応援
パァンという銃声とともに、各馬が一斉にスタートした。
俺とマーガレットは固唾を飲んでレースを見る。再び競馬場全体が大きな熱気で包まれる。
「いけー!!!!」
「明日の生活かかってんだ、こっちはよー」
色とりどりの声援?を聞きながら自分の賭けた馬の場所を確認する。
8と1はかなりいい位置に来ている。上位グループの集団で走っている。
しかし、俺が1着予想した14と19はどちらも後ろの方だ。
「おい、マーガレット本当に緑の帽子だったんだよな?」
「えぇ、そうだと思いますが……あまりにも一瞬で過ぎ去ってしまったので……」
えぇ?ちょっと自信なさげになってきてる?大丈夫?
「俺はお前を信じるよ」
天谷は冷静な振りをしてマーガレットを安心させた。内心ビクビクしていたのだが。
レースは最終コースを曲がり、横一線の馬群から8と1が飛び出している。
「よし、2着予想した馬と3着予想した馬が前に出たぞ!あとは14か19がきてくれれば」
14、19はまだかなり後ろの方にいる。力を貯めているのか?
「すいません。天谷様、私また変なこと言ってしまったのかもしれません」
「何言ってるんだ!見たんだろ?緑の帽子を飾った騎手が1着でゴールするのを。俺はお前を信じてる」
実際に信じているのは自分が立てている仮説なのだが。
天谷はマーガレットのスキルに対して概ね理解が出来てきたと感じている。
その自信があったのだ。
レースの様子を不安げに見つめるマーガレット。彼女は今、ただ祈っていた。自分が見た未来の通りになるように。祈りながら目を瞑っていた。
その時、会場全体の熱気がまた一段と高くなった!
「ほら、見てみろ!マーガレット!目を開けろ!おまえの未来映像は紛れもなく本物だぞ!しっかり見ようぜ!」
14番の馬が大外から一気に加速してきたのである。
「おい、すごいぞ。あの馬。全然人気なかったのに急に出てきやがった」
「やめろ、やめてくれ!」
周りのおじさん達が騒ぎだす。
天谷達が賭けたこの馬はあまりにも人気がなかったため、競馬場全体がどよめきに包まれる。
横にいるマーガレットを見る。不安そうに祈っている。目をつむり大好きなはずの馬を見ていない。
なんだ?さっきまであんなに楽しんでいたのに……!?
俺が賭け事に巻き込んでしまったからなのか……?
女の子にこんな表情させたらダメだよな。
天谷はマーガレットの心配そうな表情を変えたかった。
「おい!マーガレット!そんな辛気臭い顔してないで、応援しようぜ!」
「え?なんでですか?……どういう事ですか?……今天谷様はほぼ全財産かけているのですよね?怖くないのですか?私の戯言を信じて全財産賭けて……」
「まだ、そんなこと言ってんのか。ここは競馬場だ!自分の賭けた馬応援して、楽しむのがここでの礼儀なんだぜ!」
礼儀……その言葉にマーガレットは弱かった。
気弱そうに祈っていたマーガレットの目の色が変わった。
「行くのですーー!!!!14番のお馬さん!!!」
マーガレットは立ち上がり叫んだ。心の底から、腹の底から。
「よし!いいぞ!俺も負けてられねぇ!」
2人は声を大にして加速する14の馬を応援した。
「いけぇぇぇ!!!!!」
「頑張ってくださいーーーー!!!!!」
グングン伸びる飛行機雲のように、14番の馬は加速を続ける。
「ヌケェェェ!!!!」
「いけぇぇぇ!!!!」
14の馬は頭一つ分先頭に立った。
「「そのままま一気にいけぇぇぇ!!!!」」
14番の馬はラストの直線で全ての馬を抜き去り、颯爽とゴールラインを通過した。
「「やったあぁああああ!!!!!」」
前の電光掲示板に着順が表示される。
1着 14
2着 8
3着 1
マーガレットの予言が当たった。
天谷はマーガレットのスキルを利用することに初めて成功したのである。




