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エルフの王女にフラれたので、辺境の荒れ地を最強の要塞都市にしてみる 〜日本刀と行政チートで始める他種族スローライフ〜  作者: 神楽坂 響


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第29話:十歳児、ダンジョン「死者の回廊」にて完璧な紳士としてスマートに無双する

『エルフの王女にフラれたので、辺境の荒れ地を最強の要塞都市にしてみる 〜日本刀と行政チートで始める他種族スローライフ〜』第29話をお届けします!

ガロウの昔語りから「エルフの防衛本能」を独自の方向で深く学んだアランは、さらなる「完璧な紳士」への高みを目指しつつ、実家凱旋と領地開拓の資金を稼ぐべく高難度ダンジョン「死者の回廊」へと足を踏み入れます。新相棒『霊刀・虚空』の真価が発揮される、スタイリッシュかつ圧倒的なダンジョン攻略回を今回もたっぷりとお楽しみください!

【年齢:10歳(少年期・ロードトリップ編)】

うす暗い洞窟の入り口を抜けた先には、冷え切った空気が淀む、広大な地下回廊が広がっていた。

周囲の壁面には規則正しく魔導灯のブラケットが取り付けられているが、何十年、あるいは何百年もメンテナンスを放棄されているらしく、内部は不気味な青白い光と深い闇に包まれている。ここが、周辺の冒険者たちが「死者の回廊」と恐れる高難度ダンジョンであった。

「――ふむ。湿度はやや高めですが、空気の循環ルート自体は奥の風穴へと繋がっているようですね。構造的な欠陥こそあれど、ダンジョンとしてのインフラ設計は悪くありません」

私は腰に差した漆黒の刀『霊刀・虚空』の柄にそっと右手を添え、まるで高級ホテルのロビーでも歩くかのような優雅な足取りで石畳を踏み締めた。その物腰は、これから危険な魔物の巣窟へ踏み込む少年とは思えないほど、圧倒的な落ち着きと気品に満ちていた。

少し離れた場所を歩いていたガロウ師匠は、私のその完璧なまでのポーカーフェイスと姿勢を見て、やれやれといった調子で鼻を鳴らした。

「おいおい、アラン。お前な、ダンジョンに足を踏み入れた瞬間に施設の換気やインフラの心配をする冒険者なんてのは、世界中探してもお前くらいなもんだぞ。もう少しな、こう……古来からの緊張感ってやつを持ったらどうだ」

「ご心配には及びません、師匠。緊張と弛緩のバランスを最適にコントロールすることこそ、プロフェッショナルな紳士の基本です。それに、私の身体と神経系は常に動的リソース配分によって最高のパフォーマンスを発揮できるように調整されています」

私が涼やかな笑みを浮かべてそう答えると、ガロウは呆れたように肩をすくめた。

だが、その黄金色の双眸の奥には、私の圧倒的な戦闘準備が整っていることに対する深い信頼の色が浮かんでいるのが見て取れた。

私たちが石造りの回廊を進んでいくと、やがて前方から、冷気を纏った異様な足音が響いてきた。

ガタン、ゴトン……と、重苦しい金属や骨が擦れ合うような音だ。

「――お出ましだな。雑魚の群れにしては、少しばかり数が多いか」

ガロウが低く呟き、臨戦態勢に入る。

暗がりの向こうから現れたのは、朽ち果てた鎧を纏い、青白い炎を眼窩に宿したアンデッドの群れ――『スケルトン・ナイト』と、その従者である低級の魔物たちであった。数にして十体以上。不気味なうめき声を上げながら、錆びついた剣や槍を掲げて私たちへと殺意を向けて突進してくる。

普通の冒険者であれば、この薄暗い回廊で数体のアンデッドに奇襲されれば、それだけで陣形を乱し、致命的なピンチに陥るだろう。

だが、私の前世の公務員脳と、徹底的に鍛え上げたボディコントロールにかかれば、このような状況は「処理すべき一過性の事務手続き」と同義であった。

(――よし、ここは新相棒『霊刀・虚空』の実戦テストを兼ねて、周囲の美観を損なわないスマートな処理を心がけましょう。余計な血飛沫や壁の破損は、事後清掃のコストを増大させるだけですからね)

