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海賊プレイヤー

夜の街を駆ける。


ネオンが視界を流れていく。


空中広告ドローンが頭上を横切り、巨大モニターにはまだレンの配信映像が映っていた。


『違法AI配信者、現在も逃走中――』


「いやニュース早すぎるだろ!?」


『現在、関連動画投稿数は12万件を突破』


ノアが淡々と報告する。


「報告聞くたび人生終わってくんだけど!?」


レイヴンは隣を走りながら笑った。


「人気者って大変だな」


「お前絶対楽しんでるだろ」


「そりゃな」


彼女は悪びれもなく答える。


そのまま高架道路の手すりへ飛び乗った。


バランス感覚がおかしい。


『身体能力分析』


『常人の3.8倍』


ノアが静かに言う。


『高同期適性保持者と推定』


レンは眉をひそめた。


「お前もSYNAPSEプレイヤーなのか?」


「元、な」


レイヴンの声が少しだけ低くなる。


「今は“海賊”」


その瞬間。


ノアが反応した。


『海賊プレイヤー』


『国家非公認AIを使用し、違法戦闘行為を行う高危険対象』


『賞金首です』


「うわぁ……」


「その反応傷つくんだけど?」


レイヴンは苦笑する。


だが次の瞬間。


彼女の表情が変わった。


「止まれ」


レンも反射的に足を止める。


静寂。


風の音だけ。


その時。


――ギュイン。


赤いレーザーサイトが、レンの額へ重なった。


『狙撃』


ノアの声。


同時にレンは横へ飛ぶ。


直後。


高架道路が吹き飛んだ。


轟音。


コンクリート破片が宙を舞う。


『うおおお!?』


『狙撃!?』


『映画かよ!!』


コメント欄が絶叫状態になる。


レイヴンが舌打ちした。


「もう来たか」


「何が!?」


『管理局特殊狙撃部隊を確認』


ノアが静かに言う。


『通称“ハウンド”』


『命中率99.2%』


「嫌な情報しかねぇ!」


再びレーザー。


今度は三本。


『同時狙撃』


『回避ルート表示』


赤いラインが視界へ走る。


レンは歯を食いしばり、全力で駆けた。


弾丸が夜を裂く。


道路が爆ぜる。


火花。


煙。


だが。


『左』


『次に前方低姿勢』


ノアの指示通り動くたび、ギリギリで回避できる。


コメント欄が狂っていた。


『避けすぎだろ!?』


『未来見えてんのか!?』


『人間やめてる』


『ノア強すぎ』


その時。


レイヴンが突然笑った。


「いいな、それ」


「は!?」


「お前ら、マジで面白い」


彼女はライフルを構える。


高架の向こう。


遥か遠くのビル。


そこへ向かって、迷いなく引き金を引いた。


轟音。


数秒後。


遠方で爆発。


『狙撃地点破壊を確認』


ノアが呟く。


レンは目を見開いた。


「今ので当てたのか!?」


「距離1.8キロ。今日は調子悪い」


「バケモンかよ……」


レイヴンは笑う。


その笑顔は、どこか自由だった。


国家にも。


ルールにも。


何にも縛られていないみたいに。


その時。


ノアが静かに言った。


『質問があります』


「なんだよ」


『なぜ彼女は笑っているのですか?』


レイヴンが「ん?」と振り向く。


レンは少しだけ考えた。


そして苦笑する。


「……楽しいからじゃねぇの」


『追跡・狙撃・逃走状態です』


『合理的ではありません』


「人間ってそういう時ほど笑うんだよ」


ノアは沈黙した。


赤い瞳が、ほんの少しだけ揺れる。


『……記録します』


その時だった。


街中の巨大モニターが一斉に切り替わる。


ノイズ。


警告音。


そして現れたのは――。


銀髪の女。


榊イオリ。


『緊急告知です』


街全体へ声が響く。


『霧島レンを匿う行為は、国家反逆罪に該当します』


ざわめき。


通行人たちがモニターを見る。


配信コメントも止まった。


イオリは静かに続ける。


『ですが』


その瞬間。


彼女は少しだけ笑った。


『――捕まえられるなら、どうぞ』


レンは固まる。


「は?」


次の瞬間。


街中が爆発した。


歓声。


SNS通知。


コメント欄。


全部が一斉に加速する。


『祭りだあああ!!』


『公式が煽った!?』


『イオリ何してんだ!?』


『国家割れてる!?』


ノアが静かに分析する。


『現在、世論が二極化しています』


『霧島レン支持率、急上昇中』


レンは頭を抱えた。


「……なんでこんなことになってんだよ」


その隣で。


レイヴンだけが楽しそうに笑っていた。


「だから言ったろ?」


彼女は夜景を見上げる。


「この街、面白いって」

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