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エピローグ1

※とある人物による一人称視点です。



 私は成田なりた一郎いちろう。国内外の食材を中心に取り扱う、小さな商社の代表取締役を務めている者なのですが……。



『そうですか。そちらにも行ってませんか』


「はい。昨日の朝以降、連絡がつかない状況です。私もつい先程電話をかけてみたのですが、やはり、電波の届かない所か電源が入っていない……と」



 電話の相手は、当社に在籍する二人の社員うち、営業担当である木城くんの母親である典子のりこさん。若くして旦那さんを亡くされてから女手一つであの木城くんを育て上げた、大変立派な方です。



『そうですか。社長さん、うちのが迷惑をおかけして申し訳ありません! 全く、今頃どこをほっつき歩いているんでしょうかね……』



 気丈に振る舞っていますが、声の震えから不安な気持ちがにじみ出ています。



「確かに心配ですが、どうか心を強くお持ちください。こちらでも連絡がつきましたら、すぐにご連絡差し上げますので」


『すみません。どうかよろしくお願いいたします……』


「いいえ、こちらこそ……」


 最後の挨拶を交わし終え、私は受話器を置きました。大きなため息が、口から漏れてしまいます。



「………………」



 木城くんから電話があったのは昨日の朝、丁度今ぐらいの時間でしたか。何やら酷く焦った様子で、『トラブルに巻き込まれたっス!』と語っていました。

 その時は、珍しく寝坊でもしたのかな? ……などと暢気のんきに構えていたのですが、その後一向に連絡が無く、こちらから電話を掛けても繋がらない状態がずっと続いています。


 もしかすると、彼は本物のトラブルに、それこそ身の危険に関わるような重大な事件に巻き込まれてしまったのかもしれません。昨日の電話で詳細を聞き出せなかったのが今更ながらに悔やまれます。



「心配ですね。木城くん」



 警察に電話するべきかと電話機を眺める私に、女性の声が掛かりました。当社に在籍するもう一人の社員、事務担当の小鳥遊たかなし小梅こうめさんです。

 彼女は、私が妻の看病で前の会社を退職するその直前まで、私の部下であった子です。収入も待遇も決して悪くない、それなりに名の知れた会社であったのですが、何故か急にその会社を辞めてしまい、開業したばかりの会社とも言えない個人事務所であったここに転がり込んで来たのです。給料の保証も出来ないと言ったのですが、それでも良い、ここに入れて欲しいの一点張りでした。


 カチューシャにおかっぱ頭の可愛らしい娘さんですが、もう三十に近い年齢で、結婚したとの話も聞きません。その事について、彼女は『私はカレセンですから……』と言っていたのですが、カレセン……彼氏・・専用という事でしょうか? 個人的な意見を言わせて頂くと、その彼氏の方と早く結婚して幸せになって欲しいとは思います。ハラスメントになるので口にはできませんが。



「―――ええと、私の顔に何かついてますか?」


「いえ、すみません。少しボーッとしてしまったようです」


「そうですか。……お疲れなのかもしれませんね。熱いお茶でも淹れてきましょうか?」


「……そうですね。お願いできますか?」



 任せてくださいと彼女は席を立つと、給湯室――元々は酒屋二階の住居スペースであった台所に向かって行きました。



 彼女の言う通り、疲れているかもしれません。



 昨日は急に連絡の取れなくなった木城くんに代わり、彼が訪問予定であったお客様方に私から電話しました。彼が来れない理由は体調不良という事にしておきましたが、電話口に応じてくれた誰もが心配し、彼と会えない事を残念がっているご様子でした。

 彼の貢献を改めて知る機会になりましたが、それだけに、連絡がつかないこの状況をもどかしく感じてしまいます。



「木城くん、一体どこに……」



 事務所スペースとして利用している二階の窓に、亡き妻が眠る向かいの霊園が映ります。澄み渡るような快晴ですが、私の心は一向に晴れません。






 木城くんと知り合ったのは、妻の三周忌の帰り。思いの外お酒が進んでしまい、電車の吊革に掴まりながらも足元がおぼつかなかった所に、学ラン姿の彼が席を譲ってくれたのがきっかけでした。

