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お笑いとラブコメは混ざりますか?~ゲラなヒロインとスベる俺が青春を沸かす話~  作者: たーたん
第一章 東高等学校はじまり編

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9話 世の中否定系魔王、憂いのナイトメア

 家に帰ると真っ先にパソコンを起動してゲームするのが日課だけど、今日は帰宅中も今も、ずっとスマホの画面を見続けていた。


 ――あの後、白井さんから、『わらおー会スマホ支部』というグループチャットに誘われた。

 もちろん、わらおー会のメンバーしかいない。白井さん、ファナさん、女子ここさんがいて、そこに俺が控えめに入室すると、すぐにファナさんと女子さんはスタンプで歓迎してくれた。


 こういう女子じょしだけの集まりに入るのなんて初めてだけど、暗黙のルールとかあるのだろうか……即レスとか、既読無視はダメとか。女子ならではの何かが。


『わ~! 先輩だ~。ファナ、いっぱいお話したいです! 先輩はゲーム好きですか? 今イクシリオン・アルファっていうカードゲームにハマってまして、ランキング10位内目指して頑張ってるんですよ~!』


 ファナさんは顔文字、絵文字を多用し、文字自体がキラキラしてて、そしてめちゃくちゃ喋る。

 普段は口下手で物静かな第一印象だったけど、チャットや好きなことにだけ舌が回る、俺のようなオタク気質な雰囲気を感じる。


『センパイ、今日から仲間だけどよ、男子に聞かせられない話するかもって変な想像してたりしたら、女子代表として容赦しねぇからな』

『しません! お手柔らかにお願いします……』


 女子さんはスタンプこそ使うが、基本文字だけで口調そのまんまで喋っているように聞こえてくる。チャットでもブレない口調。

 それと、女子代表として容赦しねぇはわざとなのか口癖なのか。

 反応しなくちゃいけない通過儀礼だったらちょっと困る。


『わらおー会の連絡とか、お笑いのことの共有の場にしたかったんやけどなあ』


 笑、と白井さんがメッセージを流すと、


『オレらの親睦の場として必要だろ?』

『うん、もうそれでええかなって思てる。もうおしゃべり会でも』


 と三人が軽快な息の合ったテンポで次々と会話が流れていく。

 こうなってから俺はいつ画面を閉じていいのかわからなくなってしまった。

 女子三人の会話をリアルタイムで見てるだけでも楽しいなんてよこしまな考えでいる。

 それに、誰も見てないから存分に笑えるのもいい。

 遠慮なくあの場でも笑えばよかったんだろうけど、どうしても恥ずかしさと緊張が勝って表情に出せなかった。


『そういえば梶くん、下の名前なんて言うんですか?』

『オレは伊ケ崎女子いがさきここって名乗ったぞセンパイ。自分だけ梶だけで済ますなんて不公平だ。名乗れ』

『ファナも知りたいです~! あ、そうだ! ファナはですね、ファナ・アギ―って言います! 日本にずっと住んでますけど、パパもママもイギリス人なんですよ~。ファナ、見た目は貴族っぽいってほのちゃんにからかわれるんですけど、中身はただのゲーム廃人です!w 英語は喋れませんww』


 ファナさんは爆笑しているアニメキャラクターのスタンプを連投する。


『あ、ちょいまち! いいこと思いついた! みんなで梶くんの名前予想せえへん?』


 晩ご飯を食べ終わっても続く会話は、俺の名前予想へと切り替わった。


『梶くんも参加してみてください!』


 白井さんの思い付きでイベントが始まる。

 

