第33話 振り撒きました。
一晩寝たら別にハチに拘らなくても良いことに気付きました、おはようございます。
毒は終齢幼虫のボクに改めて期待することにして、取り敢えず片っ端からボクが魅了で引き付けたら後はアンナさんに任せよう。
【物騒な美人局ですね】
逆に物騒じゃない美人局って何? 強請るか殺すかの違いでしかなくない?
【命惜しくば生命核を寄越せ、ということでしょうか】
どっちにしろ、相手は死ぬ、ってやつ。
【そういえば生き物がお好きなのでは?】
好きだよ、生存の為に進化退化を繰り返した外見と習性で懸命に生きている姿が。そこに加わる弱肉強食も好きだから、その枠内に組み込まれたらボクも従うしかないよね。たとえアンナさんより強い生物に負けてボクが食べられるとしても、痛いのも怖いのも嫌だからさっさと楽にして欲しいってだけで、相手を恨むことはしないかな。
【私は、天羽様がいなくなったら──……】
勿論、頑張ってくれてるお嫁さんを遺して死ぬ心算もないよ。アンナさんとの幸せな未来、っていうのは嘘じゃないからね。
【天羽様──……!】
なのでその幸せな未来の為に必要な犠牲は致し方ない。君達の生命核は無駄にはしないよ、物理的な死骸の方は土にでもなって植物の成長に貢献して下さい。
【ところで私が夫です】
そのまま流してくれてても良かったんだよ?
ともあれさて置き、まずは安全確認。結界の状態、ヨシ。毒の付与、ヨシ。アンナさんの通常運転、ヨシ。
覚悟を決める為に深呼吸して、いざ──!
《 魅 了 》
対象もなく全方位に魅了を撒き散らす、ステージでファンに愛想を振り撒くアイドル、ってこういう気分なんだろうか? 目的が名声を得るか生命(核)を得るかでかなり違うから分からないし、分からなくても全く問題はないんだけど。
そうこうしている内に下の方からはカサカサと音が聞こえてくるし、上の方からは羽音が聞こえてきた。★7つの魅了の威力ったらないけど、現状を思うと嫌な音でしかない。もうアンナさんに任せきって目を閉じ、ボクは結界と毒の維持にだけ集中する。どうか少しでも良いから魔物がかかりますように!
あああ、結界に何かが接触した、齧る音がするしそれに混じって羽音も大きくなる、ギチギチいってるけどこの音は何処の誰の何!?
【検索中──、結果を表示……、いえ、取り敢えず殺しますね】
うん、そうして。聞きたくないし知りたくない。餌か繁殖かの2択しかないのに訊いたボクがバカだった。
伏せてくれてありがとうね、アンナさん。
【妻の精神衛生を守るのも夫の務めですから】
ボクが夫です!




