表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/22

初めての“味方”

夜風が頬を叩く。


レンは非常階段を駆け下りながら、荒く息を吐いていた。


「はっ……はっ……!」


【LIVE VIEWERS:812,441】


「増えすぎだろ!!」


コメント欄が滝みたいに流れていく。


『逃走配信とか初めて見た』


『国家ガチで来てるじゃん』


『これBANされないの?』


『管理局案件だろ』


『ノアかわいい』


「なんでその感想なんだよ!?」


『分析結果』


ノアが淡々と言う。


『現在、“ノアかわいい”関連コメント率が12%を超えています』


「分析すんな!」


だが次の瞬間。


ノアの赤い瞳が僅かに揺れた。


『……かわいい』


「は?」


『それは、肯定的評価ですか?』


レンは一瞬固まる。


その間にも足は止めない。


「まあ……多分そうだな」


『記録しました』


ノアは静かに頷いた。


『“かわいい”は好意的表現』


「なんで学習してんだよこんな時に……!」


その時。


非常階段の下階から複数の足音。


『前方に敵性反応』


「マジかよ!」


黒装甲の管理局部隊が階段を駆け上がってくる。


上からも追跡。


完全に挟まれた。


『推定生存率18%』


「低っ!?」


レンは舌打ちする。


逃げ場がない。


その時だった。


――ガンッ!!


突然、下階で爆発音が響く。


管理局部隊が吹き飛んだ。


『は?』


『何だ!?』


煙の向こうから、一人の少女が現れる。


赤髪。


パーカー姿。


片手には大型ライフル。


そしてニヤリと笑った。


「配信で見るより面白いじゃん、お前」


レンは目を見開く。


「誰だ!?」


少女は答える代わりに、再び発砲した。


衝撃波。


管理局部隊が壁ごと吹き飛ぶ。


威力がおかしい。


コメント欄が爆発した。


『新キャラきた!?』


『赤髪!!』


『誰だこいつ!!』


『味方!?』


ノアが即座に解析を始める。


『対象確認』


『未登録プレイヤー』


『通称:レイヴン』


『違法戦闘介入常習犯』


「海賊プレイヤーかよ!?」


少女――レイヴンは楽しそうに笑った。


「正解」


彼女は肩にライフルを担ぐ。


「有名人になったなぁ、霧島レン」


「知ってんのか俺を」


「今知らねぇ奴の方が少ないだろ」


レイヴンは配信画面を見て笑う。


『同接90万で草』


『もうスターじゃん』


『レイヴンだ!?』


『マジで海賊プレイヤー!?』


『やべぇ奴来た』


レンは眉をひそめた。


「……なんで助けた」


「面白そうだったから」


即答だった。


「あと、管理局ムカつくし」


『合理性を確認できません』


ノアが呟く。


レイヴンはニヤッと笑った。


「あ? なんだそのAI」


『あなたを分析中です』


「こわ」


その瞬間。


上階から管理局部隊が飛び降りてくる。


『対象を確保する!』


レイヴンは舌打ちした。


「数多すぎ」


ノアが静かに言う。


『提案』


『レイヴンとの一時共闘を推奨』


「信用できんのか?」


『不明』


「不明!?」


『ですが現在、生存率が31%まで上昇しています』


「お前基準生存率低すぎるんだよ!」


レイヴンは楽しそうに笑う。


「いいじゃん、組もうぜ」


「軽っ……!」


「だってお前、世界で一番面白い配信者だし」


レンは頭を抱えた。


だが。


状況は最悪。


選択肢なんてない。


「……裏切るなよ」


「さぁ?」


「おい」


レイヴンは笑ったまま背を向ける。


「逃げるぞ、スター配信者」


その瞬間。


彼女は壁を蹴り、非常階段の窓をぶち破った。


夜景が広がる。


ネオン。


空中広告。


無数のドローン。


その向こうに、巨大なSYNAPSEタワーが見えた。


レイヴンは振り返る。


「――この街、夜の方が面白いぜ?」


レンは数秒固まった後、


「もうどうにでもなれ!!」


叫びながら飛び出した。


コメント欄がさらに加速する。


『神回』


『映画じゃん』


『これ無料で見ていいのか?』


『ノアかわいい』


『レイヴンもかわいい』


ノアが静かに呟く。


『……かわいい』


「学習すんな!!」


夜の街へ、三人は消えていく。


その様子を。


遥か上空。


巨大な監視衛星が、静かに観測していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