中二病が発病しました。(末期なので諦めましょう)
シオンの魔法指導は上級生にも取り入れ、魔導学園全体の底上げに繋がりました。
「シオン君の考案した指導方法は素晴らしい!教師である私の魔力も向上しました。普通は十代から二十歳までが魔力の伸びる時期だと言うのに、50代の私の魔力までも上がるなんて画期的過ぎます!」
「フォフォフォ、確かにそうじゃな。上の2期生、3期生なども新入生の1期生に負けられないと、より励んでおるようじゃし、シオン君様々じゃの」
「ええ、今まで以上に実力をつける生徒が出てきているので、来月の学年合同の実践研修では大番狂わせもあるかも知れません」
教師達に大好評のシオンはいつも通り教室で勉強していると──
「シオンさん、これ教えて欲しいのですが・・・」
「僕も一緒にいいかな?」
「私が先よ!」
多くのクラスメイトに囲まれて大人気でした。
今の所、完璧な公爵令嬢モードが浸透していた。
しかし──
夕方、みんなが帰った教室で──
「クソッ、忘れ物するなんてついてないぜ」
レオは明日の授業で使う参考書を机に忘れた事に気づき戻ってきたのだ。
教室の前につくと中から物音がしたのに気づいた。
『なんだ?まだ誰かいるのか?』
教室の扉を横に引くと・・・!?
シオンが苦しそうに床に膝をついて倒れていた。
「なっ!おい大丈夫か!?」
レオは駆け寄ったがシオンは手で制した。
「ハァハァ・・・大丈夫・・よ」
とても大丈夫そうには見えなかった。呼吸を乱し、大量の汗をかいている状態だ。
「大丈夫じゃねぇだろ!せめて保健室に──」
そう言い掛けたとき、シオンの身体から黒い炎が湧き上がった。
!?
「くっ!少し離れていて!」
いつもとは違うシオンの様子にレオは無意識に数歩下がった。
「我が内に眠るフレイムマスターの魂よ。我の言霊を聞き静まりたまえ・・・」
シオンの身体から湧き上がる黒い炎はシオンが呪文を唱えると少しずつ収まっていった。
「今のはいったい・・・」
「みんなには黙っていてね。私の身体には世界を滅ぼせるほどの力を持ったフレイムマスターの魂が宿っているの」
「フレイムマスター?」
「そう、フレイム公爵家が建国当時に封じたという強大な『何か』の魂よ。時々、体内に溜まった魔力を発散させないといけないのだけど、最近はそれができて無かったから油断したわ」
「お前は、シオンは大丈夫なのか?」
「おかげさまでね。通常より魔力が多い恩恵も受けているし、生涯こいつと付き合っていくしかないから」
さてと、シオンは立ち上がるとレオに言った。
「これを取りに来たんでしょ。机の上に置きっぱなしだったわよ」
参考書をレオに渡した。
「もう遅いし、帰りましょう」
レオはシオンの少し悲しげな顔を忘れる事ができなかった。
そして先に出ていこうとするシオンの手を掴んだ。
「おい!魔力を発散させるってのは、魔法をぶっ放せばいいんだろう?」
「え、ええそうね」
「なら俺が、ときどき魔法を受けてやる。だからもう一人で無理をするな!」
シオンはレオの言葉に笑った。
「ふふっ、何よそれ」
「お、お前、俺は心配して──」
シオンはレオの唇に人差し指を当てて言った。
「わかっているわ。ありがとね。でも私の本気の魔力を放つと貴方が消滅しちゃうから、フレイム公爵家の領地で発散するから大丈夫よ。でも──」
「なんだよ?」
「たまには放課後の『私の』特訓に付き合ってもらおうかな?」
ドキッ!
不意打ちの笑顔にレオは照れた。
「ま、まぁ、たまにはならな」
こうして二人は揃って校舎を出るのだった。
そして──
「私は飛んで帰るから、また明日ね!」
「おう!」
軽い爆風と共にシオンは飛んで行った。
「マジで飛べるって羨ましいな」
シオンを見送ったレオもそのまま帰宅するのだった。
シオンは飛びながら笑っていた。
「すべて計画通りに行ったわ!アーハハハハッッッ!!!!!」
計画とはこうである。
先生の手伝いで遅くなったシオンは机にレオの忘れ物を見つける。窓の外からレオが戻ってきているのを見つけて、今回の計画を立てたのだ。自分の中にフレイムマスターの魂を封じているという演出をするために!!!!!
黒い炎も演出の一つである。
一部の鉱石を燃やすと黒い炎が一瞬燃えて現れることを、研究の末に見つけたシオンは普段粉末を持ち歩き、自分に振りかけて黒い炎の演出を思いついたのだ!
最近はフレイムマスターモードになれずストレスが溜まっていたシオンちゃんは、ストレス発散の機会を伺っていたのである。こういう無駄な事に手を抜かないのが中二病の恐ろしさなのである!
こうしてシオンのフレイムマスターごっこは次のステージへと進むのであった。
(いやマジで何をやっているんでしょうね。このシオンちゃんは)by作者より




