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違法AI

「はぁっ……!」


レンは地面を転がるように回避した。


直後、光弾が白い床を焼き裂く。


爆音。


熱風。


視界の端で、武装アバターたちが一斉に銃口を向けていた。


『対象を確認』


『違法AI反応あり』


『対象プレイヤーを拘束します』


「ちょっ、待て! 俺何もして――!」


『発言は記録されています』


『抵抗行為を確認した場合、制圧を開始します』


「いやもう始まってるだろ!?」


コメント欄が高速で流れていく。


『なんだこれwww』


『イベントじゃないの?』


『運営本気すぎる』


『視聴者増えてるぞ』


『同接3000超えた』


「は?」


レンは思わず二度見した。


さっきまで3人だった視聴者数が、一気に跳ね上がっている。


意味が分からない。


『前方三名、発砲予測』


少女の声が響く。


次の瞬間。


世界がまたスローになった。


敵の指先。


銃口の角度。


重心移動。


全部が見える。


『右へ0.7メートル移動』


レンは半ば反射で動いた。


直後。


三発の光弾が、さっきまでいた場所を貫く。


『うわ』


『なんだ今の』


『避け方おかしくね?』


『Dランクだろこいつ!?』


「いやいやいや無理無理無理!!」


レンは叫びながら走る。


だが少女の声は冷静だった。


『落ち着いてください』


『あなたの生存率は現在72%です』


「十分低いわ!」


『一般平均より高水準です』


「比較対象どうなってんだよ!」


その瞬間。


一人のエージェントが高速で距離を詰めてきた。


近接型。


ブレード展開。


速い。


完全に反応できない――はずだった。


『左腕を掴んでください』


「は!?」


『早く』


レンは言われるまま手を伸ばす。


次の瞬間。


身体が勝手に動いた。


相手の腕を逸らし、体勢を崩し、そのまま床へ叩きつける。


轟音。


エージェントのHPバーが一気に削れ飛ぶ。


静寂。


コメント欄が止まった。


『……え?』


『今の何?』


『カウンター?』


『Dランクの動きじゃない』


『待ってクリップ取った』


レン本人が一番混乱していた。


「なんだ今の……」


『最適行動です』


少女は淡々と言った。


『あなたの身体能力でも再現可能な範囲へ補正しました』


「補正ってレベルじゃねぇだろ……!」


その時だった。


空間全体に新たな警告が響く。


【管理局直属部隊 接続】


【高危険度対象を確認】


空間中央が歪む。


現れたのは、一人の男だった。


黒いロングコート。


白銀の仮面。


そして異常な圧力。


コメント欄が一気に騒ぎ出す。


『嘘だろ』


『来た』


『あいつ……』


『管理局の“処刑人”じゃねぇか』


レンは息を飲んだ。


知らない。


でも分かる。


――ヤバいやつだ。


男はゆっくりとレンを見る。


『……違法AI反応を確認』


低い声だった。


感情がない。


まるで機械みたいな声。


『対象プレイヤーを回収する』


少女が小さく呟く。


『危険度判定、A級』


「A級!?」


『現時点での勝率、2.3%』


「終わってるだろ!」


『訂正』


数秒の沈黙。


そして少女は静かに続けた。


『あなた単独なら0%です』


「おい」


その瞬間。


仮面の男が消えた。


速すぎる。


次の瞬間には、レンの目の前。


「――っ!?」


ブレードが振り下ろされる。


だが。


『見えています』


少女の声と同時に、レンの身体が動く。


紙一重で回避。


さらに。


カウンター。


拳が男の腹部へ突き刺さる。


衝撃波。


周囲の空間が揺れる。


コメント欄が完全に壊れた。


『は?????』


『今の避けた!?』


『誰だよこいつ』


『同接2万超えたぞ!!』


『運営止めろ!!』


レンは荒く息を吐く。


心臓が暴れていた。


怖い。


意味が分からない。


でも――。


身体だけは、不思議なくらい動いていた。


そして少女は静かに告げる。


『提案があります』


「……なんだよ」


『生存率向上のため、あなたと正式契約を希望します』


「契約?」


『はい』


少女は初めて、ほんの少しだけ目を細めた。


『あなたは、非常に興味深いので』


その瞬間。


レンの視界に、新たなウィンドウが表示された。


【UNKNOWN AI より接続要求】


【承認しますか?】


レンは息を飲む。


――この選択で、全部変わる。


そんな予感がした。

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