火竜襲来!(短編)
そんな楽しい日々が続いて10歳になりました。
そしてその時に事件が起こりました。
近くの火山に住む火竜がフレイム公爵領を襲ってきたのです。
「くっ、火竜とは・・我が属性と相性が悪すぎる!すぐに領民を避難させるんだ!」
火竜は火山の溶岩にも耐える皮膚を持つため、火属性に絶対的な耐性を持つのです。火属性を得意とするフレイム公爵家とは相性が悪いのだ。火竜は近くの牧場で牛や羊を襲っていたため、公爵が治める大きな街への到着に時間を要した。
「牛などで満足して帰ってくれれば助かったのだがな」
住民の避難は終わっていないが空を飛ぶ火竜のスピードは速い。
城壁から目視できる距離まで向かってきたとき、火竜の前に立ちはだかる者が現れた。
「クククッッ!我が父の治める領地を荒らすとは不届きな!このフレイムマスターが倒してやろう!」
あーははははっっ!!!!!
シオンの高笑いが響いた。
「ば、バカッ!!!!逃げるんだ!!!!!」
公爵は叫んだがシオンには届かない。
火竜は足元から炎を出して飛んでいる物体に興味を持った。
空は自分の領域だという様に、いきなりブレスを吐いた!
「ふっ、愚かな・・・」
シオンは手を前にかざすと目の前で火竜のブレスが消え去った。
「なっ!?火竜のブレスを防いだ?いや、かき消しただと!?」
多くの兵士が公爵と同じく城壁の上でシオンと火竜の戦いを見ていた。
『なんだ?この者は今何をした???』
火竜は自問自答をしながら再度ブレスを吐くが何度やっても炎は消え去ってしまった。
この原理は単純で、風魔法で真空状態を目の前に作っただけである。
火は空気がないと燃えない。
現代科学の常識である。
しかも少し空気を無くすだけで、強力な炎であればあるほど酸素を使い、あっという間に消え去るのだ。
さらにシオンはCO2やCOといった特定の空気をも操れる様に成長していた。
真空状態以外にも二酸化炭素を発生させて炎を消すこともできるのだ。
(酸素があっても二酸化炭素が多いと火は消えるんだぞ☆)
そして逆に『酸素濃度』を上げることで、より強大な炎を生み出すことも可能となった。
前世の中二病で勉強した知識である!
「さて、もういいよね?死ぬ覚悟はできたかな?」
ギランッとシオンの視線に恐怖を覚えた火竜はプライドも誇りも捨てて逃げようとしたが、シオンはそうはさせなかった。ロケットブーストで回り込むと火竜の退路を塞いだ。
「逃さない!己の愚かさを知るがいい!!!」
シオンは両手を火竜に向けて叫んだ。
「私はこの世の全ての炎を統べるフレイムマスター!私の前に全ては灰燼と化す!受けてみるがいい!本当の炎というものを!」
シオンの両手から竜の形をした炎が2頭放たれた!
!?
「シオンちゃん、火魔法で炎の竜を作り出したぞ!?」
城壁の上から兵士の声が上がった。
火の魔法の名家であるフレイム公爵家。
昔から炎を生き物の形にする術はあった。
鳥の形にして自由自在に操ったりなど。しかし、炎の形を変化させる術は火の魔術師の【秘奥義】とも言われる技であり僅か10歳の子供が扱えるわけがないのだ。
普通なら
「どこまで耐えられるかな?」
シオンの放った炎の竜は交互に火竜にまとわりつく様に当たっていき火竜を大きな炎へと包んだ。
そして高速で回転させて炎の丸いドームを作り上げた。
「ギャラリーも多いし、ここで必殺技の登場よね♪」
小さな声で呟くと、酸素濃度を上げていった。
すると炎のドームの色が蒼色に変わり『蒼炎』と呼ばれる炎となった。
「な、なんだ?蒼い炎なんて見たことないぞ!?」
兵士の声が聞こえるが公爵だけは文献で存在だけは知っていた。
通常の炎より高温で塵も残さず全ての物質を燃やし尽くすと言われる伝説の炎である蒼炎を。
「・・・まさか我が娘がここまでの天才とは」
自分の娘の才能に畏怖の念すら感じる。
今はただ見守ることしか出来なかった。
そしてシオンは突然魔法を止めた。
ドームの中にいた火竜はそのまま地上へと落ちていった。
ドシーーーンッ!!!!!