『僕が僕の名前を予想するんですか? 自分に対してボケる……感じですか?』

『そうそう! まだ名前知らない今しか遊べませんよ! でも、いじる感じになるからいやだったら言ってください! そこはもう遠慮なく!』

『ぜんぜん大丈夫です、やってみます』


 どんな名前を言われるのだろうか。

 そっちの方に興味津々だった。


『やった!』

『よっしゃ! センパイ、ノリいいじゃねえか。やるならそうだな、みんなでぽいか、ぽくないかを言い合おうぜ!』

『こーちゃん、それ採用!』

『わ~~! 急に緊張してきた! お題だお題~!』


 こうして白井さんの突発的提案によって俺の名前当てゲームが始まる。


『じゃあ、うち、こーちゃん、ファナち、最後に梶くんの順番でいこ!』

『よし、こいや!』

『じゃあ言い出しっぺのうちからね』


 と白井さんはメッセージを送ったあと考えているのか時間が空いた。

 この間誰も喋らず、次の白井さんの言葉を待っている。

 ドキドキしてくる。白井さんが俺の名前でボケようとしている。

 一体なんて言うのだろう。


『梶名人』

『ぶは! 名人!? なんのだよ!』

『ナヒトって読みます』

『あはは! 銀髪クールなイケメンぽい……。我は梶名人カジナヒト。連射とRTAの王だ。とか、言いそうです』

『名人なのかナヒトなのか、わからねえとこもイイな! ぽいぽい!』


 女子さんが採点すると、ファナさんも『ぽい!』と評価する。

 俺は白井さんの回答がおもしろくて笑っていて、近くにあった枕を叩いていた。

 こんな姿は誰にも見せられないのだけど、なんだよ名人って!

 『ぽいです(笑)』と笑いを付けると『あはは! いえーい! 梶くんの(笑)もらった!』と白井さんは喜んでいた。


『じゃあオレな!』


 次に女子さんが答える。


『梶キマグロ!』

『んー、これはぽくない』


 と白井さんが即返すと、ファナさんも『言いたかっただけでしょ~! ぽくないよ~、食べ物です!』と突っ込む。


 その通りなんだけど、食べ物です! って言い切るファナさんに俺の腹は捻じれてきて痛くなってくる。

 俺も『ぽくないですね』と反応すると、女子さんは『んだよ~~』と決して怒るわけでもなくただ残念がっていた。

 自然な提案と会話の流れとツッコミ。

 たぶん、こういったことを日常的にやっているのだろうなと想像できた。


『はい! 梶り虫!』


 次いでファナさんが答えた。


『それオレに引っ張られたよな? だからぽい!』

『さっきからw 梶くんを人間にしてあげて! 厳しめに……ぽくない!』

『ですね……、僕一応人間ですので。ぽくない、で』

『わーん! でもぽい一つゲット~!』


 ファナさんは泣き顔の絵文字を送ると、白井さんと女子さんは笑っているスタンプで返事をする。


『それじゃ、正解を梶くんどうぞ!』


 そうだった、俺も参加するんだった。

 待たせるわけにはいかない一心で思い浮かんだ名前を入力して送信する。


『ナイトメア梶です』

 

 すると反応は一瞬で返ってきた。


『あははは! 梶くんは苗字じゃなくて名前だったんや! うわははは! ぽいぽい!』

『闇の王だったのかよ! ぽいじゃん!』

『わーっ、ぽい~です! 黒髪赤目の世界否定系魔王だ! 腹黒~w』

『あーお腹痛い!! 梶くん責任取ってください!』


 う、ウケたのか? なにこれ楽しい!


『おい、ほのかとオレのお腹をなでなでしろ!』

『なでなで~』


 ファナさんが言葉で優しくお腹を擦る。


『えっと、なでなで、なんて……』


 便乗するように間を置かず、俺も”なでなで”と送信してみた。

 打つだけで緊張した。


『あ、しれっとセンパイが触りやがったぞ! ついに勘違いしやがったな! 女子代表としてマジ容赦しねえ!』


 間髪入れずに女子さんが反応する。


『ご、ごめんなさい!』

『あははは』


 会話の流れは、夜も更けてきた頃、ファナさんのお風呂落ち宣言で簡単に打ち切られる。

 この唐突に席を離れられる気軽さも含めて、三人の仲の良さを知ることができた。


 俺は勝手がわからずずっとスマホを見ていたけど、好きなときに離れて、好きなときに参加する。

 それは自室みたいにくつろげて居心地がよい空間で、その仲間に入れたことが嬉しかった。

 チャットでこんなにおもしろいと思ったのも初めてだ。



 あ――そうそう。


 忘れる前に言っておくと、

 俺の名前は、梶悠翔(かじはると)って言います。

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