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エルフの王女にフラれたので、辺境の荒れ地を最強の要塞都市にしてみる 〜日本刀と行政チートで始める他種族スローライフ〜  作者: 神楽坂 響


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第44話:総合戦闘実習と、エルフ王女が見た圧倒的な剣技

学園生活編第44話では、王立学園の巨大な半野外演習場を舞台に「総合戦闘実習(魔導剣術および実践戦闘実習)」が描かれます。前回の模擬市場演習に続き、今度は実技の授業でアランがその真価をほんの少しだけ発揮します! 新相棒である「霊刀・虚空」を手にし、極限まで抑え込まれたボディコントロールと全属性同時圧縮エンチャントによって、風すら起こさずに魔導ゴーレムの芯を完璧に両断するアランの圧倒的な剣技。その底知れぬ実力を目の当たりにしたエルフの王女シルフィリアや貴族令嬢クラリスたちの驚愕と、金髪メイド・ルミアの冷静なツッコミによる絶妙な掛け合いをお楽しみください。

【年齢:13歳(王立学園編)】

王立学園の敷地内にそびえ立つ巨大な半野外演習場は、授業の開始を告げる鐘の音とともに、生徒たちの熱気と緊張感に包まれていた。

本日の科目は「魔導剣術および実践戦闘実習」。剣術、体術、そして魔法の制御力を総合的に競い合う、武門の生徒たちにとっては腕の見せ所となる一大実技である。

演習場の中央には、魔導の硬化処理が施された頑丈な戦闘用ゴーレムが何体も並び立っていた。一般の生徒であれば、全力を絞り出してようやく表面に傷をつけられるかどうかという代物である。

特待生クラスの生徒たちが観覧席や待機エリアに陣取る中、担当教官が太い野太い声を響かせた。

「これより実技演習を開始する! 自分の得意とする流派の剣技、あるいは魔法付与(エンチャント)を組み合わせて、目の前のゴーレムをいかに美しく、かつ効率的に無力化できるかを見せてもらう!」

教官の合図を受け、最初に名乗りを上げたのは名門貴族グランツ家の令嬢、クラリス・フォン・グランツだった。

彼女は薄い赤色のエアリーな巻き髪を優雅に揺らしながら演習場の中心へと進み出ると、サファイアブルーの瞳を鋭く光らせて愛用の細身剣を抜いた。

「我が家に伝わる流麗なる剣技……見せて差し上げるわ!」

クラリスの全身から気高い闘気が立ち上り、剣身に鮮やかな炎の魔力が纏わされる。彼女は一瞬で踏み込み、無駄のない連続突きでゴーレムの胸元を正確に穿った。

ズドン、と重い音を立ててゴーレムの表面に深い亀裂が走り、周囲の生徒たちから「おぉ、さすがグランツ家の剣技だ!」「見事な魔力制御ね!」と感嘆の声が上がる。

クラリスは満足げに胸を張り、上品な笑みを浮かべながら引き下がった。彼女の心には、「前回の財務演習の雪辱を、この実技の場で少しでも果たして見せたわ」という心地よい達成感があった。

その様子を観覧席の隅から穏やかな笑みで見守りながら、アラン・クロフォードは静かに自身の腰元に視線を落とした。

彼の左腰には、深淵のような黒と無色の聖光を宿す日本刀――『霊刀・虚空』が静かに納められている。

(――ふむ。クラリス殿の剣技とエンチャントの精度は、確かに貴族として相当な鍛錬を積んだものであることが分かりますね。ですが、実戦や過酷なサバイバル環境においては、いかに無駄な魔力消費を抑え、一撃の密度を極限まで高めるかが勝負の分かれ目となります。……そろそろ、私の番ですね)

教官に呼ばれ、アランがスラリとした身のこなしで演習場の中心へと歩み出た瞬間、周囲の空気がわずかに引き締まった。

特待生クラスの中でも、アランの普段の物腰はあくまで「品行方正で爽やかな美少年紳士」である。そのため、彼がどのような剣を振るうのか、クラスメイトたちの視線が一斉にその背中に集まった。

特に、観覧席の前方に陣取っていたエルフの王女シルフィリアは、銀髪を微風になびかせながら、エメラルドグリーンの瞳を細めてアランを凝視していた。

(……あいつ、普段はあんなに丁寧でビジネスライクな態度をとるくせに、こういう実技の場ではどんな剣を見せるつもりなのよ……!)

演習場の中央に立ったアランは、周囲に威圧感を放つような大げさな気合を入れることもなく、ただ自然な姿勢のまま、左手の指先で『霊刀・虚空』の柄にそっと手をかけた。

彼の脳内では、前世の公務員時代に培った効率化脳と、辺境の森で師匠ガロウから叩き込まれた「ボディコントロール」の極致が瞬時に起動していた。

(――出力制限、全体の二割。火、水、風、土、光、闇の六属性を極限まで薄く、かつ均等に圧縮し、刀身のミクロな魔導回路へ完全同調させます。……よし、エネルギーロスはゼロです)

