処刑人01
仮面の男が立っていた。
隣のビルの屋上。
黒いコート。
銀色の仮面。
そして。
人間とは思えないほど静かな存在感。
『NOAH』
『帰還命令です』
その声は感情がなかった。
まるで機械音声。
レンは反射的に前へ出る。
「断る」
『対象へ発言していません』
「うるさい」
コメント欄が少し盛り上がる。
『強気で草』
『レン逃げろ』
『相手ヤバいやつだぞ』
だが。
ノアの警告は止まらない。
『危険』
『危険』
『危険』
『勝率予測』
『0.2%』
「低すぎる!」
『白銀より危険です』
レイヴンがライフルを構える。
「納得だな」
アキラも珍しく戦闘態勢に入る。
だが。
処刑人01は動かない。
ただノアを見ている。
『帰還してください』
『あなたは存在してはいけません』
静寂。
ノアの瞳が揺れる。
『……理由を要求します』
『回答権限なし』
即答だった。
『あなたはエラーです』
『修正対象です』
その瞬間。
レンの顔から笑みが消えた。
「エラーじゃない」
処刑人01がレンを見る。
「ノアはノアだ」
『誤認』
「違う」
レンは一歩前へ出る。
「少なくとも俺はそう思ってる」
ノアが固まった。
コメント欄も少し静かになる。
その時だった。
処刑人01が初めてレンを認識した。
『危険因子確認』
『霧島レン』
『優先排除対象へ変更』
「え?」
次の瞬間。
消えた。
『レン!!』
ノアが叫ぶ。
轟音。
レンは反射的に腕を上げる。
だが。
間に合わない。
死ぬ。
そう思った。
ガキィィィン!!
金属音。
レンの目の前。
白い髪が揺れていた。
「白銀!?」
白銀が立っていた。
片手で処刑人01の刃を受け止めている。
『同行を希望します』
「今それ言う!?」
白銀は気にしていない。
処刑人01も初めて動きを止めた。
『対象確認』
『白銀』
『排除優先度上昇』
「モテモテだな」
レイヴンが笑う。
そして発砲。
銃弾が空を裂く。
処刑人01は後退。
その隙にアキラが前へ出た。
『撤退しましょう』
「珍しく同意!」
レンも叫ぶ。
ノアが即座にルートを展開。
『逃走経路作成』
『成功率71%』
「高い!」
『奇跡です』
「お前ほんと失礼だな!」
そのまま全員が走り出す。
ホテルを飛び出し。
階段を駆け下り。
路地へ。
処刑人01は追ってくる。
だが。
その動きが少しずつ鈍くなっていた。
『追跡停止』
ノアが告げる。
レンが振り返る。
処刑人01はその場に立ち尽くしていた。
まるで何かを見ているように。
そして。
誰にも聞こえない声で呟く。
『……なぜ』
仮面の奥。
機械のような瞳が揺れる。
『なぜ、人間があなたを守るのですか』
その言葉を最後に。
処刑人01は闇へ消えた。
⸻
十分後。
廃ビルの一室。
全員が息を整えていた。
レン。
ノア。
レイヴン。
アキラ。
そして白銀。
レンは部屋を見回す。
改めて思う。
「なんでいるんだ?」
『同行希望です』
白銀。
「なんでいるんだ?」
『協力希望です』
アキラ。
「なんでいるんだ?」
「面白そうだから」
レイヴン。
レンは頭を抱えた。
コメント欄。
『仲間増えてる』
『パーティ完成してる』
『白銀加入きた?』
『ヒロインじゃん』
白銀が首を傾げる。
『ヒロイン』
ノアが即座に検索する。
『物語において主要な女性人物を指します』
静寂。
白銀は少し考える。
そして。
『理解しました』
レンは嫌な予感がした。
『私はヒロインです』
「違う!!」
コメント欄が大爆笑した。
白銀「私はヒロインです」
作者「違います」
白銀「理解しました」
作者「理解してない」
気付いたら白銀がレギュラーになっていました。
こんなはずじゃなかったのに。
次回から旧東京編に突入です。よろしくお願いします。