 駅に着き、せめて気力が戻るまでとベンチで休んでいましたら、同じ駅で降りた彼がわざわざ私の所まで引き返して来たのです。



『ちょっと大丈夫っスか? 心配になってきたんで、自分、良かったら家まで送るっスよ。立てるっスか?』



 いやはや、今時珍しい親切な子だと感心しました。私は彼の小柄ながらもガッシリとした肩を借りて歩き出しました。


 その道中、彼が高校三年生であり、目下就職活動中である事と、それに苦戦を強いられている事を話してくれました。



『進学も勧められたんっスけど、ウチはビンボーなんで、どうしても奨学金、借金になってしまうっスよ。ねーちゃ……姉みたいな目標も自分には無いっスし、これ以上母の世話になるのも違うと思ったんで自分は就職しようと思ったんスけど……中々上手く行かないっスね』


『なるほど。それは大変ですね』


『実は今日も合同説明会に行ってきたっスけど、『子供は要らない、うちは即戦力が欲しい』……って。やっぱり学もタッパも無いから舐められるんスかね?』


『学はそうかもしれませんが、タッパは……どうなんでしょう? あ、その角は右に』



 大人しく自宅のマンションに帰るつもりでしたが、気が変わりました。私は彼をこの場所に――かつての酒屋のたたずまいをほぼそのままに残す、開業三年目でようやく軌道に乗り始めた私の会社に案内したのです。




『―――凄いっスね。日本じゃないみたいっス』



 一階の倉庫スペースに積まれた商材、食材を前に、彼は目を丸くしていました。目の前のカカオの実の納品先が個人のお客様で八十歳を超えるおじいちゃんだと伝えると、彼は声を上げて驚いてくれました。



『定年を迎えて退職すると、暇で仕方がないという方が多いのですよ。なので、暇つぶしの趣味の材料として、こうした珍しい食材は隠れた需要があるのです。作った物は大体口に入るので、場所に困らないのもポイントですね』



 途中のコンビニで買ったペットボトルの水を飲みながら、私はキラキラと目を輝かせる彼に説明します。お酒の酔いは、大分醒めていました。



『なるほど。って言うと、ここのお客さんはみんな高齢者なんっスか?』


『いえ、主婦や社会人の方もおりますよ。お陰様で少しずつ評判になりまして、最近では外食店や施設からの引き合いも頂いています。ただ、最近はそちらの方に時間を割かれ、個人のお客様には手が回らなくなってきておりまして。元々は趣味で始めたような仕事ですので、個人向けの事業は続けたいのですが……』


『え? 趣味で始めた……っスか?』


『はい。……私はこういう者でして』



 懐の財布の中から名刺を取り出し、学ラン姿の彼に差し出しました。



『なろうグローバルフーズ株式会社、社長――社長さんだったっスか!?』



 彼は目を見開いて驚きを示しました。



『ええ。社長と言っても従業員が私を含めて二人だけの零細ですが。まぁこれも、めぐり合わせですね』


『めぐり合わせ……』

 

『はい。私は妻の看病を機に前の会社を早期退職したのですが、妻が亡くなってからやる事が無くなりましてね。ふと、何か変わった物を作ってみようと思い立ちまして』


『それはご愁傷さまっス。それで、この会社を作ったって事っスか』



 腕を組んで頷く彼に、私は首を横に振りました。



『いえ、実際に作ったのはカレーでした』


『カレー……っスか』



 困惑したように目を白黒させます。当時から、分かりやすい子でした。



『はい。以前の商社に務めていた時のツテを頼って、スパイスを一から厳選して格安で掻き集めたのです。カレーを作るのに十分に集まったのですが、集まり過ぎてしまいましてね。それを消費するため、近所の老人ホームの台所を借りて調理して入居者の方達にお出ししました』


