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追放された悪役令嬢、宇宙に飛ばされたら最強でした ~中身は35歳社畜なのに、口が勝手にお嬢様になるんだが~  作者: 多々太
【第2部】辺境の魔女

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「商売は順調ですわ(根性で乗り切ってる)」

 宇宙に放り出されてから、数ヶ月が経った。


 宇宙に朝も夜もないが、ステーションの時間帯に合わせて動くことで、なんとなくリズムができてきた。ステーションが動き出す時間に採掘へ出て、市場が活発な時間帯に精製品を持ち込む。それが俺たちの一日だ。


 寝泊まりは船の中だ。宿泊費はかからない。術力を動力にしているから燃料費もほぼゼロ。


 ただ、宇宙の物価は高い。食料も水も、ステーションで買えば想像以上に値が張る。手続きのたびに手数料が取られる。税金の名目でも取られる。特にシャワーと浴場の使用料が痛い。


 ジャンクはその辺を気にしない。三日に一回入れば十分らしく、あまり問題にしていない。


 俺は気にする。元日本人として、清潔でいることは譲れない一線だ。


 ナイラも同様で、定期的に洗濯をして、服も買い替えている。


 そして不思議なことに、蓮華の着物は汚れない。採掘をしても、宇宙空間に出ても、気づいたらきれいになっている。


(闇術の作用なのか、この体がそういう仕様なのか。どちらにせよありがたい)


 コーヒーは今では普通のものを飲んでいる。グレイヴヤードにいた頃の泥水とは別物だ。


 鉄と銅の精製は月契約で安定しているが、単価が低い。術力の回復速度に上限があるから、一日に出せる量にも限りがある。宇宙は売る時に足元を見てくる。買取業者はどこも安く買いたがる。


 ただ、蓮華の口が容赦しない。相手が値踏みしてきたと判断した瞬間、威圧オーラと合わさって半分脅迫に近い交渉になる。それで何とかなっている。


 たまにレンカガネが出る。そういう日は手持ちが一気に増えて、全員の気分が上がる。


 金は、それでもなかなか貯まらない。


---


 その日の採掘で、いつもと違う岩に当たった。


 手を触れた瞬間、感触が違う。二種類の何かが混ざっている。


 一つは濃い灰色で、ずっしりとした手応えがある。触れると術力がじんわりと反応してくる。


 もう一つは金色に近くて軽い。なめらかで、光をよく反射する。


「ジャンク、二種類出てきましたわ。濃い灰色で重いものと、金色に近くて軽いものですの」


「灰色の方、術力に反応する感じはあるか?」


「ええ」


「魔鉄だ」


 ジャンクの声のトーンが変わった。


「魔力が長い年月をかけて染み込んだ鉄だ。普通の鉄より格段に丈夫で、術式との相性もいい。採掘でそう簡単に出るものじゃない」


「金色の方は?」


「戻ってから確認させてくれ」


 船に戻ると、ジャンクがサンプルをしばらく丁寧に調べた。重さを量って、表面を指で触れて。


「……魔鉄は間違いない。金色の方は」


 一拍置いた。


「オリハルコンだ」


 P-0が補足する。


「オリハルコンは魔鉄が形成される環境に極めて稀に混在する金属です。金の数十倍の価値があります」


 沈黙が落ちた。


 ジャンクが先に口を開いた。


「売らない」


「は?」


「船の装甲に使いたい。魔鉄とオリハルコンを組み合わせれば、耐久性が桁違いになる」


 静かだが、揺るぎない。


「売れ」


 ナイラが腕を組んだ。


「出来高でやってきたが、そろそろボーナスが欲しい」


「わたくしも意見がありますわ」


 全員が俺を見た。


「オリハルコン製の剣が欲しいのですわ。男なら誰でも一度は憧れるでしょう。あの輝き、あの切れ味、手にした者だけが感じられる重さ。かっこいいでしょう」


 沈黙。


「……女だよね」


 ジャンクが静かに言った。


「女ですね」


 P-0が補足した。


「どう見ても女だ」


 ナイラが断言した。


(わかってる。でもかっこいいものはかっこいい)


「わたくしが男か女かは些細なことですわ。オリハルコンの剣のかっこよさとは無関係でしょう」


「些細ではない」


「些細ではございません」


「そこは同意する」


 三人の意見が珍しく一致した。


「P-0、今の資金状況は?」


「率直に申し上げて、余裕はございません」


 静寂が落ちた。


「……売るか」


 ジャンクが言った。


「船は後でいい。まず生活できないと話にならない。オリハルコンはまた採れる。たぶん」


「たぶんですの?」


「採れたんだから採れるだろ。たぶん」


 ナイラが立ち上がった。


「決まりだ。売りに行く」


---


 鑑定スキル持ちの業者の前にサンプルを置いた。


 業者の目が変わった。


「……オリハルコンか。どこで採った」


「企業秘密ですわ」


「二十万円出す」


「オリハルコンが金の数十倍とご存知でしたら、そのご提示は少々」


 口が動く。いつも通りだ。


 最終的に値段が決まり、ジャンクの分も含めて清算した。


「剣の積立を始めますわ」


「積立?」


「オリハルコンが採れるたびに、少しずつ取り分けておきますの」


 ジャンクが少し考えた。


「……俺も船の分を積み立てていいか」


「もちろんですわ」


 ナイラが呆れた顔をした。


「お前ら、気が長いな」


「男のロマンはいつか手に入れますわ」


「お嬢様、よろしいですか」


 P-0が言った。


「なんですの」


「剣と船の積立目標額を計算しました。現在のオリハルコン採掘ペースが続いた場合、お嬢様の剣が完成するまでおよそ十四年、ジャンク様の船の装甲強化はおよそ二十二年かかる見込みです」


 沈黙が落ちた。


「……ペースを上げますわ」


「採掘量は術力の回復速度に依存しますので、現状では難しいかと存じます」


「オリハルコンがもっと採れれば」


「確率の問題ですので、こちらも制御が困難です」


 また沈黙が落ちた。


「それと本日の口調の乱れは六回でございました。先月より二回増えております。はしたないかと存じます」


「……善処いたしますわ」

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