第二十三話 翔馬『君に伝えよう。彼女から告げられたこと』
秋からずっと考えてることがある。
姫様に僕の『過去』を語ることを、
姫様が過去生の記憶を思い出しかけるのは実は今世が初めてではなく、ここ数回何度となくあった。だから僕は気付いていたんだ。
──この繰り返しがもうすぐ破綻することを、
語ることに意味は無いかも知れない、ただの自己満足かも知れない、けれど、今世は誠実に彼女と向き合いたいから、だから、
「姫様、あなたに告白したいことがあります」
伝えよう。長く暗い喜劇のような僕らの悲劇を、
「……つまりあんたには九十七回の過去生の記憶があると」
白姫に二人っきりにしてもらったサロンで、ざっくりと僕の繰り返しを語ったところいぶかしげに姫様が呟いた。
「はい……荒唐無稽なことですよね」
僕も初めの何度かは自分の妄想かと思ったもん。
「でも……ねぇ、あんた最高で何歳まで生きたの?」
「え……十七歳、高三の秋まで……ですね」
初めの僕が一番長生きだったんだよね。
「……信じるわ」
……え、
「……秋、うっすら浮かんだ記憶……そこに大人になったあんたはいなかった。……代わりに兄様の……兄様達の」
「姫様! それは思い出しちゃ駄目だ!」
あんな残酷なことを!
「……ええ、そうね。……だってこれは起こらなかったことになっているんでしょう?」
「……多分、そうです」
きっと断片が僕の中にあるだけのもし、消しゴムで消された未来。
「だから良いわ……あんたが今の私を見てることもわかるし、ね?」
そして姫様は照れ臭そうに笑って、この話はおしまいと言った。
「……え、あー、はい」
今の、っていうか、
「は? ……何、まさか過去の私を透かして見てると?」
しまった! うっかり余計な疑念をっ!
「いえ! っていうより……姫様は何時も変わらず最強で最高なんで……初めてあった時からずっと」
むしろ相違点がほぼ見つからないと言いますかっ!
「? つまり私はいつでも私なのね?」
「はい! いつでも家族思いで友人思いな優しい姫様です!」
ほんと、もっと僕を見て欲しいくらいに!
「……なら良いわ」
ツーンとそっぽを向き頷く姫様……え、もしかして、
「……まさか過去の自分にヤキモチをっ!」
超可愛いんですが僕の思い人!
「調子に乗るな!」
真っ赤な頬が僕の想像が事実だと証明してますよね!
「エヘヘ、はい! すみません!」
あー、もう大好きですっ!
運動会の振替休日、白姫から呼び出された。首をひねりつつ圓城寺邸に向かうと、
「あれ? 姉ちゃん達も呼び出し?」
姉ちゃんと岸元三兄弟がいた。
「いらっしゃいませ、ささっ、お好きな席に、苺大福もありますよー」
「え、あ、うん、いまちゃんありがとう」
そこで苺大福うまー、と、食べていたところ、
「え! 一玻さんも僕と同じく前世の記憶が!?」
新妻な一玻さんが僕と同じ能力を持っていることが判明しました。そして、
「僕と違ってよその世界から? それもこの世界を元にしたゲームがある世界から?」
それって……、
「……はい、紗々蘭から聞きました。……多分かー君の一代前のお姉さんと同一世界からです」
「だよね!? ……え、でもあれ? なんか時間が……」
「あー、この世界と私の前世の世界の、時間の流れるスピードは結構違うんです。……ここみたいにやり直している世界は早回しで、前世の世界みたいに確定してる世界はゆっくりと、なので」
「へえ、そうなってるんだ……あ、じゃあもしかして一玻さんが前世言われた『協力者』?」
「? 前世? 言われた?」
「あ、うん、なんか前世世界を壊した人が『次回はこういうのに向いてる人が来る』とか言ってたから」
でも協力されてないよなー、と、首をひねってると、
「世界壊した? え、どういうことですか?」
一玻さんに真顔で問われたので、前世のあの人との会話等を語ったところ、
「あのど腐れ魔王! 何しやがってんだ!」
一玻さんがものすごくらしくない悪態を……ご両親や旦那さん、主さんもびっくりしてます。
「え、あの、一玻さん?」
「……あ、失礼……ちょっと因縁ある同僚の不始末を聞いたもので……ふふ、うっかり汚い言葉を……失礼いたしました」
そう言って頭を下げた一玻さんの笑顔がものすごく怖かったので……全会一致で触れないことにしました。……ど腐れ魔王って、
そして続けて一玻さんが語った内容とは……、
え、一玻さんや先代姉ちゃんと同一世界からもう二人来てる? しかも一人は姫様の周囲? え、そして一玻さん僕と姫様の繰り返しをゲームで?
……ええと、色々ツッコミたいけどとりあえず、
姫様の近くの転生者さん!
敵じゃないですよねっ!?
……もう波乱とかいらないんですよっ!




