表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/86

24話

 駿の住んでるマンション行ってきたら。

 ふいに、詩亜の声が頭の中で聞こえた。

 丸ちゃんは『すごい』んだから。

 続けて、駿の口癖まで。駿もこの漫画をよく読んでいた。あいつならパンチではなく、回し蹴りを選ぶだろうか。いや、背が低いぶん、飛び回し蹴りかもしれない。空手有段者の黒帯が繰り出す技は、さぞ迫力があるに違いない。

 拳を下ろし、何となく口寂しさを覚えて、キッチンへ向かうが、冷凍庫にはアイスはなかった。

 部屋に戻り、テレビの音をBGM代わりに流しながら、再び漫画へ視線を落とす。本棚には、願いを叶える(ボール)を探して世界を巡る冒険記から、自らを天才と豪語するバスケ漫画まで、旬な誌面が雑然と並んでいる。台詞を覚えるほど、何度も何度も読み返してきた。

 自分の居場所を探すかのように。

 漫画の主人公みたいに、いつか自分たちも何者かになれる。ただ、そう信じたかったのだと思う。

 寝返りを打った拍子に、本棚の隅で何かが光った。

 ピーピーと、玩具のような電子音が短く繰り返される。


 ――これ、詩亜のじゃ?


 拾い上げたのは、板チョコを半分に割ったようなサイズの端末だった。詩亜が肌身離さず持ち歩いている、ポケットベル。置き忘れていったのだろうか。

 モノクロの小さな液晶には、『3476』という数字だけが並んでいた。


 ――何だこれ?


 詩亜は以前、打ち込む暗号を全て覚えたと自慢していた。確か、10105で『いまどこ』。何故か、それだけは記憶にこびりついている。


 ……サシナム。


 違うか。さすがに意味がわからない。数字をそのまま音に変換しても、正解には辿り着けなかった。

 詩亜の語る姉の高校生活は、眩いほど煌びやかだった。授業を遮って鳴るというポケベル。休み時間のたびに、公衆電話へ走る行列。そんな喧騒の中に居場所を求める妹にとって、この端末は少し背伸びした、あちら側へ繋がる切符なのかもしれない。

 鳴ることのない青春を過ごす自分には、一生縁のない話だ。意味不明な『サシナム』の文字が、そう告げている気がした。


 ――これ、絶対探してるよな。


 間違いない。そう思い直して、拾い上げた端末をポケットに入れた。

 とりあえず、コンビニに行きがてら、詩亜の元へ届けることにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