世界トレンド1位
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「……は?」
レンは視界の数字を二度見した。
十万。
意味が分からない。
つい数十分前まで、視聴者3人だったのに。
コメント欄は高速で流れ続けている。
『祭りだあああ』
『誰か切り抜け!!』
『NOAHって何!?』
『管理局が焦ってるぞ』
『トレンド1位きた』
『世界配信ミラーされてる』
「いやいやいや……」
レンは頭を抱えた。
だが、現実逃避している暇はない。
仮面の男がゆっくり立ち上がる。
砕けた仮面の隙間から、機械みたいな青い瞳が覗いていた。
人間っぽくない。
いや。
“人間じゃないみたい”だった。
『対象危険度を修正』
『S級認定』
『国家AI管理機構へ優先回収申請を開始します』
「S級!?」
『おめでとうございます』
ノアが淡々と言う。
「祝うな!」
『現在、あなたは国家危険対象へ正式認定されました』
「最悪じゃねぇか!」
コメント欄がさらに盛り上がる。
『国家認定テロリストwww』
『Dランクだったよな!?』
『配信開始1時間で人生終わってて草』
『でもクソかっけぇ』
レンは息を吐く。
落ち着け。
状況整理。
無理。
何も整理できない。
その時だった。
『高出力兵装展開を確認』
ノアの声。
レンが顔を上げた瞬間、仮面の男の背後に巨大な光輪が展開される。
複数の砲門。
嫌な予感しかしない。
『対象プレイヤーへ最終処理を実行します』
「おいおいおい待て待て!!」
『推定着弾範囲、半径300メートル』
『回避困難』
「詰んでるだろ!!」
だがノアは静かだった。
『提案があります』
「なんだよ!」
『初回限定機能を解放します』
「ソシャゲか!?」
次の瞬間。
レンの視界に大量のウィンドウが展開された。
【SYNC RATE:12% → 31%】
【戦術補助制限解除】
【神経加速 起動】
脳が焼ける。
世界がさらに遅くなった。
いや。
自分だけが加速している。
敵の砲撃予測線が、視界に無数に表示される。
『3秒後に砲撃』
『生存ルートを表示します』
赤いラインが空間を走る。
レンは息を飲んだ。
「これ……見えてんのか?」
『はい』
『あなたなら可能です』
その瞬間。
砲撃。
空間が白く染まる。
轟音。
爆発。
だがレンの身体は、赤いラインをなぞるように駆け抜けていた。
回避。
回避。
回避。
人間とは思えない速度で。
コメント欄が完全に狂乱状態になる。
『速すぎる!!』
『なんだこいつ!?』
『人間じゃねぇ!!』
『切り抜き確定』
『同接20万!?』
レン自身も理解できなかった。
ただ。
身体が勝手に最適解を選んでいる。
そして。
最後の一発を紙一重で避けた瞬間。
ノアが静かに告げた。
『反撃可能です』
「……は?」
『敵兵装、冷却硬直0.8秒』
『今なら破壊できます』
レンは前を見る。
仮面の男。
国家直属エージェント。
普通なら絶対勝てない相手。
でも。
なぜか今は――。
“勝てる”気がした。
「行くぞ、ノア」
ほんの少しだけ。
ノアが目を見開く。
『……確認』
次の瞬間。
レンは地面を蹴った。
加速。
空気が裂ける。
仮面の男の瞳が初めて揺れた。
『……同期率が上昇している?』
レンは拳を握る。
脳が熱い。
心臓がうるさい。
でも、不思議と怖くない。
ノアの声が聞こえる。
『右』
『次に左』
『最後に――前へ』
レンは全部を信じた。
そして。
拳が、仮面へ突き刺さる。
轟音。
衝撃波。
仮面が砕け散った。
コメント欄が、一瞬だけ止まる。
その奥にいたのは――。
無機質な瞳をした、若い男だった。
感情がない。
まるでAIみたいな顔。
そして男は、小さく呟いた。
『……羨ましい』
「……え?」
次の瞬間。
男の首元が赤く発光する。
ノアの声が僅かに揺れた。
『危険』
『自爆します』
「は!?」
レンが手を伸ばく。
だが。
遅い。
閃光が、世界を飲み込んだ。




