34話
高校は、可もなく不可もない学校を選んだ。自転車で通える距離。ただそれだけが理由だった。通学路には見慣れた坂道と、コンビニの看板。どこにでもある風景だ。
今思えば、あの頃から、何かを諦めるのだけがうまくなっていった気がする。
四人は、ばらばらになった。
詩亜は都内の学校に進学し、寮で暮らしている。トン子は、高校に入ったものの、すぐにやめた。建築現場で汗を流していると、部屋にふらりと顔を出した時に聞いた。
駿とは、転校したきり会っていない。
最初のうちは、月に二度ほどトン子が来たり、実家の用事がてらに詩亜が顔を見せたりしていた。だけど、半年もすれば一丸の部屋を訪れる者は誰一人いなくなり、行き来は完全に途切れた。
誰も悪くはなかった。皆、忙しいのだ。けれど一丸は、ある日突然、友達のすべてを失ったような気持ちになっていた。
傷はかさぶたになって癒えるのに、心だけがあの頃に立ち止まったままだった。
部活も、初日でやめた。
入部したその日、新入生は体育館のステージに並ばされ、大声で自己紹介をさせられた。見かねた顧問が上級生を怒鳴りつけ、自分で叫び始めたところで中断になったが、またか、という感じだった。毎年恒例の儀式なのか知らないが、この手の、下っ端から這い上がれという形式が、本当にくだらなく思えた。
練習を見ても、目を引く奴は一人もいない。わざわざ時間を割く価値はない。そう判断して、その日のうちに退部届を出した。
そもそも、その程度だったのだと思う。自分の熱量なんて。中学最後の大会で初戦敗退した時、さして悔しいとも感じなかった。あの時点で、バスケへの情熱なんて、とっくに終わっていたのだ。だから、未練もなかった。
――いや。
本当は、わかっていた。あの夜から、何かに本気で打ち込むのが、怖くなっただけだと。
二学期も半ばを過ぎると、クラスの空気は一変していた。髪の色を変えていない生徒を探す方が、難しいくらいだった。全員が顔を揃えるのは昼休みで、皆が当然のように、遅れて登校してくる。
一丸が髪を少しだけ明るく染めたのは、多分、一種の反発だった。中学の友人を失った喪失感からきたものかもしれないし、周りの空気に流された部分もあったと思う。ただ、新しい居場所なんて求めていない、という自分なりの拒絶のようにも思えた。
クラスメイトとは、表面上、波風を立てずに付き合っていた。けれど、本当の友人と呼べる関係には、程遠かった。心を開けない自分の問題なのか、周りが等しくドライなだけなのかは、今でもわからない。
唯一の慰めは、女子生徒たちの解放的な格好だけだった。
ルーズソックスに、動くたびに下着を覗かせる短いスカート。白いシャツのボタンは胸元まで開けられ、屈んだ拍子に、黒いブラジャーが見えた時は、思わず立ち上がった。
衝撃だった。女子高生が、あんなものを身につけて許されるのか。
初めて、生で見た、黒色なんて。
そんな刺激的な日々の中に、トン子がふらりと現れたのは、高校二年の夏休みだった。