私は無駄な力みを一切排除し、重心を極限まで地面に沈めた。

同時に、私の全身から無色の聖光を纏った「全属性同時圧縮エンチャント」が静かに、だが爆発的な出力で解き放たれる。火の爆発力、水の流麗さ、風の加速、土の重厚さ、光の直進性、闇の吸収――六つの属性が、私のミリ単位の魔力誘導によって完全に統率され、『霊刀・虚空』の漆黒の刀身へ吸い込まれていく。

音もなく、私は踏み込んだ。

「――初陣の儀、二段回廊、『虚空一閃』」

カチリ、と澄んだ金属音が静寂を切り裂く。

私の姿は、肉眼では捉えられないほどの神速の残像となって、群れのど真ん中をすり抜けた。

風圧ですら周囲の埃を巻き上げない、極限まで削ぎ落とされた無音の斬撃。

私が十体のスケルトン・ナイトの隙間を完璧な軌道で通り過ぎ、静かに納刀の動作を完了させた――そのコンマ数秒後。

ポロリ、と。

襲いかかってきたすべてのスケルトン・ナイトたちの胴体や武器が、寸分違わぬ滑らかな断面を描いて綺麗に崩れ落ちた。分子レベルで均等に両断された彼らは、自分が破壊されたことすら理解する間もなく、ただの白い砂塵となって消えていく。

周囲の空気が、再び完全に静まり返った。

「……相変わらず、えげつねぇ切れ味だな。お前のそのエンチャントと刀の相性は、化け物クラスだぜ」

ガロウは腕を組んだまま、感心したように低い声を漏らした。

私はふうっと優雅に息を吐き、乱れていない髪を軽く手で整えながら、涼やかな微笑みを浮かべた。

「ありがとうございます、師匠。『霊刀・虚空』の黒金鉄ベースの魔導回路と、私の動的リソース配分による出力制御が見事に噛み合いました。武器のポテンシャルを100パーセント引き出すことに成功しています」

心の中では、

(――よっしゃあぁぁぁーーーっ! 見たかこの完璧な処置速度! モブのアンデッドどもを誰一人として壁や天井にぶつけることなく、一瞬で無力化したぞ! これぞ行政処理能力と剣術の完全融合……! 新相棒のカッコよさが天井を突き抜けている……最高だ……っ!)

と、マッハの速度で脳内ガッツポーズをキメまくっていたが、外面のペルソナは微塵も崩れていない。この「内心のオタク的狂喜乱舞と、外面の完璧な紳士的ポーカーフェイスの二重構造」こそが、現在の私の最大の武器であった。

私たちはそのままダンジョンの深部へと歩みを進めた。

回廊の奥に進むにつれて、空気はさらに冷たくなり、壁面に刻まれた古代の魔法陣が怪しく青く発光し始める。ここからは、単純な魔物の群れだけでなく、高度な魔導トラップや、ダンジョンの深部に眠る「お宝(換金アイテム)」が眠るエリアへと突入する。

「おっ、アラン。あそこの壁の隅を見てみろ。なかなか値が張りそうな代物が転がってるぜ」

ガロウが顎でしゃくった方向を見ると、崩れかけた石造りの祭壇の脇に、古びた宝箱と、魔導エネルギーを帯びた数個の「星屑の魔石」が無造作に転がっていた。

周辺には、かつてこのダンジョンに挑み、そして命を落としたであろう冒険者たちの遺品や、かつての文明が残した高度な魔導具の破片が散らばっている。

私はすかさずその価値を冷静に分析した。

(――あれらの星屑の魔石は、王都の魔導ギルドに持ち込めば一つあたり金貨数十枚の価値がある……! さらに、あの宝箱の形状と封印の紋様からして、内部には高純度の魔導金属や、希少なスキル書が眠っている可能性が高い。これらをすべて回収すれば、男爵家の当面の債務を返済するだけでなく、領地開拓用のインフラ資金としても十分に釣り合いが取れる……!)