『スパイスを一からって……また凄いっスね。それ、自分も食べてみたかったっス』


『中々美味しくできて、好評を頂けたと思います。そしたら、施設の職員やデイサービスだけの比較的元気な方達から作り方を聞かれましてね。作り方以前にスパイスが一般の方には入手困難なルートで仕入れたものなので、どうしようかと思いまして』


『それで、どうしたっスか?』


『……君ならどうしますか?』



 私は彼に尋ねました。少しだけ、試す気持ちもありました。



『そうっスね。それなら自分で仕入れて、後で掛かったお金を頂く形にするっスかね』


『はい。私もそうしました。事前にお見積もり――どれくらいの費用が掛かるかの提示と同意は必要ですけどね』


『あ! 確かにそうっスね』


『その辺は追々(・・)……ともあれ、スパイスとレシピを納品したら大変喜ばれてまして、次は何か甘いものが良いと仰られましてね。私も興が乗り、なら今度はカヌレを作ってみようと思いまして、また一から材料を』


『サーセン。かぬれ、って何っスか?』


『洋菓子ですね。また今度(・・・・)ご馳走します。そんなこんなで仕入れを続けているうちに、私の自宅だと手狭になってしまいまして、ご覧の通り、かつて酒屋を借り受けて倉庫兼事務所として使い始めたのです。そこに従業員が加わり、その子があれこれと手を回してくれまして、今の会社の形になったのです。節税にもなるからと強く推されましてね』


『そういう事っスか。それで『めぐり合わせ』っスか。……深いっスね』


『私は人に恵まれたと思います。そんな私から一つ、君に提案があるのですが―――』



 そう言って、私は彼と目を合わせました。




『もし君さえ良ければ、私の会社に入社・・してみませんか? 個人のお客様向けの事業の継続に、君の力を貸して欲しいのです』




『社長さん……』




 彼は腕を組み、次のように答えました。



『けど自分、仕入れなんてやった事ないっスよ? 社長さんにも、かえって迷惑を掛けてしまうかもしれないっス』


『大丈夫です。最初は誰だって未経験者ですし、誰にだって失敗はあります。私もできる限りフォローします。少しずつ、ゆっくりと覚えていけば良いのです』



 私の回答に、彼の目が輝きました。



『自分、この会社に入りたいっス。社長さんの仕事を手伝ってみたいっス! こちらこそ、よろしくお願いしますっス!』



 勢い込んで頭を下げる彼の肩を叩き、私達は固い握手を交わしました。我が社に三人目の社員が誕生した瞬間です。


 その日は彼と別れて自宅に戻り、その週末に彼の自宅に伺いました。未成年者である彼の雇用に当たり、親御さんの同意が必要だったのです。実際には同意書の署名さえあれば問題ないのですが、大切なお子さんの身を預かる立場として、ご挨拶も兼ねてと考えました。


 そこで私は彼の母親である典子さんと会い、彼に父親がいない事実を知りました。



『―――私としては、できれば大学に行って欲しかったのですが。この子ったら言い出したら聞かなくて』


『かーちゃん! 自分はもう働ける歳っス! ウチは余裕無いんスから、そんな事に無駄金は使えないっス!』


『悠馬ッ! 私はあんたのために……ッ』


『木城くん。学費は自分への投資であって、決して無駄金などではありません。けれど、そうですね。今の君には、自分自身のために、具体的に何を学んだら良いかが見えていないのかもしれませんね』



 私の言葉に、母子は揃って顔を向けます。



『例えば、こうしてはどうでしょう。初年度はとりあえず当社の従業員として働いてみる。社会人の立場になって初めて学ぶ事も多いですからね。その中で将来の自分に何が必要かを考えて、進学先を決める。ただ漫然と働くのではなく、目的意識を持つのです。学費を貯める余裕もできるのではないでしょうか?』


