危険物?
シオン達は新しい洗髪剤について話し合うことになった。この世界では石鹸で髪を洗うぐらいしかなく、髪はぱさついていたのだ。それを貴族は香油を塗って艶を出していたに過ぎない。しかしそれでは髪を傷めるし余りよくない。
そこにこのトリートメントの登場である。
「これは効果が高すぎる。世の中に出すと戦争すら起こしかねないものだ」
「そうなんですよ。王族から献上しろと圧力がかかるのが目に見えて分かります」
う~ん、と悩む。
「あ、それならしばらくは量産に努めて、僕が隣国に留学に行くってのはどうかな?」
「留学ですか?」
「ああ、隣国にはフレイム公爵の親戚が住んでいてね。確か同じ学年で隣国の王族が通っているんだ」
!?
「隣国を巻き込んで、この商品を独占できないようにすると?」
「うん、下手をしたら交易品になって、戦争が起きる可能性があるからね」
いきなり、私のトリートメントはヤバい品物に変わっていたようだ。
前世の日本ではもっと良いやつがあったが、こっちの紛い物の商品の方がより性能が良さそうなのは、異世界仕様だからですかね?
こんなもので戦争だなんて意味がわかんないよ!
「シオンちゃんはまだこの商品の凄さをわかっていないようね?」
「え~と、そんな事はない・・かな?」
「女性の美に対する執着をわかっていないわね?」
シオンはズルズルとお母様に別の部屋に連れて行かれて、女性の美に対する執着と執念を叩き込まれました。
「これが戦争の引き金になる可能性を理解した?」
「ハイ!リカイシマシタ………」
部屋に戻ってくると話を再開致しました。
「確かに自慢したいけどしばらくは我慢するわ」
お母様もことの重大さに気付いて我慢してくれます。
「ただの人間が女神様のように美しくなるなんて、君はシオンの薬で本当の女神になったんじゃないか?」
「あら♪いやだわあなた♪ぽっ」
はいはい。ご馳走様。
子供の前でイチャイチャしないでください!
「でもお兄様がいなくなるのは寂しいね」
「嬉しいこと言ってくれるね。大丈夫、一年の短期留学だから。それに──」
「あ、お兄様の婚約者探しも兼ねているのですね」
「そういうこと。正直、国内の相手ではメリットが少なくてね」
「シオンママ、婚約者って?」
ハクアが聞いてきたので考えて答えました。
「う~と、ハクアというかワイバーンで例えるなら番を探すってことよ」
「なるほど。よくわかった。お兄様がんばれ」
「あ、ああ、ありがとう?」
なんかよくわからない上から目線のマウントを取ってくるハクアを置いて、隣国について聞きました。
「そうだな。我が国であるアーク・ロード王国は大陸でも宮廷魔導士が有名だ」
国中から選ばれた一騎当千の魔導士たち。
ってか、うちの国ってアーク・ロード王国っていうんだ。
初めて知ったよw
(入学試験などで勉強はしたはずなんですけどね)
「隣国はローゼン王国、国力はほぼ同等で、向こうは芸術に力を入れている国だ。薔薇も有名でな、魔導士より剣術主体の騎士を育てているが、友好国で今まで国同士のぶつかり合いはない」
なるほど。
フレイムマスターの私は魔法主体だから剣術はできないのですよ。
(えっ、そうだったの!?)
「まぁ、どっちが強いかなんて個人の強さによるから、今は置いておこう。文化レベルでもそんなに差はないしね」
「だからそちらの、他国同士の婚姻も貴族では珍しくないのですね」
「ああ、これから他国に売り出す商品によっては、向こうにある家の力を借りる方が得だと思ったんだよ。でも、政略結婚だとしても、せめてお互いを尊重し合える相手なら嬉しいかな?」
私の義姉になる方ですもの。しっかりと見定めてあげないとね?
クククッッ!
「取り合えず短期留学の話を学園にして来年の春先ぐらいに向こうに行くよ。新学年と同じタイミングでね。シオン、サンプルは多めにもらえるとありがたい」
「お任せください!定期的に送らせてもらいますよ」
「ありがとう」
「シリウス、まだ先の話だが気をつけていってくるんだぞ?我が家を恨んでいるものは多いのだから」
「ええ、肝に銘じます」
護衛は多めにつけましょう。
「長期休みに入ったら観光がてらに行ってみたいです!」
「うん、楽しみにしているね」
こうして効果の高すぎるトリートメントを売り出すために、シリウスの留学が決まったのだった。
どこの世界でも女性の美に対する執念は怖いと知ったシオンなのでした。
いや、まじでみんなただの洗髪剤のトリートメントで戦争が起きるっていうんだもん!




