3/7
第三章 伝承
【第三章 伝承】ーーーーーーーーーーーーーーーー
圭介の葬儀の夜、淳は祖母の部屋に呼ばれた。
ランプの薄明かりの下、皺だらけの顔はひどく険しかった。
「……お前、沼を見てしまったのか」
問いかけに言葉を失う。どうして祖母がそれを知っているのか。
祖母は低く呟くように語り始めた。
――あの沼は、もとは村人が水を得るための場所だった。だが百年以上前、疫病が広がり、人々は“病を持つ者”を沼に沈め、神に贄を捧げた。以来、沼は村を守るものとされ、誰も近寄らなくなった。
「贄は、姿を変えて沼に棲みつく。覗き込んだ者は“自分の影”を見せられるのだよ」
祖母の声は震えていた。
「その影に囚われれば、やがて沼に還される。……お前の父もそうして消えた」
初めて聞かされた父の失踪の真相。
小さい頃から「事故だった」としか聞かされていなかった。
だが祖母の瞳は、嘘ではなかった。
「淳。次はお前の番かもしれん」
その言葉は、胸に杭のように突き刺さった。
#ホラー小説




