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お笑いとラブコメは混ざりますか?~ゲラなヒロインとスベる俺が青春を沸かす話~  作者: たーたん
第二章 東高等学校てっぺん編

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45話 女子さんと笑わない少女

「いいな~! うちも梶くんとデートしたかったな~!」

「ほのちゃん……っ!」


 教室に入ると、白井さんとファナさんが向かい合わせで座っていた。

 ほっぺたを膨らませる白井さんに対し、ファナさんはあたふたとしている。

 そしてなぜか立たされている俺は一体……。冷や汗が止まらなかった。


「デートじゃないですよ!」

「うう、そう断言しなくても……っ」


 こう言うとファナさんはがっくしと肩を落としてうな垂れるし、


「ああいやっ、ファナさんのカッコイイ一面を見れて楽しかったです!」

「なにそれっ! なんかズルい!」


 と言い換えると白井さんがぷっくりした顔で不満げな表情になる。


 どうしたら!?


「あ、あれー? そういえば女子さんは……今日は来ないのかなァーー?」


 わざとらしく声を高めに出して、女子さんがいないことを気にする。

 女子さんは金曜日はたまにこないことがあったが、それ以外は白井さん、ファナさんと毎日一緒にいる。

 無理やり話題を変えるために使ってしまった感は否めないが、チャットでも特に何も言ってなかったし、遅れてくるのだろうか?


「あ! 梶くんは知らんか! こーちゃんは顔あまり出せないかもって」

「そ、そうなんですね……何かあったんですか?」


 女子さんには申し訳なかったがこの話を続けて気を逸らそうと思った。

 なんともヘタレな俺である。

 女子さんが知ったら即座にストレートが飛んでくるだろうな。


「これ、こーちゃんの前で言ったらタブーやからね梶くん。気を遣われるの嫌いな性格だから、こーちゃんは」


 そう前置きして、白井さんはファナさんの顔を見る。

 小さく頷くと今度はファナさんが口を開いた。


「ここちゃん。体がちょっと弱いんです」


 ――よくクラクラするんだオレ。倒れるほどじゃねえし、もう慣れてるけど。


 いつか俺がお腹が痛くなって授業中にトイレにいったとき、保健室に行こうとしていた女子さんと廊下で会った。

 そのときの女子さんの言葉が、声もそのままで蘇った。


「それで! 梶くんはどっちなん? デートなのかデートじゃなかったのか!」


 軌道修正したつもりの会話が一周回って最初の話題に戻る。

 ファナさんに視線をやると、何度も瞬きさせながら、僅かに顔を赤らめながら俺を見ていた。


 これ、正解がないやつですよ白井さん!

 何を言っても誰も救われないと思います!

 と心の中で言っているだけで、実際は何も喋ってない。


「あはははっ! 困った梶くんも見れたし、今日もネタ合わせ頑張ろっ!」


 ひとしきり俺の困惑っぷりを堪能したのか、けろっと笑顔に戻る。

 白井さんのペースに振り回されっぱなしで今日の活動が始まった。


 この流れはいつものことか。

 この振り回されっぷりに俺は相当救われてるんだ。


「こういう状況ネタにできそーかも?」

「ネタでも僕の心臓は深刻なダメージを負いそうです」



◇ ◇ ◇


 

 校門で白井さんとファナさんと別れると、やっぱり女子さんがいないことが気になってチャット画面を開く。

 女子さんと友達登録はしてはいるが、「何かあったら言ってこいよ」とは言ってくれていたが実際にチャットしたことはなかったし、女子さんからメッセージが来ることもなかった。


 俺に廊下でもたれかかった時の女子さんの少し辛そうな顔を思い出すと気になって仕方がなかった。

 本当は体調が悪いのに、そんな素振りを俺たちには見せないようにしていたんじゃないかとか、想像し出すと止まらない。


『具合が悪いと聞きました。大丈夫ですか? 無理せずゆっくり休んでください』


 と、今度は誤送信なんかじゃなく送信したのだが、メッセージ内容はなんとも言い難い微妙な空気が含む文面だった。


 しばらくして、ポケットの中のスマホが震えて確認すると女子さんからレスがあった。


『先生かよ』


 前にやり取りした内容と一緒だった。俺の送信も前に誤送信したときと字面が変わっているだけで意味は変わっていない。

 なんとも捻りのないメッセージを送ってしまったのだろうと自分のボキャブラリーの無さが逆に笑えてくる。


『なに? それだけ?』

『はい……すみません。心配になって……』

『前に言ったろ? 別にそういうのいいんだって。しつけーぞ』


 女子さんの文面は文字だけ読むと辛辣で時折ぐさりと心に刺さる。

 やっぱり余計なお世話だったか。

 返って心配する方が女子さんにとっては迷惑な行為なのだろう。


『まあ……物は試しか。明日放課後さ、ちょっと付き合えよ』


 ん――?


『ほのかには適当言って放課後、駅前集合な』


 事態の急変に追いつかないでいると、俺の返事なんて待たずに、そうすることがもう決定したかのように女子さんの話は進んでいく。


『待って下さい。病院に付き添うんです!?』

『はあ? なにそれちげーよ』

『買い物……とか?』

『なんでナイトメアと買い物しなくちゃなんねぇんだよ!』


 怒られてしまう。


『――笑わせに行くんだよ』


 お互いリアルタイムでチャットしていたので、メッセージに空く間隔がお互い呼吸しているような感覚だった。


 だから女子さんのその一言でチャットが終わると、最後の『笑わせに行く』という言葉が鮮烈に記憶に残る。

 『どういうことですか?』と聞いても既読がついたままスルーされ、次の日の放課後まで悶々としながら晴れることはなかった。



◇ ◇ ◇


 言い寄れぬ緊張感に包まれたまま、駅前に着くと女子さんは少し寒そうにしながらベンチで待っていた。


「おせー」

「すいません……!」


 白井さんに休む理由を伝えようとわらおー会に行ったら、お笑い同好会の大寺先輩がやってきたのだ。

 否応がなく決勝戦の流れの説明を受けることになって時間がかかってしまった。


 右肩だけズレ落ちた黒の上着のポケットに手を突っ込んだまま、女子さんは顎で改札口を差す。電車に乗るということなのだろう。


「む。その締まりのない顔……。まさか、オレと二人きりだからって変な気起こしてるんじゃねえだろうな? 勘違いしてると女子代表として容赦しねぇからな!」

「これ、緊張でガチガチになってる顔なんです……。女子さん、そろそろ教えてください。どこ行くんです? 笑わせるって……?」

「うぜーうぜー! いいから行くぞ。男なら黙ってついてこい」


 そう言って肩で風を切りながら歩いて行く女子さん。


「こ、女子さん!」


 小走りでその横に並ぶと、大きなため息を吐いてから前を見たまま俺に告げた。


「明日死ぬかもしれない子を笑わせにいくんだよ」

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