表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
34/86

34話

 高校は、可もなく不可もない学校を選んだ。自転車で通える距離。ただそれだけが理由だった。通学路には見慣れた坂道と、コンビニの看板。どこにでもある風景だ。

 今思えば、あの頃から、何かを諦めるのだけがうまくなっていった気がする。

 四人は、ばらばらになった。

 詩亜は都内の学校に進学し、寮で暮らしている。トン子は、高校に入ったものの、すぐにやめた。建築現場で汗を流していると、部屋にふらりと顔を出した時に聞いた。

 駿とは、転校したきり会っていない。

 最初のうちは、月に二度ほどトン子が来たり、実家の用事がてらに詩亜が顔を見せたりしていた。だけど、半年もすれば一丸の部屋を訪れる者は誰一人いなくなり、行き来は完全に途切れた。

 誰も悪くはなかった。皆、忙しいのだ。けれど一丸は、ある日突然、友達のすべてを失ったような気持ちになっていた。

 傷はかさぶたになって()えるのに、心だけがあの頃に立ち止まったままだった。

 部活も、初日でやめた。

 入部したその日、新入生は体育館のステージに並ばされ、大声で自己紹介をさせられた。見かねた顧問が上級生を怒鳴りつけ、自分で叫び始めたところで中断になったが、またか、という感じだった。毎年恒例の儀式なのか知らないが、この手の、下っ端から()い上がれという形式が、本当にくだらなく思えた。

 練習を見ても、目を引く奴は一人もいない。わざわざ時間を割く価値はない。そう判断して、その日のうちに退部届を出した。

 そもそも、その程度だったのだと思う。自分の熱量なんて。中学最後の大会で初戦敗退した時、さして悔しいとも感じなかった。あの時点で、バスケへの情熱なんて、とっくに終わっていたのだ。だから、未練もなかった。


 ――いや。


 本当は、わかっていた。あの夜から、何かに本気で打ち込むのが、怖くなっただけだと。




 二学期も半ばを過ぎると、クラスの空気は一変していた。髪の色を変えていない生徒を探す方が、難しいくらいだった。全員が顔を揃えるのは昼休みで、皆が当然のように、遅れて登校してくる。

 一丸が髪を少しだけ明るく染めたのは、多分、一種の反発だった。中学の友人を失った喪失感からきたものかもしれないし、周りの空気に流された部分もあったと思う。ただ、新しい居場所なんて求めていない、という自分なりの拒絶のようにも思えた。

 クラスメイトとは、表面上、波風を立てずに付き合っていた。けれど、本当の友人と呼べる関係には、程遠かった。心を開けない自分の問題なのか、周りが等しくドライなだけなのかは、今でもわからない。

 唯一の慰めは、女子生徒たちの解放的な格好だけだった。

 ルーズソックスに、動くたびに下着を覗かせる短いスカート。白いシャツのボタンは胸元まで開けられ、屈んだ拍子に、黒いブラジャーが見えた時は、思わず立ち上がった。

 衝撃だった。女子高生が、あんなものを身につけて許されるのか。


 初めて、生で見た、黒色なんて。


 そんな刺激的な日々の中に、トン子がふらりと現れたのは、高校二年の夏休みだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