、ここまで直行したのだ。そういえば、駅前ですれ違った男子たちが、『あの制服どこの学校?』「可愛い」とこちらを振り返っていた。

 丸ちゃんも、それを耳にしていたのだろうか。


「いや、その……今日の、詩亜のは、どうなってんのかなって」


 顔をうっすら赤くして、口元をもごつかせる。これはやきもちだ。本人は絶対に認めないだろうけれど。

 詩亜は、わざとすました顔で答えてやった。


「スカートの下、体操着のハーフパンツ、ちゃんと履いてますけど」


「……そうか。ならいい」


「なにそれ。心配しすぎ」


「べつに、そんなことないって」


 ひょいと顔を背けるその耳が、ほんのり赤い。

 その横顔を見ながら、お互い様だな、と思う。

 まあ自分も。人のことを言えた口ではない。

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