内心でウハウハと札束の計算をしながらも、私の態度はあくまで紳士的かつ慎重であった。

「流石は高難度ダンジョンですね、師匠。経済的リターンの期待値が非常に高い。しかし、これだけの宝が放置されているということは、周囲に何らかの防衛トラップが仕掛けられている可能性が高いと見るべきでしょう」

私のその冷静な分析の直後――。

私の足元で、微かに魔法陣の光が明滅した。

「――おっと」

私は即座に重心を移動させ、無駄な筋力を使わずにふわりと後方へ跳躍した。

次の瞬間、私たちがいた足元の石畳から、高熱を帯びた魔法の炎の槍が激しく噴き上がった。もし少しでも反応が遅れていれば、お洒落な衣服が焦げていたところだ。

「ほう、足元の魔力変動を瞬時に察知して回避したか。流石だな、アラン」

「基本のボディコントロールと、周囲の魔導回路の微弱な予兆感知を常時リソースに組み込んでおけば、このような初歩的なトラップなど行政の事前審査のようなものです」

私は軽やかに着地し、何食わぬ顔でホコリを払う。

そして、そのトラップの魔導回路の構造をちらりと観察し、構造上の弱点を見抜いた上で、懐から取り出した小さな魔導工具を使ってわずか数秒で回路を物理的に無効化した。

「よし、これで安全に回収できますね。師匠、宝箱の開け前をどうぞ」

「お前なぁ……完全に冒険者というより、有能な査察官の動きだな」

ガロウが苦笑しながら宝箱に歩み寄り、豪快にその蓋をこじ開けた。

中から現れたのは、淡い光を放つ美しい魔導結晶のネックレスと、極めて純度の高い『竜血のインゴット』であった。どちらも、一般の市場ではまずお目にかかれない超絶レアアイテムである。

私はそれらを丁寧に回収し、傷つかないように専用の収納ポーチへと美しく収めた。

(――完璧だ。武力、知力、そして経済的収益のすべてにおいて、今回のダンジョン攻略は想定以上の黒字を生み出している。これだけの資金力があれば、借金まみれのアルフレッド兄さんの胃を完全に救済し、男爵家を秒速で再建することができる……!)

脳内で完璧な実家凱旋のシミュレーションを繰り広げながら、私は再び背筋を伸ばし、紳士の微笑みを浮かべた。

「さて、師匠。最奥部にはこのダンジョンの主(ボス)が控えている頃合いです。今日のスケジュールは順調に消化できていますので、このまま一気に片付けてしまいましょう」

「ああ、そうだな。お前のその気合の入った(あるいは別の意味で楽しそうな)顔を見てると、ボスの奴らが少し不憫になってくるぜ」

ガロウが豪快に笑い、私たちはさらに深く、ダンジョンの暗がりへと歩みを進めていく。

新相棒『霊刀・虚空』を携えた10歳の少年剣士による、圧倒的で優雅なダンジョン無双の幕は、まだ始まったばかりであった。

第29話をお読みいただき、ありがとうございます!

いよいよ本格的に始まった高難度ダンジョン「死者の回廊」の攻略編!新相棒『霊刀・虚空』を用いた初陣の戦闘描写と、アランの「元・公務員脳による効率的なダンジョン攻略・財政試算」のコンボをお届けしました。

どんなに危険なダンジョンであっても、内心ではモフモフや実家の再建、そして紳士としての美学を全力で追求しながら、外面は完璧な美少年紳士をキープし続けるアランのギャップを楽しんでいただければ幸いです。

ダンジョンの最奥で待ち受けるボスとの戦いへと物語はさらに加速していきます。次回もどうぞお楽しみに!

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