タワー
「お……お客様。これはいつのまに?」
「すいません。マーガレットと佐藤さんがボウリングの話してコンビニのイートインコーナーでおでん食べてる間ですね」
佐藤は信じられないと言った様子だったが、急いで原田の元に報告へ行った。
「原田さん、すいません。先ほどのお客様なのですがお車購入したいとのことなのですが」
「は?ダメだよ。だめ。もうこっちのお客様と契約しちゃうよ」
原田はずっと南本を説得していた。愛人らしき女も買って欲しいらしく南本におねだりするがなかなか動かなかい。
こいつ本当にお金持っているのか?と疑問に思い始めたところでやっと南本が折れたのだ。
「あぁ、そうなのかい。あちらのお客さんもあの車を」
南本が天谷を見る。白のパーカーに紺のズボン、そして黒ドレスの外国人。謎すぎるが金の匂いは全くしなかった。
「君達、申し訳ないね。こっちが先に契約しちゃったんだよ」
南本が天谷の肩をポンポンと叩く。
「君達は背伸びしないでもう少し身の丈に合った車を選んだほうがいいかもしれないなぁ」
南本は天谷にそう言って元の席に戻った。勝ち誇ったかのような顔を見せている。隣の女もニヤニヤと馬鹿にしたような目線を送ってくる。
原田は構わず契約を続ける。
「それで南本様、五年ローンでご契約でよろしかったでしょうか?」
「あぁ、かまわんよ」
原田が書類にハンコを押そうとする瞬間だった。
「ちょっと待ってください!」
佐藤さんが南本の腕を掴む。ハンコと書類の間は数センチでもう少しで契約成立するところだった。
「なんだ佐藤、邪魔するなよ。もう少しのところで契約成立なんだから」
「すいません、原田さん。でもちょっと聞いてください。彼らは今現金で3000万用意してきています」
「え?」
原田はその事実を受け入れることは出来なかった。
「本当か?契約欲しさにウソ言ってるんじゃないだろうな」
原田が【契約欲しさに】と言っているのは、同じお客さんが同じ車種を欲しがった時にもしキャッシュでお金を用意できるお客さんがいるならそちらを優先させるという社内ルールがあるからだ。
「この短時間でキャッシュで金を集めるだと?そんな事不可能に近いだろ」
原田を机をドンと叩いて立ち上がる。
「あの車は3000万だぞ。ウソだったら承知しないからな」
佐藤は急いで紙袋を運び、彼らの机の上に札束の山を置き始める。
ドンドン高くなる札束タワーに眼を丸くしていく原田と南本、そして連れの女。
1000万のタワーが3本立ったとき、彼らの顔は青覚めていた。
新規連載はじめました
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