ワイバーンと騎士になる使徒
老人と少女を保護ながら、トールたちの戦いを見る。他の候補者たちも見守るだけで、救援にはいかない。それくらい、目の前で繰り広げられる光景は常軌を逸していた。それは、戦闘というよりも蹂躙というのが正しい。咆哮したワイバーンは、両翼を羽ばたかせ、空へと距離を取ろうとする。二人は、以心伝心をこえた連携を見せる。何の合図なしにかかんだマオトの、肩にトールが足をかけ飛び上がった。迫りくるトールに、ワイバーンが口を開け、首を伸ばそうとする。しかし、顎に衝撃が奔り上へとのけぞる。衝撃の来た方向を見ると、投球を終えたピッチャーのような姿勢になっているマオトがいた。その足元には、トールを飛ばした時に砕けた地面の破片が転がっていた。
「空飛べるんだから、距離を取るならそうだよなぁ!」
トールが、ワイバーンの背にまたがった。
「俺が!ドラゴンライダーだ!」
自分の背中で、わけの分からないことを喚くトールを振り落とそうと体をよじる。振り落とされないようにしがみ付く。
「どうどうどうどう」
「トール!大丈夫か?」
マオトが、ニヤニヤしながら破片を握り締める。
「おい!やめろ!」
「見せてやろう。人類最古にして、最強の遠距離攻撃を!」
トールの制止の声を、聞こえないフリして振りかぶる。
「【脳筋闘法 青春ジャイロボール】」
マオトの手から放たれた石は、キィィィンという甲高い音を立てた。空気との摩擦でみるみる赤く染まっていく。その後、急に勢いよく飛んでいった。一筋の赤い閃光となって、ワイバンの翼を打ち抜いた。ワイバーンは、片翼に穴が開いてバランスを崩す。
「本当にお前ってやつは!」
トールが、ワイバーンの背中からさらに上へ跳びあがる。ワイバーンが、フラフラと落下した。その衝撃で、土煙が起こる。その中から、マオトが悠然と歩いてきた。ワイバーンは憎々し気ににらみつけ、首を持ち上げる。口を大きく開いた。開いた顎に、光が集まっていく。空気が焦げる音が聞こえてきた。炎を口から漏らし、マオトへと狙いを定める。マオトは、真正面から悠々と歩いた。決まる!そう思ったワイバーンの顔に影がかかった。
「【脳筋闘法 地蔵落とし】」
ワイバーンの頭めがけて、トールが落ちてきた。両足はしっかりと、ワイバンの頭を捉えている。地面との激突により、凄まじい轟音と衝撃音が響く。
「あ、やべ」
トールの間抜けな、言葉と同時にワイバーンのブレスが暴発した。二度目の轟音が響き渡る。赤く膨れ上がった炎と、黒い雲が空へと昇っていく。リット達は、慌てて爆心地へと走っていく。
「大丈夫か!無事なら返事しろ!」
リットの声が響くが、火の勢いが強い。
「―ぃ」
か細く遠くから声が聞えてくる。
「どこだ!」
「大丈夫でーす!」
力強い返事と共に、紅蓮の炎をかき分けるように二人が出てくる。
「よか……本当に大丈夫か?」
安堵に胸をなでおろしかけ、二人の姿を見て固まった。
「「鎧以外は大丈夫です!」」
鎧兜と褌のみとなり、鍛え上げられた肢体を惜しげもなく披露する変態騎士がそこにいた。
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