託される任務
ルナリアはサンロアと共に、荷物の積み降ろし作業をする。意外にもサンロアの力が強く、荷降ろしは順調だ。問題は、今もこちらを見張っている女性の存在だ。すぐにいなくなると思っていた女性は、予想外にもルナリア達の作業の様子を見守っている。これでは、施設内を探すことができない。
「あの?」
「ハイ?」
ルナリアは突然話しかけられ、わずかに声が上ずってしまった。不審に思われないか内心バクバクと心臓を波打たせながら、女性を振り向く。
「あなた方って……」
心臓の音が、さらに大きくなった。外に漏れだしてないか、不安になりながらも笑顔を崩さないようにする。
「エルフとローレルの民ですよね?」
「はい。そうです」
「わぁ!すごいなぁ!あ、すみません。魔術院にはエルフの方がいないので、珍しくって。それにローレルの民なんて、生まれて初めて見たので興奮しちゃって」
女性の言葉に、胸をなでおろした。同時に違和感を覚える。
「いえいえ、ローレルの民は珍しいですよね。しかし、エルフはこの街にもたくさんいますよね?ここにはいないんですか?」
「えぇ。騎士団の方と、街にはいるんですけどね。エルフの方々も魔術院にはいるんですけど、ここにはいないんです。ほとんどが地方にいる、支部に行かれてるみたいなんですよね。この建物には、人族しかいません。」
「そうなんですね……」
ルナリアの顔に浮かんでいる笑顔とは裏腹に。内心焦っていた。魔術院に行った同胞の話をよく聞いていたため、当然ここにもエルフがいるものだと思っていた。潜入しても、多少紛れられと思っていたが、人族のみの施設となると、自分とサンロアでは目立ちすぎる。
「なんで、人族だけなんですか?」
「私も最近配属になったばかりで、詳しいことは分からないんですけど」
女性は質問してきたサンロアの耳に、口を寄せる。
「どうも、この魔術院を支援してくれている方が、人族以外の種族が嫌いらしいんです」
「それは……」
サンロアの顔が青ざめる。その様子に気づいた女性は、悲し気に眉を寄せて続けた。
「お二人とも、お仕事を終えたら早くここから出た方が良いと思います」
「忠告ありがとうございます」
サンロアが、女性の手を固く握る。すると、女性の体から力が抜け、人形のように崩れ落ちそうになった。とっさに、ルナリアが彼女の体を支える。
「彼女は?」
「少し眠ってもらっただけ」
ウインクしながら、口に人差し指をあてる。チャーミングながら、もう一方の手には、小瓶が握られていた。
「サンロア少しまずいことになったわ。ここには、人族しかいない私たちでは、目立ちすぎる。だからサンロアに、頼みがあるの」
ルナリアは、女性を馬車の中で横たえた。服を脱がせ、上から布を被せる。その服をサンロアに渡した。
「サンロアの魔道具で、この人に化けられる?」
「できると思います」
「ごめんねサンロアこんな危ないこと頼んで」
心配げなルナリアに、サンロアは自分の胸を叩く。
「任せてください!」
ルナリアは、サンロアの腕を取り手をかざす。すると、サンロアの腕に五枚の花弁を持つ花の模様が現れた。
「この花が、すべて散るまでに戻ってきなさい。すぐにでも、逃げられるように私はここで準備しておくわ」
「はい!」
自分の腕を、見つめるサンロアを抱きしめた。
「無茶しちゃダメよ。少しでも危険だと思ったら帰ってきなさい」
「分かりました!」
サンロアはポケットから、十字架のネックレスを取り出し首にかける。たちまち姿が変わり、女性の姿に変わる。服を着替えたサンロアは、どこからどう見ても先ほどの女性と瓜二つだった。
「行ってきます!」
サンロアは、魔術院の中へと入っていく。心配そうに見送ったルナリアは、姿が見えなくなったのを確認した後馬車の中へと戻っていく。
「こっちもやることやらないとね」
ルナリアは、目の前で眠る女性を眺めながら呟いた。
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