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お笑いとラブコメは混ざりますか?~ゲラなヒロインとスベる俺が青春を沸かす話~  作者: たーたん
第一章 東高等学校はじまり編

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10話 白井さんの正体は「お笑い妖精」でした

 文化祭は土曜日だったので、月曜日は振替休日だ。

 日曜日はだらだらと過ごして終わり、月曜日もこのまま家にこもっていようとゲームをしている。

 プレイするのはインディーズのRPG。一人でコツコツとストーリーを追いながら攻略していくのが好きなんだ。


 誰にも言ってないけど、垂れ流し配信をしていたりする。

 マイクも一応あるがほとんど喋らない。ただ黙々とプレイしている映像を流しているだけ。もちろん人なんてこない。基本0。

 たまに人が来てくれるけどコメント残されることはないし、「あ、間違えました」的な速度で抜けていくので俺が反応することもない。


 グループチャットは、みんなが揃わない時間帯はほとんど動かず、ファナさんが延々とゲームのスクショを貼り付けていたり、白井さんと女子さんが一時間おきに会話をぽつぽつとしていたり自由だ。


 俺は未だに名前当てゲームでウケたことが嬉しくて、何度もその時のチャットを眺めている。スクショまでとってしまった。

 親にも「いいことでもあったの?」なんて勘ぐられたくらいだ。「別に」とごまかしたが、わらおー会のことは言わなかった。

 言えなかったが正解か。来週正式に入る手続きをするだろうし、その後でもいいかなと先延ばしにしている。


 そんなことを思いつつ、休みは一瞬で終わり火曜日。


 俺の新しい日常が始まる――



◇ ◇ ◇



 教室に入ると、俺に大喜利の代打を頼んだ本人を見つけた。

 近寄ると向こうも気づいて、笑いながら立ち上がり肩を組んでくる。


「梶ー! 文化祭はありがとな! ぜんぜん教えてくれなかったけど、どうだったんだよ?」


 眼鏡の奥の目元が笑っている。お笑い同好会に入っていながらも俺と同じで目立つ方ではなく、二次元とゲームを愛する男。清水陸しみずりく

 入った理由は面白くなってクラスの人気者になりたいからだと言っていた。

 その効果は未だ現れてはいない。


 俺とは高校一年から同じクラスで、どんなタイミングだったか忘れたけど、ゲームの話で意気投合してから一緒に遊んだりするようになった。

 俺は友達が少ないし、数少ない気を許せる友人だ。


 会ったら恨み言でも言おうかと思っていた気持ちはなくなっていた。

 そのお陰(?)で白井さんたちと会えることになったのだから。

 しかし、それはそれ。

 俺は冗談交じりに「お前なあ!」と清水の腹を小突く。


「お前のせいでとんだ目にあったよ! でも――」


 大喜利の内容については一切触れなかったが、そのあと一年の白井さんと会ったことを伝える。

 喋りながら思い出す。校庭まで追いかけてくれたときの白井さん。ぴょんと跳ねるような動きに合わせたような明るい笑顔。

 それが手が届きそうなくらいの至近距離で……って、いかんいかん。


「白井さんだと……? お、お前まさか! ほのかちゃんと話したのか!?」


 白井さんの名を言うと清水は目を見開いて驚いていた。

 唖然としていて口が半開きになっている。


「うん、大喜利大会のあと話しかけられてさ。ってか、ほのかちゃんて……」


 そうか、確か白井さんは一時期お笑い同好会に入っていたんだっけ。

 なら清水と顔見知りであってもおかしくはないが、ほのかちゃん呼びしていることが少し気になった。


笑同わらどうのほのかちゃんだよ! 笑同に突如現れた、小柄で童顔で関西弁の『お笑い妖精』だよ! ほのかちゃんに話しかけられるってお前、一生分の運使ってるぞ……!」


 お笑い同好会を清水は略して『笑同』とよく言う。


「ほんとに、ほんとのほんとに一年の白井ほのかちゃん?」

「合ってると思う……」


 それにしても清水の怒りと嫉妬にも似た興奮っぷりが怖い。

 お笑い妖精……。

 白井さんにそんな二つ名があったなんて。


「一生分の運とか大げさだろ」

「いいや、梶としてなら来世分の運も使い果たしたね! 少し待て、落ち着くから。すう、はあー。病み上がりに聞く話じゃない。熱がぶり返してしまう」


 清水は苦しそうに胸を押さえている。たぶんワザとだろうけど。


「そこまで?」

「そこまでの話だよ……。笑同に咲いた一輪の花、妖精でもあり天使だよ! あんな声優みたいな声で、しかも顔も可愛くて、なにより俺らと同じお笑い好きで関西弁とか、こんなん神が造った奇跡だよ。もう辞めちゃったんだけどさ」


 清水は遠い目をして窓の方に顔を向けた。頬杖をついて寂しそうに目を細める。


「お前は知らないだろうけど、ほのかちゃんが辞めたあと、わらおー会って別の作ったんだ。激震が走ったよ。色んな噂も飛び交ったし、みんなそっちに行こうとする大事件も起きたんだ。同好会の存続も危ぶまれ、先輩たちが奔走してなんとか取りまとめ、俺らの中で抜けがけ禁止令が交わされてようやく落ち着いたんだ」


「そんなに?」


 早口で淀みなく喋り続ける清水。俺の知らないところで白井さんとお笑い同好会との間にそんな事件が起きていたとは。


「そ、それで。なに話したんだよほのかちゃんと! 白状しろ、俺は笑同に報告の義務があるんだ。白井さん情報は笑同での格付けに影響する」


 白井さんの影響力が凄すぎる。

 確かに男だけのお笑い同好会に、一年生の女子が入ってきたら、みんな意識するしもてはやされるだろう。急に髪型整えてくるやつとか、口臭を気にし始めるとか。

 気持ちはなんとなくわかる。


「いろいろ喋って、わらおー会に入ることになった」

「……。ああ、ごめん聞こえなかった。うん? 今なんて?」


 不気味な笑顔で聞き返してくる。


「だから、今日からわらおー会に入ることになったんだよ」

「――――」


 ……。


 清水の口は開いたまま停止している。

 教室を響かせているのは、クラスメイトたちの朝の挨拶と雑談の声。


「おもしろくないぞ梶。そんなボケじゃほのかちゃんは見向きもしない」

「ボケてないんだけど」


 清水の眼鏡が光を反射して奥の両目が見えなくなった。


「マジで? な、なんで……?」

「なんか俺にセンスがあるとか、おもしろかったとか言ってくれて」

「センス……? おもしろかった……?」

「う、うん」


「梶がおもしろいとか――んなわけねえぇだろおぉーー!」


 だよな。それは俺も思った。


 清水の絶叫は、朝のホームルーム前にみんなの耳を貫くほど大きかった。

 清水がクラスで注目を浴びた初めての日にもなった。

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