大きな音ともに火竜は地面へと落ちた。シオンはそのまま火竜の側に着地すると生死を確認した。
「流石に真っ黒になっているが原型を留めているとは、さすがは火竜といったところかな?」
火竜の直接の死因は焼死ではない。実は窒息死なのだ。
流石の火竜でも息ができなければ死んでしまうようだった。
街ではお祭り騒ぎになった。
領主であるフレイム公爵の長女が、火属性に絶対の耐性がある火竜を炎の魔法で倒した事はすぐに国中に知れ渡ることになる。
とある場所にて───
「おいっ!大変だ!火竜がでたぞ!」
!?
「何だって!」
「マジかよ!?」
宮廷魔術師の研究塔に速報が入った。
宮廷魔術師は高い地位がある代わりに、国の緊急時には必ず出動しなければならない。
「何人死ぬかな………」
宮廷魔術師には戦闘の得意な者と研究者体質で戦闘が苦手な者がいるのだ。しかし緊急時の出撃には関係なく動員されるのである。
一部の宮廷魔術師は悲壮感を出している。
「どこに出たんだ!指示は?」
一部の者は動じず冷静に状況を確認した。
「出現場所はフレイム公爵領です!」
「最悪だな。火属性の名家に火竜とは」
火竜との相性が悪いと誰でも知っている。
間に合うのかと。
「いえ、そうではなく!その火竜が倒されたのです!火属性の魔術師に!」
!?
「「はっーーー!??」」
宮廷魔術師の声がハモった。
「バカな!どうやって!?」
「詳しくはわからない。ただ炎の魔法で黒焦げになった火竜が研究のため送られてくるそうだ」
「マジかよ!」
「早く見てみたわ♪」
ワイノ
ワイノ
多くの宮廷魔術師が色々と話していると1人の人物が尋ねた。
「そう言えば、どんなヤツが倒したんだ?」
「そこまでは聞いていないが・・・」
その時続報が届いた。
「大変だ!火竜を倒した人物が判明したぞ!」
「本当か!?」
「これは新しい宮廷魔術師の誕生かな?」
「そうだな」
宮廷魔術師になるには基本的には年に一度の試験に合格しなければならない。
だが例外もある。
国のために素晴らしい活躍をした場合だ。
「それでどこの誰なんだ?」
「そ、それがフレイム公爵家の長女シオン・フレイム様が討伐したそうです!」
「おいおい、マジか?その話は?悪いが貴族のプライドの為に話を盛っているんじゃないのか?」
貴族のやり方を知っている者が悪態をついた。
「いや、城壁の上から多くの兵士が戦いを見ていたんだ。嘘じゃないみたいだ」
「なんだと!本当なのか?」
また宮廷魔術師のテンションが上がった。
「流石は火属性の名家だな」
「どんな魔法を使ったんだろうな?火の絶対耐性を持っていた火竜に」
「確か、蒼い炎を使ったと報告にあったな?」
!?
「「まさか蒼炎かっ!?」」
宮廷魔術師にもなると伝説的な魔法にも精通している。多くの者が驚きの声を上げた。
「早くシオン様、来てくれないかな!」
「ああ、是非ともこの目で見てみたいな!」
一部の者が盛り上がっていたが冷静な声が響いた。
「いや、すぐにここに来るのは無理だろう」
「なんでだ?1人で火竜を倒した英雄だぞ?宮廷魔術師にスカウトされるだろう?」
伝令に来た者は重たい口を開いた。
「だってシオン様はまだ10歳なんだぞ?」
シーーーーン!!!!!
その場が静かになった。
「「嘘だろ!?」」
何度目かの声がハモった。
「天才か……?」
「そう言えば少し前に爆炎の魔法少女って噂になっていたな」
「あ、聞いた事ある!空を飛べるのでしょう?」
「本当にマジかよ。天才を超えた大魔導士じゃないか?」
「『爆炎の大魔導士』か。なかなか良い通り名じゃないか」
こうして宮廷魔術師達の期待値が上がりつつ、シオンの名声も上がっていくのだった。
ハックション!
「ズズッ、誰か噂しているわね」
火竜の討伐の後、父と母から大変怒られたシオンは涙目で謝るのだった。
「しかーし!この程度でへこたれる私ではないのだ!」
懲りないシオンであった。
「このフレイムマスターが世界を救ってやる!魔王でも邪神でもかかってこーい!アーハハハハッッ!!!!」
今日もシオンの高笑いが響き渡るフレイム公爵領なのでした。




