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第三章 伝承

【第三章 伝承】ーーーーーーーーーーーーーーーー


 圭介の葬儀の夜、淳は祖母の部屋に呼ばれた。

 ランプの薄明かりの下、皺だらけの顔はひどく険しかった。


 「……お前、沼を見てしまったのか」


 問いかけに言葉を失う。どうして祖母がそれを知っているのか。

 祖母は低く呟くように語り始めた。


 ――あの沼は、もとは村人が水を得るための場所だった。だが百年以上前、疫病が広がり、人々は“病を持つ者”を沼に沈め、神に贄を捧げた。以来、沼は村を守るものとされ、誰も近寄らなくなった。


 「贄は、姿を変えて沼に棲みつく。覗き込んだ者は“自分の影”を見せられるのだよ」

 祖母の声は震えていた。

 「その影に囚われれば、やがて沼に還される。……お前の父もそうして消えた」


 初めて聞かされた父の失踪の真相。

 小さい頃から「事故だった」としか聞かされていなかった。

 だが祖母の瞳は、嘘ではなかった。


 「淳。次はお前の番かもしれん」

 その言葉は、胸に杭のように突き刺さった。




#ホラー小説

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