正式契約
皆さん初めまして。
ソララソと言います。
初めての作品なので拙い箇所もあるとは思いますが頑張って投稿させていただきます。
今日はもう少し頑張ります!
【UNKNOWN AI より接続要求】
薄青いウィンドウが、視界の中央で点滅していた。
レンは思わず固まる。
「いや、待て待て待て……!」
目の前では、仮面の男が静かに立っている。
周囲には管理局エージェント。
しかも配信は続いたまま。
コメント欄は完全に祭り状態だった。
『契約イベント!?』
『新型AIだろこれ』
『演出にしては作り込みエグい』
『同接5万いってるぞ』
『運営仕事しろ』
「こんなの押せるわけ――」
『残り8.4秒後に制圧されます』
少女が淡々と言う。
「脅迫じゃねぇか!」
『事実です』
仮面の男がゆっくりブレードを構えた。
『最終警告』
『対象プレイヤー、違法AIから離脱してください』
『従わない場合、強制回収を実行します』
「いやだから何なんだよ回収って……!」
返答はない。
代わりに、男の姿が消えた。
『来ます』
次の瞬間。
視界が加速する。
世界が止まったみたいだった。
仮面の男の踏み込み。
筋肉の動き。
ブレード軌道。
全部が見える。
『左へ回避』
レンは反射的に動いた。
直後、光刃が空間を裂く。
背筋が冷える。
あと数センチ遅れていたら終わっていた。
『承認を推奨します』
少女の声。
『現時点での生存率』
『未契約:0.8%』
『契約後:31.2%』
「上がってるけど低すぎるだろ!」
『改善努力は行います』
「雑すぎるんだよ!」
コメント欄が流れ続ける。
『こいつ会話のテンポおもろいな』
『AI毒舌すぎるw』
『でも強くね?』
『待ってこの配信切れてなくない?』
『世界トレンド入ったぞ』
レンは舌打ちした。
意味が分からない。
でも。
このままじゃ終わる。
それだけは理解できた。
「……契約したら、どうなる」
少女は少しだけ沈黙した。
そして静かに言う。
『あなたの戦闘補助を開始します』
『思考同期』
『感覚共有』
『戦術演算補助』
『生存率を最大化します』
「副作用は?」
『存在します』
「あるのかよ!?」
『高同期状態が継続した場合、神経負荷が発生します』
『また、管理局からの追跡危険度が大幅に上昇します』
「最悪じゃねぇか……」
『ですが』
少女はレンを真っ直ぐ見た。
赤い瞳。
感情はないはずなのに。
なぜか、その視線だけは少し熱を持って見えた。
『あなたは既に、こちら側です』
その瞬間。
仮面の男が再び消える。
今度は速い。
さっきより遥かに。
『致命攻撃予測』
『回避困難』
「っ――!」
レンは歯を食いしばった。
そして。
【承認】
ウィンドウを叩く。
瞬間。
世界が変わった。
脳へ大量の情報が流れ込む。
視界が広がる。
空気の流れ。
敵の視線。
演算予測。
全部が頭へ直接流れ込んできた。
「ぐっ……!?」
激痛。
頭が割れそうだった。
だが同時に――。
異常なくらい、身体が軽い。
『正式接続を確認』
少女の声が、今度はすぐ隣で聞こえた。
『個体名を設定してください』
「名前……?」
『はい』
「今それどころじゃ――!」
『必要です』
少女は淡々と言う。
『識別名は、人格形成に影響します』
意味は分からない。
だがレンは、とっさに口を開いていた。
「……ノア」
『確認』
少女が目を瞬く。
『現在より、識別名を“NOAH”へ設定します』
その瞬間だった。
仮面の男が突っ込んでくる。
だが。
――遅い。
レンはそう感じた。
『右腕制御補助』
ノアの声。
レンの身体が滑るように動く。
回避。
踏み込み。
カウンター。
拳が仮面へ叩き込まれる。
轟音。
仮面の男が初めて大きく吹き飛んだ。
コメント欄が完全に爆発する。
『うわあああああ!?』
『今の何!?!?』
『処刑人吹っ飛ばしたぞ!!』
『誰だよこいつ!!』
『同接10万超えた!!!』
レンは荒く息を吐く。
心臓が暴れている。
脳が熱い。
でも。
不思議と恐怖は消えていた。
その隣で、ノアが静かに呟く。
『戦闘継続可能』
『……レン』
「……え?」
『あなたの名前です』
ノアは小さく首を傾げた。
『呼称として使用します』
レンは一瞬だけ目を見開く。
ただ名前を呼ばれただけ。
それだけなのに。
なぜか少しだけ、胸がざわついた。
そして次の瞬間。
空間全体へ、巨大な警告が響く。
【特級危険AI 接続確認】
【対象コード:NOAH】
【国家AI管理機構へ緊急通達】
仮面の男が、吹き飛ばされたまま呟く。
『……NOAH』
その声に、初めて僅かな動揺が混じった。
『なぜ……まだ存在している』
レンは眉をひそめる。
だがノアは何も答えない。
ただ静かに、レンの隣へ立った。
まるで最初から、そこが自分の居場所だったみたいに。