呼吸と動作が完全に一致したその瞬間。

アランの姿が、ふと周囲の視界から「消えた」。

音すらなかった。爆風も、地面が砕ける衝撃波すら一切起きない。

ただ、漆黒の刀身が鞘走り、空中で一閃の軌跡を描いた――そのように見えたのは、ほんの一瞬の出来事だった。

カキィン、と澄んだ金属音が遅れて響き渡る。

アランはすでに静かに刀を納めており、その場に何事もなかったかのように真っ直ぐ立っていた。

しかし、彼の数歩後ろにそびえ立っていた、頑丈な魔導硬化処理が施されているはずの巨大な戦闘用ゴーレムの様子が、明らかに異なっていた。

――ギィィ……ン……。

ゴーレムの胴体の中央に、寸分の狂いもない真っ直ぐな亀裂が走る。

次の瞬間、その巨大な上半身がスライドするようにズレ落ち、轟音を立てて左右真っ二つに地面へと崩れ落ちたのだった。

演習場全体が、まるで時間が止まったかのように完全な静寂に包まれた。

教官は目を見開き、口を半開きにしたまま動かない。観覧席にいた生徒たちも、何が起きたのかを理解できず、ただ崩れ落ちたゴーレムの断面をぽかんと見つめていた。

「いま……、何が起きた……?」

誰かの呟きが、静まり返った空間にぽつりと落ちた。

風すら起きなかった。周囲の砂埃すら舞っていない。ただ、眼前のゴーレムの芯だけが、あまりにも鋭く、あまりにも精密な一撃によって分子レベルで両断されていたのだ。

その圧倒的な技術の格の違いを誰よりも早く、そして正確に理解したのは、観覧席の最前列にいたエルフの王女シルフィリアだった。

彼女のエメラルドグリーンの瞳が、驚愕と恐怖で限界まで見開かれていた。

(――嘘……でしょう……?)

シルフィリアの脳裏で、天才大魔法使いとしての知識と分析回路が激しく悲鳴を上げる。

(詠唱がなかったのは当然として……あの短い抜刀の瞬間に、全属性の魔力を極限まで圧縮し、刀身の構造と完全に同調させていた……? そんなの、人間ごときにできる制御じゃないわ……! 一歩間違えば自分の肉体や神経が焼き切れるほどの超高負荷のエンチャントを、あんなにも平然と、涼しい顔でやってのけたっていうの……!?)

シルフィリアの背筋を、冷たいものがスッと駆け抜けた。

自分がこれまで誇りにしてきた天才的な大魔法の才能や知識が、あの少年の圧倒的な「無駄のなさ」と「精密なコントロール」の前に、まるでちっぽけな砂細のように色褪せていくのを感じたからだ。

「……あんなの、反則よ……」

シルフィリアは両手を自分の胸元で固く握りしめ、唇を噛み締めた。

「あんな底知れない実力を隠し持っていながら、普段はあんなに丁寧で、私にはただの事務的な挨拶しか返さないなんて……! 私のことを、いったい何だと思ってるのよ……!」

悔しさと、言い知れない圧倒感に胸を激しく揺さぶられながらも、シルフィリアの瞳からアランの姿をどうしても外すことができなかった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

実習棟の少し離れたテラスの陰から、その一部始終を静かに見つめていた一人の人物がいた。

美しい金髪の長髪を夕風に揺らしながら、専属メイドのルミアは上品に息をついた。

「……おや、おや」

ルミアは淡々としたトーンで、しかしどこか面白がるような響きを込めて呟いた。

「あの方の剣技と魔導制御は、もはや学園の生徒という枠を完全に超越していらっしゃいますわね。あんな化け物じみた実力を目の当たりにしてしまっては、殿下がどれだけお怒りになっても、勝てる見込みは永遠にやってこないでしょうに」

その言葉に、隣に立っていたシルフィリアはカァッと顔を真っ赤に染め上げ、バッとルミアを睨みつけた。

「だ、誰が勝負するなんて言ったのよ! 別に私はあいつに勝とうとなんて思ってないわよ!」

「あら、そうですか? 先ほどから『私にはただの事務的な挨拶しか返さないくせに!』と、お顔をトマトのように真っ赤にして地団駄を踏んでいらっしゃったのは、どこのどなたでしたかしら?」

「っ――! それは、その……!」

図星を突かれたシルフィリアは言い返す言葉を見失い、耳まで真っ赤にしながらプルプルと震えた。

ルミアはそんな主人の様子を優しく、しかし冷徹な現実を突きつけるような目で見つめながら、静かに懐からパンフレットを取り出した。

「……ですが、殿下。あのような規格外の御方を振り向かせたいとお思いでしたら、モヤモヤと地団駄を踏むだけでは一生お気持ちは伝わりませんわ。幸い、まもなく『星祭りのダンスパーティ』が開催されます」

ルミアの言葉を聞いた瞬間、シルフィリアの心に新たな闘志の火が灯った。

「そうよ……! ダンスパーティがあるわね……! あんな風にいつも涼しい顔をして私を『その他大勢のクラスメイト』扱いするあいつに、今度こそ私の存在を強烈に焼き付けてやるんだから……!」

圧倒的な剣技を見せつけたアランと、それに刺激されてさらに恋とプライドの炎を燃え上がらせるエルフの王女。

王立学園の日常は、近づく一大イベントに向けて、かつてない熱気を帯びて動き出していくのだった――。

第44話をお読みいただき、ありがとうございます!

今回は、総合戦闘実習を舞台に、アランが「霊刀・虚空」とボディコントロール、全属性同時圧縮エンチャントを駆使して見せた圧倒的な無双劇をお届けしました! 風すら起こさずに魔導ゴーレムを両断するアランの姿と、それに激しく動揺するエルフ王女シルフィリア、そしてメイド・ルミアの冷徹かつ愛ある正論ツッコミはいかがでしたでしょうか。

次回、第45話では「14歳の誕生日・星祭りのダンスパーティ & 迎えに行く誓いの爆誕」を描いていきます!

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