『……それ、良いっスね。どうっスか、かーちゃん』


『……社長さんは、それで良いのですか?』



 私は当然、首肯を返しました。その時の典子さんの顔は、深く印象に残っています。私の密かな自慢の種です。


 翌年の四月に入り、高校を卒業した彼は、約束通り当社に入社してくれました。落ち着きがなく、まだまだ失敗も多いのですが、それを補って余りあるバイタリティがあり、熱意を持って取り組んでくれています。目標とした進学先についてもようやく方向性が決まり、それに向けての準備も着々と進めている所でした。



――――

―――



「社長。お茶が入りましたよ」


「―――ああ、ありがとうございます。頂きます」



 窓の外を眺めながら当時の記憶に浸っていた私に、お盆を持った小鳥遊くんが戻ってきました。机の上に湯呑みが置かれて私が口にすると、彼女は物憂げに尋ねます。



「社長。今日は午後からインドのラーヒーさんとテレビ会議でしたよね? けど、木城くんがいないとなると……」


「中止にせざるを得ませんね。分かりました。ラーヒーさんには私からメールしますので」



 ラーヒーさんは、メールのやり取りであれば英語で可能なのですが、会話となると現地のヒンディー語でしか出来ません。そんな彼とテレビ会議――会話が成立するのは、実は、木城くんの特殊な能力によるものなのです。


 初めに彼の異常さ(・・・)に気づいたのは、彼が電話に応じている所に私が戻った時でした。




『はいっス。あ、今社長が戻って来たっス。代わるっスか? ……了解っス。じゃあ要件だけ伝えておくっスね。はい、どうもっス』



 受話器を置いて彼が顔を向けてきました。



『社長。モンドディベッソのトニーさんって方から電話があって、この間の自家製モッツァレラを二キロほど補充したいって言ってるっス。どうしたら良いっスか?』


『……モッツァレラチーズですか? それなら三丁目の鈴木さんが作っているので、在庫があるか聞いてみますが』


『鈴木さんって、あぁ、あの! なら自分が電話してみるっス。データベースに入ってるっスよね?』


『ちょっと待ってください。その前に一つ聞きたいのですが―――』



 私は思い切って彼に尋ねました。直前の彼の言動には、明らかにおかしい点があったのです。



『先程のトニーさんとの電話ですが、日本語で(・・・・)喋っていませんでしたか? トニーさんは日本語を話せないと記憶しているのですが』



 そう。モンドディベッソ――三丁目でイタリア料理店を経営しているトニーさんは、日本語をほとんど話せなかったのです。英語であればある程度話せる方なので、私や小鳥遊くんであれば応対は可能。木城くんには少しハードルが高いと考えていたのですが。



『そういえば言ってなかったっスね。自分、相手が外人でも言ってる事が分かるし、自分の言ってる事も伝わるみたいなんっスよ。電話だと相手の目が見えないんで、ちょっと神経を使うっスけどね』


『…………ええと』



 彼の言っている事に、私は理解に苦しみました。とりあえず私は車に木城くんを乗せて鈴木さん宅でモッツァレラチーズを仕入れ、その足でトニーさんの店に向かいました。そこで、私は実に奇妙なやり取りを目撃したのです。



『なろうグローバルフーズっス! 連絡頂いた追加のモッツァレラチーズを持ってきたっスよ』


『オーサンキュー! セーリングウェルトゥデイソーアイブラナウトオブストック。アーユーザマンフーアンサードコール?』


『はいっス。とりあえず二キロで良かったっスよね? 一応あるだけ仕入れてきて、三キロほど持ってきたっス。在庫がなくなったなら多めに仕入れておいたらどうっスか?』


『マイトビーグッド。クッドユーギブミーアボリュームディスカウント?』


『全部購入で良いんで負けて欲しい……なるほどっス。社長。どうっすか?』



 互いに異なる言語での会話が成立していたのです。私がトニーさんに英語で尋ねた所、木城くんの言っている事も問題なく理解できるとの回答でした。


 私は興味を覚え、モッツァレラチーズの値引きと引き換えに、トニーさんの母国イタリア語で木城くんと会話してみる事をお願いしました。結果は変わらず。私にはほとんど分からなくなったトニーさんの発言に木城くんはしっかりと応じ、先程と同様に会話が成立しているようでした。



『木城くん。君は…………超能力者、だったのですか?』


『超能力者? 言われてみるとそうかもしれないっスね。けどそんな大したもんじゃないっスよ?』



 木城くんは笑って謙遜していましたが、この歳になった今でも言語の壁に苦労している私には実に羨ましく、凄まじい力に思えたのです。




――――

―――




「……おや?」



 インドのラーヒーさんへのメールの件もあってパソコンの画面に目を向けた所、一件の新着メールに気づきました。

 仕入先や納品先とはまた違うフォルダに振り分けられたそのメール。受信時刻は八時五十分、つい先程です。



「木城くんのお姉さんからですか。これは珍しい」



 木城聖子(さとこ)さん。木城くんとは二つ違いの、法学部に通う現役の大学生だったと記憶しています。私が木城くんの自宅に初めて伺った日、彼女もその場に同席していました。


 一言で言えば母親とは全く異なるタイプの大和撫子。黒いストレートの長髪に、細いジーンズを纏うスラリと伸びた長い足。何よりも印象的だったのは、心の内側さえも見通すかのような鋭い黒目。当時、彼女は何も語りませんでしたが、なぜか私の方が面接を受けている気分になったものです。


 そんな恐ろしい雰囲気を放つ彼女でしたが、彼女から見た私の印象は、決して悪くなかったようです。木城くんの就職以降、彼女から、弟の働きぶりや私の健康を心配するようなしっかりした文体のメールが、時候の挨拶と共に届くようになりました。



「けど件名を欠くとはまた珍しい。急いでいたのでしょうか? どれどれ……『前略、悠馬が事件に巻き込まれた可能性があります』―――?」


「社長ッ!!!」



 自席に戻っていた小鳥遊くんが、ガタリと音を立てて立ち上がります。



「木城くんが事件に巻き込まれたって、メールが」


「私にも届いています。しかし、何を根拠に彼女はそんな事を……」


「……添付ファイルは見ましたか?」


「添付ファイル、ですか?」



 私はオウム返しに尋ねます。メールには、確かにファイルが一つ添付されていました。動画ファイルのようですね。


 ダブルクリックで再生すると、幹線道路を上から見た映像―――恐らくは信号機に設置されている固定カメラから撮ったものであろう動画が流れ始めました。一体どこから彼女はこの動画を入手したのでしょう?



「これは、木城くんですか?」



 画面の奥、横断歩道の手前で、木城くんと思しき姿が自転車に跨った状態で、誰かと電話をしている様子が映っています。



「そうだと思います。次――この後です」



 いつの間にか小鳥遊くんが私の背後に立ち、同じ画面を覗き込んでいました。近づき過ぎて緊張感を孕んだ彼女の吐息が、私の耳に当たります。



「な!?」



 吐息を気にするどころではありませんでした。次の瞬間、動画の中で突然白い光が放たれ、横断歩道を渡っていた木城くんが自転車ごと消えてしまったのです!



「社長。どうしたら」


「……やっぱり警察に」



 私は震える手で受話器に手を伸ばします。それ(・・)が起こったのは、まさにその時でした。





 ―――バキッ! メリメリメリメリ……ッ!





 まず足元に振動を感じました。それを追うようにして外から硬い何かを引き裂くような音が聞こえ、窓辺に影が差したのです。



「…………これは」


「社長ッ!」



 窓の景色に、私は言葉を失ってしまいました。窓の外、対面の霊園の入口付近に、天にも届くような、巨大な大樹(・・・・・)が生えていたのです……。


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